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(109) 虎ノ門でも同意者数の「水増し」が!

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都内港区にある「虎ノ門1丁目東地区」も、住友不動産が、日土地及びURと協同で再開発を進めようとしている地域です。
ここでは本年初めに都市計画決定が申請された際、港区の求める「地権者同意率80%」が達成されたと見せかけるため、事業者側が意図的に土地の分筆を行い、同意者を増やしたのではとの疑いが浮上。都市計画決定の是非を議論する区の都市計画審議会の場でもこのことが問題視され、また虎ノ門は国家戦略特区の指定区域でもあることから「内閣府」へも報告がなされた後、異例とも言える「付帯意見が付された形」で都市計画決定が実行されることになった、いわく付きの事業です。

虎ノ門1丁目で何が起きたのか?

都市計画決定申請の直前に、再開発事業者の子会社が所有する1筆の土地を、まるで「羊羹を薄切りする」ような形で5筆へと分筆し、その分同意者を増やして区が求める「同意率80%」を人為的に達成させたのではとの疑惑です。(即ち、分筆がなければ同意率は80%には達しなかったとされるもの)
分筆手続き自体は合法的に行われたようです。しかし、分筆された土地に僅か4.5坪前後の狭小地が複数含まれていたことに疑惑の目が向けられています。

なぜ「細切れ分筆」が申請直前に行なわれたのか?

都心超一等地のビル街に「4.5坪」では建物も建ちません。また、分筆した側は、「土地の形状に問題があるから分筆した」と主張したそうですが、土地をそのまま利用し続けると言うのであればまだしも、再開発を前提としている地権者が「土地の形状に問題があるから分筆した」と主張するのは、どう考えても「論理的に矛盾」があります。
そもそも、なぜこのタイミングで事業者側の所有地が分筆されたのか?そのことを良く考えて見れば答えはおのずと出て来ます。
例え合法であっても、分筆が「再開発の趣旨に適さない」ことは明白であり、このため区も「付帯意見」を付けた上で承認したものの、本来であれば区はしっかり調査を行なった上で申請を受け付けるべきではなかったのか? 尚、分筆以外にも、再開発に反対する地権者の「家族」の賛同を以て「同意者」と見做した疑いなども浮上しており、現在もこれらにつき検証が行なわれているようです。

再開発を進めるための「同意者数の水増し」は
断じて許されるべき行為ではありません!

もしこれを許せば、区内の再開発案件はすべて再開発ありきの「出来レース」と化してしまい、地権者の意思などないがしろにされてしまいます。

港区は証拠となる書類を保管していなかった!

港区は地権者同意率を小数点一桁まで把握していたことが明らかとなっています。一方で、区民が申請した、「同意率の根拠」を求めた情報公開請求に対し、区は「不存在」だと回答してきました。
同意率を小数点一桁まで把握しておきながら、その根拠となる資料が手元にはないと言うのです。
疑惑が表面化し、「付帯意見」が付けられた形で都市計画決定が実行された事案であるにも関わらず、もし港区が、準備組合から「同意書を見ただけ」、或いは「同意状況を聞いただけ」で証拠を保管することなく「都市計画決定」を判断していたとしたら問題です。
(余談ですが、当時の港区の担当課長は、権利者から「都市計画審議会へ郵送してほしい」と託された嘆願書を実際には郵送せず、審議会当日にそれを席上配布した事実も明らかとなり、都市計画審議会の委員から「これでは読む時間がない」と担当課長自身が叱責された事実も都市計画審議会の議事録から判明しています。まさにこれは区の(当時の)担当課長による「再開発事業者寄りの不適切な対応」ではないかと疑問視されています。)

あまり考えたくはないのですが、これでは

区の職員と事業者との間に癒着関係

があったのではと勘ぐる区民が出てきても不思議ではありません。

港区には説明責任が求められます。

朝日新聞も「地権者増加」の問題を大きく報道

朝日新聞は2021年11月18日(木)付の夕刊において、「突然オーナー増 賛否を左右(再開発・追われる地権者)」なる見出しで、虎ノ門1丁目で「地権者数が増えることによる問題」について、過去に訴訟へと発展した類似の事例も引用しつつ詳しく報じています。(添付ご参照)
残念ながら、著作権法上の制約があり、記事全文を掲載することはできませんが、問題の本質が良くわかり、皆さまの地域でも参考となる記事ですので、是非とも最寄りの図書館等でご閲覧下さい。

港区の地権者団体も防衛を開始!

「地権者の同意率」は再開発事業の根幹をなす極めて重要な要素です。
それだけに、もし今回の「水増し問題」を曖昧にしたまま幕引きが図られることがあれば、それこそ区内のすべての再開発は「出来レース」となり、地権者の権利がないがしろにされかねません。
このことを危惧した区内7つ住民団体が団結し、「不正は断じて許さない」との強い信念から、本年9月に「再開発・区民の会」を結成し、相互間での情報共有や再開発事業の監視活動を始めました。
もはや「地域の問題」を地域内に留めておくことをせず、広く社会へも公開して区民全体で「公平・公正、且つ透明性ある再開発」を実現しようと言う雰囲気が区内で芽生えつつあります。
再開発は、税金も投入される公共性の高い事業ですから当然のことです。朝日新聞の実にタイムリーな報道とも相まって、この問題を広く区民も共有し始めたと言う意味では一歩前進ではないでしょうか?

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