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(カラクリ-7)業者の立場で「再開発」を眺めてみた

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再開発は「笑いの止まらない」高収益ビジネス!

本来、再開発(第一種市街地再開発事業)は、地権者が自らの発意と合意に基づき、共同で事業リスクをとりながら進めて行く「街づくり」です。
しかし、営利目的の再開発事業者には異なる光景が広がって見えます。
彼らにとり「再開発」とは、知識に疎い地権者に「土地を供出」させた上、「事業リスク」まで地権者に負わせ、行政からは開発利益の源泉となる「大幅な容積率緩和」受けた上に「多額の補助金」まで貰える。そして最後は、彼らの収益源である再開発ビルの床を、地権者の無知に乗じて「格安の床単価」で購入することで、知らぬ間に床を「独占」してしまう!

再開発事業者にとり再開発は、まさに「笑いの止まらない」事業

だと言っても過言ではありません。

しかし現場の社員たちは意外とつらい

社員たちは「再開発は地権者が主体の街づくり」だと頭の中では理解していても、ノルマに追われる彼らが会社から評価されるにはとにかく「再開発に持ち込むこと」が至上命令。多少強引な手法を用いても地権者から同意さえ取り付けることに成功すれは社内で称賛される一方で、「賑わい」や「景観」といった「再開発の本来の魅力」をいくら強調したところで、それらは数字に結びつかないため評価され難いと言った現実があります。
再開発は「高収益ビジネス」であるだけに、彼らが地権者の利益を置き去りにしても強引に再開発を推し進めようとする背景にはこのような事情があると考えられます。

再開発事業者が儲ける仕組みはこれ!


先ずは上記イメージ図をご覧下さい。
再開発事業者の主な収益源は「保留床」です。従い、彼らはその保留床を出来るだけ「安く」、そして「多く」確保しようとします。
営利目的の民間企業としては当然の考えです。
しかし図からもわかるように、総床面積=保留床+権利床 ですから、保留床が増えれば、その分地権者の得る「権利床」は減る構図です。
つまり再開発事業者と地権者とは互いに利益が相反する関係となります。しかし、業者としてはこの事実を地権者に気づかれたくはありません。この点に気づかれると保留床の「安値総取り」が思うように出来なくなる懸念が生じるからです。そこで業者側は地権者の関心が「保留床」に向かわぬよう様々な対策を講じます。彼らが地権者に関心の高い「従前評価」の話ばかりして、「保留床」の話を詳しくしようとしないのはその様な理由からだと考えられます。再度言いますが、業者としては、「保留床」が増えれば、その分「権利床」が減ると言う現実を地権者に気付かれたくはないのです。業者の立場になって考えてみれば、このことが良くわかります。

「保留床」を増やす秘策は「保留床単価」の操作にあり!

格安の「保留床単価」をいかに正当化させるか!

これこそが再開発事業者(=参加組合員)の最大の関心事だと言っても過言ではありません。理由は明白です。
「保留床単価」を下げればいくらでも「保留床面積」を増やせるからです。
もう一度、上記イメージ図右側にある「事業収支表」をご覧下さい。
再開発は、新たに建設された施設の一部(=「保留床」と言う)を再開発事業者(=「参加組合員」と言う)へ売却することで事業費を賄う仕組みです。
従い、再開発事業者は上記「事業収支表」における「保留床処分金」を負担することで保留床を獲得します。しかしこの時点で「保留床面積」までが自動的に決まる訳ではありません。
床面積を確定させるには、まず「保留床単価」を決める必要があります。
業者が実際に取得する「保留床面積」は以下の計算式で決まります。

保留床面積=保留床購入額÷保留床単価

このうち彼らが支払う「保留床購入額」は確定額ですから、あとは「保留床単価」をいくらに設定するかで「保留床面積」が決まります。
ここで地権者が忘れてならないのは

「保留床単価」が低いほど保留床面積は
増えるが、その分「権利床」は減り、地権者は損をする

と言う点です。

もし保留床購入額が100億円で、保留床単価が1,000万円/坪であれば業者の得る保留床は100億円÷1,000万円/坪=1,000坪となります。
しかし、保留床単価が半値の500万円/坪に設定されれば業者の得る保留床面積は2,000坪に拡大します。2倍の面積になるのです。
そして増えた分(1,000坪)だけ地権者の得る権利床面積は縮小します。
「保留床単価」は相場に基づき公正な形で決めることが大原則ですが、再開発業者は地権者が知識に疎いことに乗じ、様々な手段を使って格安の「保留床単価」を既成事実化しようとしますのでご注意ください!
「まさか大手業者が半値にまで…」とお思いでしょうが、先日港区内で発生した暴行事件は、まさに業者側が大胆にも相場の約半値で保留床単価を既成事実化しようとしたことが引き金となりました。

再開発事業者はもちろん「保留床が増えれば権利床が減る」と言う事実を知っています。しかし地権者からこの点を指摘されると厄介なことになるため、問題提起される前に「保留床の安値総取り」を既成事実化してしまおうと考え、そのために様々な仕掛けを設けるのです。彼らのそのような行動のいくつかを事例として以下に紹介します。

【事例①】
当地区の準備組合は「住友不動産は保留床を買う」と強調するものの、「どのように買うか」については一切語ろうとしません。準備組合が住友不動産と締結した契約書も開示しません。まさにここが「落とし穴」です。
多くの地権者は「住友不動産が保留床を買うのだから安心だ」となり、「保留床単価」が地権者の取り分(=権利床)に大きな影響を与える事実には気がつきません。そのように地権者を仕向けるのが業者の手口です。極めて不当なやり方です。

【事例②】
トピックス(186)及び(187)で取り上げた「暴行事件」も、まさに業者側が「保留床単価」を格安に設定しようとする「手口」に気づき、地権者側が業者を追求していた矢先に発生した「言論封じ」の暴行事件でした。
この業者の具体的な「手口」に関しては、トピックス(187)暴行事件で見えた不都合な真実!で詳しく報じていますのでご覧下さい。

【追記】
その暴行事件の追加情報です。再開発事業者の事後の対応(=加害者を手厚く扱う一方で、被害者を放置してしまった)が差別的だとして関係者から問題視されていましたが、6月下旬に開催された業者の株主総会の場で、個人株主(=事件現場の地権者)が「社員の事後対応の不手際」を問題提起し、社長が自ら「現場の社員教育を徹底させる」と株主の面前でコミットする展開となりました。現場の担当社員たちには少々酷な展開だったかも知れませんが、地権者の間で「不正行為は許さない」との意識が芽生えて来た証として、当方ではこれを好意的に捉えています。

「保留床」を総取りするための様々な仕掛け

再開発業者は、再開発を自分たちに有利に進めたいと考え、地権者が無知であることに乗じて様々な「落とし穴」を仕掛けてきます。(注)

(注) あくまでも一部の心無い再開発業者の行為を示しており、全ての業者がそうだと言う訳ではありません。中には善良な業者もいる筈です。

そのような業者の仕掛の定番は何と言っても準備組合の傀儡化です。
「事業協力者」を名乗り巧みに組合内へ入り込み、「素人役員の起用」「業者への業務丸投げ」「組合の借金漬け」の3点セットで準備組合を実効支配してしまう手口です。(その詳細については、(169)「準備組合」支配の3要件をご参照下さい。)
一旦、準備組合の傀儡化に成功すれば、あとは自社の息のかかった「鑑定士」や「コンサル」を起用することで彼らに格安の「保留床単価」を算出させ、いつの間にかそれを既成事実化してしまうのです。たとえ不当な施策だとして問題提起されても、「委任状だらけの総会決議」でこれを正当化してしまうのが彼らの手口。まだあります。彼らは床を独占したいあまり、地権者に「増床制限」を課すことや、従前評価に開発利益を加味しない方針など、様々な仕掛けを講じて来ます!
さて皆さまの地区ではどうでしょうか?何れにしても業者によるこれらの手口には普段から注意が必要です。「備えあれば憂いなし」です。

まとめ

*再開発事業者の立場で眺めてみれば、
知識に疎い個人を主な相手先として進める再開発事業が如何に「収益性の高いビジネス」であるかが理解できます。特に「無知」、「無関心」、「他人任せ」の地権者が多い地域においては、再開発は業者側にとって絶好の「草刈り場」となります。
「無知」、「無関心」、「他人任せ」は致命的です。地権者は必ず損をします!

*再開発事業者の立場で眺めてみれば、
相場から乖離した格安の「保留床単価」を既成事実化させることが彼らにとり如何に重要であるかがわかります。
「保留床単価」が低いほど収益源である「保留床の面積」は増えるからです。しかしその分地権者の得る「権利床」は減ってしまいます。
この事実を知らないと地権者は損をします!

地権者が後日「こんな筈ではなかった」と後悔しないためには、地権者の一人一人が自ら積極的に再開発の基礎知識を身に付けると同時に、「再開発のカラクリと業者の手口」を知っておく必要があります。
(カラクリと手口の詳細に関しては、当HPの「カラクリと手口」欄にて公開していますのでご閲覧ください)
重ねて言いますが、「無知」、「無関心」、「他人任せ」は致命的となりますので地権者の皆さまはくれぐれもご注意下さい!

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