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(27) 準備組合は謎だらけ(その1)

投稿日:2020年2月7日

泉岳寺で再開発の勧誘にやって来る住友不動産の社員に対して地権者が不満や要望を投げかけると、「私たちは事業協力者です。実際の事業者は地権者の皆さまで構成される準備組合です」などと切りかえされ、正面から取り合ってくれないのだそうです。
では「地権者で構成される準備組合」とは一体どのような組織なのか?
いろいろ考え、そして調べてみました。
しかし、出て来たのは「謎」、「謎」、「謎」… 
住民目線で調べると「謎」ばかりなのです。
それも準備組合の「正当性」や「存立」にもかかわる重大な謎ばかり。

【謎、その①】
住友不動産側の人間は以前から事あるごとに「皆さまの準備組合」、そして「地権者主導による準備組合」であることを地権者に対して強調し続けています。たしかに準備組合を構成する計7名の理事(監事を含む)の内、6名は地元地権者で構成されており、表面上は「地権者による準備組合」の形とはなっています。
しかし、実態はどうなのか?もし「地権者主導の準備組合」だと言うのならば、6名の地権者理事たちは、いったいどのような公正、且つ民主的なプロセスを経て「地権者の代表」として選ばれたのか? 
地元地権者の多くは「彼らを選んだ記憶などない」と言っており、地権者理事たちが選任された詳しい経緯すら知りません。これは極めて重大なポイントです!
準備組合には説明責任があります。直ちに住民説明会を開催して、この点を地権者全員に対してしっかりと説明すべきです。

【謎、その②】
地権者理事6名(監事を含む)のうち、なんと半数にあたる3名が泉岳寺山門内の仲見世商店街の「横並び3軒」の地権者で占められています。
広い区域内にも係わらず、なぜ理事が狭い一角に3人も集中して存在しているのか?一体どのような合理的な理由で彼らが理事に選任されたのか?
広い再開発予定区域内でこのような理事の片寄りはいかにも不自然であり、「多様な意見」を広く集めると言った観点からも極めて不適切です。
準備組合はこの点に関し合理的な説明を地権者に対し行う責任があります。

【謎、その③】
理事たちは「事業者」として本当に重要事案に関する決定権を有しているのか?
地権者が再開発への不満や要望等を住友不動産の社員へ投げかけると、「事業主体は準備組合であり当社は事業協力者にすぎないので、一度理事会に諮った上で回答をしたい」などと言われるのだそうです。
しかし、「作成者不明の権利変換モデル」、「日付空欄で取付けようとした同意書」、「マンション住民の1票の格差」、等々、多くの地権者が問題視する指摘や質問には一切回答をして来ません。
もしかしたら重要事項に関する決定権はすべて住友不動産側にあり、地権者理事たちは最初から決定権など持たされていないのでは? 
もしこれが事実だとすれば、泉岳寺の地権者たちは決定権を持たない人たちを相手にしていたことになります。
もはや「その様な事実はありません」などと「準備組合ニュース」へ短く掲載して幕引きを図ろうとしても地権者は納得しないでしょう。
直ちに全体説明会を開催し、具体的且つ納得の行く説明を地権者に対して行うべきです。

【謎、その④】
再開発区域の一方的な線引きは一体誰が行ったのか?
多くの地権者が突然の線引きがなされたことに憤りを感じています。
日本は根回し社会です。住民の知らぬ間に一方的に区域を線引きし、それを既成事実に再開発を進められると思ったら大間違いです。
なんと準備組合ニュースの創刊号(2016年9月)には開発区域が線引きされた図が既に掲載されていました!つまり準備組合発足前から既に線引きがなされていたと言うことなのか? ならば一体誰がこれを決めたのか?
地権者の多くが何も知らされず、且つ了承もしていない状況下で線引きが一方的に行われていたとなれば問題です。もし地権者全体を含めることなく「一部の地権者」のみで決定したとなれば、線引きは最初からやり直しです!
既に再開発から離脱した地権者も多数出ており、これ以上の離脱者が出れば再開発は頓挫します。準備組合は直ちに全体説明会を開催し、地権者に対して納得の行く説明を行う必要があります

【謎、その⑤】
住友不動産の社員はことあるごとに「自分たちは事業協力者であり、実際の事業者は地権者の皆さまだ」と言います。「地権者が事業者」だと言うのなら、いったい地権者の誰が住友不動産を事業協力者に選んだのか?
彼らは2016年8月の準備組合設立総会で規約に基づき出席者の多数の賛成により決議されたと説明するでしょう。しかし2016年時点で実際にどれだけの地権者が再開発計画の存在を知っていたと言うのでしょうか?
そもそも自分たちの土地が再開発区域に線引きされたことも知らない地権者たちが、どうして住友不動産を事業協力者として選定など出来るのでしょうか? この決定は矛盾だらけと言わざるを得ません。
準備組合には、この点に関する納得の行く説明が必要です。

【謎、その⑥】
多くの地権者は住友不動産が事業協力者として選ばれた経緯も知りません。
三井、三菱、森ビル、等々、多くの有力な再開発業者がいる中でなぜ住友不動産が選ばれたのか? 地権者主導の再開発だと言うのならば、業者の選定に際して、本当に地権者が主体となり各社の比較検討が公平・公正な形でなされたのか?どのような討議がなされたのか? 
疑うわけではないが、客観的に地権者を代表するとは言い難い、「ごく一部の地権者」だけで住友不動産を選定したなどと言うことは無かったのか?
準備組合には当時の議事録やその他関係資料の開示を行うと共に、地権者に対して納得の行く説明を行う責任があります。

まとめ

私たちは決して「再開発」を否定するものではありませんし「準備組合」を敵視しているわけでもありません。しかし、地権者を見ていると、準備組合のやり方はあまりにも不当と言わざるを得ません。
地権者たちは再開発の決定により、大切な土地や資産を供出させられる側の人間なのです!再開発地域に強制的に組み込まれる立場にあるのです。このため地権者は上記の「謎」すべてに関して「知る権利」があり、準備組合から「合理的で納得の行く説明を受ける権利」があります。

泉岳寺の地権者たちは長い間、「事業者である皆さまが主体の準備組合」と聞かされ続けて来ただけに、もし準備組合を事実上取り仕切るのは住友不動産だとなれば大変な問題です。
区域内には「準備組合事務所」が置かれていますが、実際にこの事務所へ頻繁に出入りしているのは住友不動産を含む開発事業者側の人間ばかりです。残念なことに地元地権者理事たちが出入りする姿を見ることは殆どありません。
いま泉岳寺では多くの地権者が「何かがおかしい!」と疑問を持ち始めています。
私たちが今回提起した多くの「謎」は、準備組合の正当性や存立にも係わる問題だけに、そうではないことを実証するのは準備組合の責任です。
沈黙を続ければ、私たちだけでなく「社会」や「行政」も黙ってはいないでしょう。

結論

準備組合の主体が「地権者」だと言うのならば、住友不動産ではなく地権者理事たちが自ら地権者全員に対して説明を行う責任があります。
もはや沈黙を続けてさえいれば良いと言う状況ではありません。
地元「地権者の会」では準備組合に対し、
住友不動産抜きの地権者理事による全体説明会の開催を呼びかけています。地権者同士で話し合えば、今まで地権者側が指摘してきた多くの問題点や矛盾点なども解決の方向に向かうことが期待されるからです。
同会は港区役所に対しても、説明会が早期に開催されるよう準備組合への指導をお願いしているそうです。
今回は営利目的の開発事業者を除外し、区民である地権者同士が再開発に関して話し合おうと言うのですから行政もこれを否定する理由は無い筈です。

さて、準備組合は今後どのように回答をしてくるのか?

この点については引続き当ホームページにて皆さまへ実況中継して参ります。

ところで再開発案件に携わる全国の地権者の皆さま!
皆さまの街の「準備組合」は大丈夫でしょうか?

もし準備組合が設立される以前から、地域住民を対象にした「街づくり協議」が何度も実施され、そこで住民への根回しが済んだ後に地権者主導と言える形で準備組合が設立されたのであれば何ら問題はありません。
しかし、これとは真逆のケースもあります。
それは…ある日突然開発事業者が地域に入り込み再開発を行いたいと提案。
住民との事前協議もろくに行わないまま「一部の地権者」を取り込み、あたかも彼らが地元地権者の代表であるかのように仕立て上げ、彼らを理事に迎え入れる形で準備組合を組織。続く設立総会でいきなり当該開発事業者が自らを「事業協力者」として認めさせ、更に準備組合の「事務局」までをも担うと言ったケース。
この場合、地権者とは利害の全く異なる「開発事業者」が全てを取り仕切る形となるため、「地権者主体の再開発」が実現する筈もなく、地権者としては要注意・要警戒です。

一度、泉岳寺での事例も参考に、皆さまの地域の「準備組合」を再度見つめ直して見ては如何でしょうか?
そしてそこに少しでも「不自然」或いは「不公平・不公正」な取り組みを感じたら、準備組合や開発事業者に対して毅然とした態度で臨む必要があります。
これを行わないと、開発事業者側のやり方で一方的に押し切られてしまいます。
これを行わないと、後で「こんな筈ではなかった」と後悔することになりかねません。
いずれにしても「何かがおかしい」と感じたなら、無関心でいることだけは避けたいものです。

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