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(カラクリ-4)「保留床総取り」のカラクリと業者の手口(後編)

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本トピックスは(カラクリ-3)「保留床総取り」のカラクリと業者の手口(前編)からの続きです。

まだ保留床のカラクリと手口が理解できませんか?

それでは上記イメージ図を見ながら、数字を使って簡単に説明します。
先ずは総床面積=保留床面積+権利床面積である点をご確認下さい。
仮に総床面積がだとして、業者にを渡せば地権者の残りはです。
しかし業者にを渡せば、地権者の取り分はに増えて得をします。
地権者の取り分がになるかになるかは、保留床単価で決まります。

(注)事業費を賄うために売却する保留床の額は定数ですから、あとは
保留床単価をいくらに設定するかで保留床面積は決まり、それに連動して権利床面積も決まります。

このように、「保留床単価」は地権者が得る「権利床面積」に影響を及ぼす重要な要因ですから、再開発事業者の息のかかった「鑑定士」などに安易にこれを算出させるべきではありません。あくまでも中立的な機関により、市場の実勢価格を基本に算出されるべきであり、それを地権者側と再開発事業者の双方が協議し合意した上で決定されるべきものです。
しかし乍ら、多くの再開発事業者は保留床の「安値総取り」を狙うため、この原則を尊重せず、一方的に「安い単価」を既成事実化しようとします。
そのような業者は「地権者は従前評価に応じた権利床を取得する」などと論じることで、地権者の関心を意図的に「保留床」の問題から切り離し、あたかも「権利床」が「保留床単価」とは無関係に決まるかの印象操作を行おうとします。これが業者の手口だと考えられますのでご注意下さい。
また彼らは地権者が知識に劣ることを良いことに、「鑑定士がと評価すれば地権者はだ」、などと言った高圧的な説明を行うケースもあるようですが、そもそも再開発事業者が起用した「鑑定士」などの行う評価には、最初から信頼性に疑問符が付きますので注意が必要です。

それにしてもなぜ再開発事業者は地権者に対して真実を語ろうとせず、本質とはかけ離れた説明ばかりしようとするのか?
その理由は明確です。彼らは地権者に対して

「保留床を高く売れば地権者は得をする」

と言う事実に気づかれたくないのです!
まさにこれが再開発事業者の「保留床総取り」の手口だと考えられます。

「保留床」は業者にとり一番の収益源!

再開発は、再開発事業者にとり極めて旨味のある事業です。
それもその筈。区域内の地権者に「土地を供出」させた上、「事業リスク」まで地権者に負わせ、行政からは開発利益の源泉となる「大幅な容積率緩和」を受けた上に「多額の補助金」まで貰えるのです。その上、保留床を「安値総取り」できるとなれば、まさに再開発事業者にとり再開発は、「笑いの止まらない」事業だと言っても過言ではありません。(しかし、その一方で「しわ寄せ」を受けるのは地権者だと言う現実を忘れるべきではありません。)

再開発事業者の一番の収益源となるのは「保留床」です。
ですから彼らは収益率の極大化をはかるため、なんとしても「保留床を特権的価格で総取り」しようと画策するのです。
ところで保留床が安ければ、地権者だって床を買い増したいと考えます。しかし、多くの現場では、再開発業者が自ら実効支配する準備組合を使い、「増床制限」を設けることで地権者に床の追加購入を自由に行わせないと言った策を講じます。
まさにこれは、「自分たちは安く保留床を手に入れるが、地権者にはそうさせない」と言った業者側の身勝手な論理だと言えます。

(注):「増床」とは、地権者が従前資産に対応して取得する権利床の部分を超えて、新たな床を追加的に購入することを言います。本来、増床を認めるか否かは地権者(=再開発組合)が決める事柄であり、再開発事業者(=参加組合員)の都合で決めることではありません。

保留床を独占したい業者の手口とカラクリ

前編でも報じましたが、地権者が忘れてはならないのは

「保留床単価」が安いほど保留床面積は増える

と言う点です。「保留床面積」が増えれば、その分、地権者の取り分である「権利床面積」は減ることになります。

再開発事業者は様々な手口を使って地権者に「安い保留床単価」を正当化させようと試みますので、地権者は気を付ける必要があります。

もちろん、中には地権者側に寄り添う善良なる事業者もいることを予めお断りしておきます。しかし乍ら、もし

● 再開発事業者が準備組合を実効支配している
● 業者側の息のかかった「鑑定士」や「コンサル」が起用されている
● 地権者の関心が「保留床単価」に向かわないよう巧みに誘導している

と言った兆候が認められれば要注意です。

まとめ

「保留床単価をいくらに設定するか」は、「権利床面積」にも影響を及ぼすため、地権者にとり極めて重要なテーマです。
再開発事業者が自社の息のかかった「鑑定士」や「コンサル」などに算出させる「安い単価」を安易に認めれば、「保留床面積」の不当な増加を許してしまう一方で、「権利床面積」は減り、地権者に不利となるからです。
保留床を特権的価格で独占したい再開発業者としては、当然自分たちが「安い単価」を算出するカラクリや手口を地権者に知られたくはありません。一旦、地権者から疑いの目を持たれれば、彼らの不透明な「値決め」の実態まで世間へ露呈しかねません。
そこで

「保留床単価」から地権者の関心をそらそうとする

のが彼らの手口だと考えられます。
再開発事業者が、なぜ地権者に対して「従前評価に基づく権利変換」の話ばかりしようとするのか? その一方で、なぜ彼らはそれと密接に関連する「保留床単価」の話をしようとしないのか?
その理由は、もう皆さまにご理解いただけたのではないでしょうか?

再開発事業者側は知識に劣る一般の地権者に対し、あらゆる理屈を持ち出すことで保留床単価の引き下げを正当化しようとして来ることが想定されます。
このような場面では、地権者側に「本当に彼らの説明が正しいのか」を見極める能力と冷静な判断が求められます。彼らの説明を検証するためにも、再開発事業者側の説明は必ず書面で要求し、口頭の場合には、彼らの言質を録音しておくことを推奨します。
後日、再開発業者との間で「言った言わない」でもめないためにも、このことは重要です。

また、地権者側としては都市計画決定前に(できれば準備組合設立前に)、再開発事業者(=参加組合員)との間で、
「保留床単価」が市場の実勢価格を基本に、公平、公正、且つ透明性ある形で算出され、それを当事者双方の合意のもとで決定することを予め書面で取決めておくことも大切ではないでしょうか?

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