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(167)「再開発」と「建替え」 どちらが得か?

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マンション区分所有者必見!

最近、地元マンションの住民から「再開発」と「建替え」どちらが得なのか?と言った質問を受ける機会が増えました。

当地区では、再開発への勧誘開始から5年が経過した今も地権者の合意形成は一向に進まず、その一方で、「マンションの経年劣化」だけが確実に進むと言った状況にあります。
地権者総数約260名の9割弱にあたる約230名が主要4棟のマンション区分所有者で占められているだけに、経年劣化して行くマンションを今後どのような形で再生させて行くかは住民の大きな関心事となりつつあります。

住友不動産は今も住民を「再開発」へ誘導しようと勧誘活動を続けていますが、「再開発」には多くの問題が山積しているため住民の合意形成は困難な状況です。そのような現状に鑑み、「再開発」にいつまでも期待を寄せることなく、自ら積極的に現実的な選択肢を考えて行こうとする機運が住民間で高まりつつあります。数多くの選択肢がある中で、やはり住民の注目を集めるのは「再開発」と「建替え」、どちらが得か?と言うテーマです。
これに対し、住友不動産はあたかも「再開発」が唯一無二の選択肢であるかの主張を展開します。しかし本当にそうなのか?本当に「再開発」が地権者(=区分所有者)にとり最善の選択肢なのか?
地権者が先ずここで肝に念じておくべきは、

営利目的で再開発を推進する「再開発業者」と、
地元で暮らす「地権者」とでは利害が異なる

と言う点です。
従い、再開発業者の説明をそのまま「額面通り」受け取るべきではありません。このことはとても重要です。
そこで本トピックスでは「再開発」と「建替え」の違いを、再開発業者の視点ではなく、地権者の目線から論じてみることにします。

再開発業者が語らない「不都合な真実」!

実は、「再開発」について業者がなかなか語ろうとしないことがあります。
それは、再開発は竣工まで20年前後かかる長期の事業だと言う点です。
しかし当地の住友不動産はこの事実を認めたくはない。
もし認めれば誰も再開発へは同意しなくなる。だから彼らは「準備組合」と言う任意団体を使い、あたかも再開発は短期間で竣工するかの曖昧な説明をさせることでごまかそうとするのだと見ています。
「論より証拠」です。準備組合が5年前の2018年3月に開催した再開発説明会で地権者へ配布した「事業計画表」を見ると、「計画」だとしながらも「2020年度に解体着工明け渡し」と明記されていました。再開発の説明会から僅か2年後の2020年度には「解体着工明け渡し」まで進むと言う計画です。冷静になって考えて見れば「あり得ない話」です。
2023年になった今も、街には何の変化も見られないのですから、改めてこのことを強く実感させられます。
このように、知識に疎い地権者から再開発への同意を得ようと

現実離れした説明を平然と行う住友再開発

の手口に地権者もようやく気付き始めたようです。
契約を以て竣工時期が見通せる「建替え」に対し、いつ竣工するのかその時期さえ見通せず、場合によっては20年以上かかる可能性さえある「再開発」。そのどちらが得かは明らかです。

「事業リスク」を負担するのは誰か?

「建替え」でも地権者は一定のリスクを背負いますが、その範囲は個々のマンションが建設業者と協議しながら双方納得の上、契約にてこれを取り決めます。
一方、「再開発」では事業リスクを負うのは最初から組合員(=地権者)です。住友不動産ではありません。
地権者にとり「再開発」と「建替え」、どちらが安心かは明らかです。

竣工まで短期の「建替え」、長期の「再開発」

繰り返しになりますが「建替え」は単独マンションの建設工事ですから、竣工までの工期は比較的短期ですみます。一方の「再開発」は地域全体の「街づくり」ですから、地権者の合意形成が出来なければ、いつまでたっても「再開発」は実現しません。それが一般的に竣工まで20年前後を要すると言われる所以です。
とりわけご高齢の地権者の場合、20年前後も待たされるとなれば致命的です。その間は「事業リスク」にもさらされるのですから、老後の人生設計が根本から狂いかねません。
再開発が20年前後かかる可能性がある以上、現在安定収入がある40歳代、50歳代の現役世代も要注意です。竣工時には自らも現役をリタイアして年金生活に入っている可能性があるからです。
地権者にとり「再開発」と「建替え」のどちらが安心かはここでも明らかです。

事前に詳細が決まる「建替え」、決まらない「再開発」

当たり前ですが「建替え」では、契約の時点で還元率をはじめ、物件の床面積、方角、間取り、室内の仕様など、ほぼすべての詳細が確定します。
一方、「再開発」では都市計画決定以降も詳細はなかなか決まらないのが現実です。地権者は詳細を知らされぬまま長期間待たされることになります。
この点に関し、業者側は「詳細は再開発の進捗と共に決まって行きます」、「法に基づき適切に決めます」などと弁解するようですが、そもそも自らの大切な土地資産の処分を「準備組合」なる任意団体へ一任しながら、「詳細条件」は最後まで知らされず、その一方で「事業リスク」だけは負わされるのですから、

「再開発」はまさにギャンブルの世界

だと言えないこともありません。
地権者は、「再開発は不動産取引である」ことを忘れてはなりません!
寿司屋の板前に「おまかせ」で寿司を握ってもらうのとはわけが違います。
さて地権者にとり「建替え」と「再開発」、果たしてどちらが得でしょうか?

賃貸物件のオーナーも要注意!

詳細が決まらぬ「再開発」の場合、賃貸オーナーへの影響も甚大です。
「建替え」では、物件の詳細や工期は契約時点でほぼ確定しますが、「再開発」では物件の「床面積」や「仕様」、「日当たり」などの詳細はもとより、「完成時期」もすぐには見通せません。加えて、管理費や修繕費も判明しないとなれば、賃貸物件の採算すら計算できません。また「再開発」は長期事業のため、将来の賃貸需要の予測まで行う必要があります。
それらを考えると「建替え」と「再開発」、果たしてどちらが得でしょうか?

業者の提示する「見積書」にもご注意あれ

当地では再開発への勧誘が始まった5年前、「モデル権利変換」なる資料が各地権者へ配布されました。この資料は、地権者の所有するそれぞれの土地資産の従前・従後の評価額を数字で示した一種の「見積書」です。しかしこの書類、良く見ると

発行者名も社印もなく誰が作成したのかも不明

なのです!しかも中身を読むと、「概算値です」、「今後変更となる場合があります」、「位置によって異なります」、「割合は未定です」等、逃げ口上が満載です。

評価額がいくら高くても、これでは「絵に描いた餅」

です。結局、知識に疎い地権者から「同意」を得るための「見せ球」だったと思われても仕方がありません。住友不動産と言う業界大手の不動産会社がついていながら、極めて不誠実なやり方だと言わざるを得ません。
一方、「建替え」の場合は、建設業者が正確な見積書を提示してきます。
工事もほぼすべての条件がマンション側(=施主)との間で確定してから始まりますので、「再開発」のように後日「こんな筈ではなかった」、「当初の約束とは違う!」、などともめる心配も無くなります。

一方で「再開発」にも利点はある?

「再開発」の最大の利点。それは行政の支援も得て「持ち出し無しで新築マンションに移り住める」点だと一般には言われてはいます。また工事期間中の仮住まい費用も補填されるようですし、権利変換後、しばらくの間は税制の優遇措置も適用されるようです。しかし本当にそうなのか?住友不動産からの確約はまだないようです。一方、マンション「建替え」では追加の負担金が発生し、仮住まい費用も自己負担となる場合が多いため、もし「再開発」が本当に負担金無しで済むのであれば、金銭的に余裕のない地権者にとり「再開発」は確かに選択肢となり得ます。
しかし、たとえ無償で新築マンションへ移り住めたとしても、殆どのマンションでは床面積が現在の広さより狭くなるのが当地における住友再開発の現実です。また高額の維持管理費で生活再建ができないとなれば本末転倒です。(注)

(注)いくら再開発業者から「持ち出しなしで新築マンションに住めますよ」と言われても、入居後の管理費・修繕積立金等が高額となれば「生活再建」は出来ません。
あの有名な六本木ヒルズの再開発(森ビル)で試算された標準住戸の維持管理費はなんと月額12万円だったそうです。年金生活者にとっては「生活再建」は不可能な数字です。これに驚いた地元地権者団体は、住民が「経済的に住み続けられること」の確認を求めて森ビル側と交渉を続けた結果、森ビルは維持管理費を補うための仕組みとして、保留床の一部を地権者へ提供し、そこで得られる賃料を管理費の一部として充当することを書面にて約束しました。この結果、維持管理費が月額12万円から3万円程度にまで減ることとなり、その後再開発は一気に加速して行ったのだそうです。
詳細については(29)住友不動産を森ビルと比較してみたをご参照下さい。

これらの点に関しては、再開発への同意を行う前に住友不動産から書面で具体的な確約を取り付けておくことが必須です。
また「住友再開発」は、地権者の犠牲のもとに進められる事業であることが地権者目線から見えて来たので注意が必要です。
例えば、当地区では「住戸の半数が一年中陽の当たらぬ地権者棟」が住友不動産側により平然と提案されています。マンション住民が主体となる「建替え」の場合、このような設計などあり得ません!当地区ではまた区域外に設置される「歩行者ブリッジ」の費用まで地権者に押し付けようとする提案までなされています。再開発区域外の費用まで地権者負担となれば、その分本来地権者が権利変換で得られるべき床面積が更に狭くなるリスクも覚悟する必要があります。
まさにタダより高いものはないと言う言葉が住友再開発にはぴったりです。
しかし、「ある程度の不利益は覚悟の上だ」、「無償で新居に住めるのならそれで良い」と言うのであれば、確かに「再開発」は選択肢かも知れません。

まとめ

「建替え」は原則として当該マンションの区分所有者の意思のみで決定できますが、一方の「再開発」はマンション住民の意思のみで決める訳には行かず、地域全体の合意形成がなされない限り、いつまでたっても実現しないと言う現実があります。いつ竣工するか見通せないのが「再開発」だと言えます。

また地権者とは利害の異なる「営利目的の再開発事業者」へいくら質問を投げかけたところで、彼らは「再開発」が選択肢だとしか回答して来ません。
彼らにとり、マンション単独の「建替え」よりも、地域全体を手掛ける「再開発」のほうが、その何倍、何十倍もの利益が見込めるのですから営利企業としては当然のことです。ましてや「再開発」では行政から多額の補助金が交付される上、事業リスクは地権者負担なのですから、業者側にとり「再開発」ほどうまみのある事業は他にありません。

何れにしてもマンション区分所有者の皆さんは、以上に述べた諸事情を自身でしっかりと認識した上で、「再開発」と「建替え」のどちらが得かを冷静に判断して行く必要があるのではないでしょうか?

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