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(72)同意者の水増し事例 (その2)

投稿日:2021年3月30日

新手の「水増し手法」か?

トピックス(69)同意者の水増しに注意 及び(70)同意者の水増し事例からの続きです。
今般、新たな「水増し」(に繋がりかねない)手法を具体例として確認しましたのでご紹介します。

マンション管理組合による新たな「水増し操作」の手口か?

これは住友不動産が計画する再開発区域内にあるマンションで実際に起きた事例です。このマンションの管理組合が臨時総会で提案した議案をそのまま以下に掲載しますので先ずはそれをご覧ください。

【臨時総会・第5議案】

この議案の主目的はマンションの維持管理についてです。維持管理を行うことに関してはなんら問題はありません。
しかし議案には「再開発を前提に」なる冠が付けられており、更に説明文においては、わざわざ「再開発を前提に」なる文言が5回も登場している点にご注目下さい。マンションの維持管理を装いながら、何としてもこの文言を既成事実化させたいとする管理組合側の意図が読み取れます。

誰が見てもこれが不自然な議案であることは一目瞭然です!

【このマンションについて】

トピックス(70)でも触れましたが、マンション理事長を準備組合の理事へ迎え入れたりして、管理組合そのものを支配下に収めて行くのは再開発業者の使う常套手段だと言われています。
このマンションの住民の話によれば、マンション管理組合(理事会)には再開発準備組合の理事が深く関与しており、従来から住民(=区分所有者)を再開発の方向へ誘導しようとする姿勢が露骨に出ているため、多くの住民が「公平性が保たれない」として無言の抵抗(=組合無視)を続けているのだそうです。このマンションは老朽化が進んでいることから管理組合が年に数回「マンションの将来を考える集会」を開催していますが、住民の無言の抵抗に遭い、毎回出席者は全体の1割にも満たないありさま。それもその筈、住民集会には都度住友不動産側の人間が同席するそうで、まさにマンション管理組合の中立性を著しく欠く危機的な状況だと言えます。
マンション住民としては、当然「再開発」以外にも「建替え」、「改築」、「耐震補強」、等、様々な選択肢がある筈ですが、もしそのような協議の場に再開発推進側の人間(しかも彼らはプロの職業集団です!)が同席するとなれば、必然的に「再開発ありき」の結論となってしまうであろうことは、想像に難くありません。マンション住民の自治をも揺るがしかねない、著しく不公平で軽率な行為であると言えます。

このような状況下、いかなる施策を以てしても住民を再開発賛成へと誘導できないことに業を煮やしたマンション管理組合側が今回画策した新たな手段が、
「再開発を前提とした維持管理計画の推進」と言った玉虫色の議案を総会で可決させることであったと私たちは見ています。
議案の主たる目的は「維持管理の推進」です。それにも関わらず、議案の冒頭についた「再開発を前提とした」なる文言を一人歩きさせ、あたかもマンション住民全員が再開発に賛成したとの既成事実化を図ろうとする新たな手法です。
よくもまあこんな手法を考え出したものだと関心さえします。
杞憂に終われば良いのですが、もし将来、同マンションの議決結果が「同意の水増し」に利用されるとなれば問題です。

【ご注意】

本トピックスに関しては以下の状況を予めお含み置き願います。
●本トピックスでは「新たな水増しの手口」としましたが、もしかしたら私たちが知らないだけで、実際には各地で既に行われている手法かも知れません。
その場合にはご容赦下さい。
●今回は某マンションの臨時総会で水増しの手口ではと疑われる「不自然な議案」が提出された事実を皆さまへお伝えしているものであり、実際にこれが同意者の「水増し」として行政へ提出されるかはまだ不明です。(もちろんそのような事態とならぬよう今後も注視して参ります)
●また、本件はあくまでも「マンション内で発生した事案」であり、背後に住友不動産の関与があると確認された訳ではありません。(引続き注視はしています)

まとめ

同意者数の水増しは「地権者主体の再開発」を否定する悪質な行為です。
再開発に同意しない住民が巧みに仕組まれた議案に「賛成」することで「再開発に同意した」と見做されてしまうとしたら、もはやそれは民主主義の否定にも繋がりかねず、決して許される行為ではありません。
幸い、本トピックスで取り上げたマンションでは、思慮分別あるマンション住民(=区分所有者)が既に行政の長、並びにその担当部署宛に告発状を提出したと聞いています。
水増しした数字が実際に行政へ報告される前に行政側(私たちの場合は港区)へ通報しておけば、さすがに行政側も再開発事業者の申告する同意者数を鵜呑みには出来なくなる筈です。(同時に私たち市民側も後日行政に対して、同意者数の根拠を示すよう強く求めて行く姿勢も必要です)

最近、都市計画決定への申請段階で
「同意者数の水増し」が増えているようです。
各地の地権者の皆さまはくれぐれもご注意下さい。

同意者数の「水増し」はあってはならない悪質な行為です。
私たち市民を含む社会全体でこれを監視し、防止して行くことが重要です。

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