TOP_Topics 再開発、ここに注意

(8)書面なら安心できるか?

投稿日:2019年11月27日

●別の項で、口約束は実行されないことが多いことを述べました。ならば約束ごとを書面で取り交わしておけば手放しで安心できるかと言うと実はそうとも言えません。再開発は15年、20年、場合によってはそれ以上かかる息の長い事業です。その間に大災害や経済不況など何が起こるか予測できないし、事業者はあらゆるリスクに柔軟に対応できるよう、日ごろから対策を立てています。このような事情もあり、事業者からすれば出来るだけ地権者との約束には縛られたくないと言う心理が働きます。これは営利目的でリスク分散をはかりながら再開発を進めようとする事業者である以上、当然のことです。

●そこで地権者が事業者から入手する書面の中味が重要になってきます。
たとえ書面を入手したとしても曖昧な表現の個所があれば要注意です。また「xxxが生じた場合には別途協議する」など逃げ道が記されているケースが多いので、書面を入手しても中身を精査することが肝要です。

●曖昧な書面の代表例が、2018年に事業者が泉岳寺の地権者に対して配布した「モデル権利変換書」です。
(その詳細については謎の「モデル権利変換書」をクリック下さい

この書類は各地権者の従前・従後の資産額をモデルとして示したもので、各地権者に配られました。自分の資産の評価額がどれくらいあり、そして将来、地権者棟へ入居した場合、高層階や中層階ごとにそれぞれ何平米の床面積が貰えるのかが一目でわかる構成になっています。これを見て心をときめかせた地権者も多かったかも知れません。

しかしこの書類、良く見ると誰が作成したのか全くわかりません。事業者名や責任者印はもちろん無く、窓口である準備組合の名前すらありません。おまけに「モデル」、「概算値」、「今後変更となる場合がある」など逃げ道が随所に記載されています。

何れにしても、知名度の高い事業者が取り仕切る泉岳寺の再開発計画において、「誰が作成したかも不明な書類」を地権者へ提示して同意書への捺印を取ろうとしたのですから、事業者側のコンプライアンスは一体どうなっているのか疑いたくもなります。

自分たちが提示する書類にはハンコを押さず、地権者から取り付ける書類にはハンコを押せと言うのですから全く不公平であり不平等です。

このように再開発は地権者にとり不利で不平等なことばかりなのです。

書面をとったからと安心していてはいけません。必ず中身を精査して下さい!

出来れば専門家のチェックも受けて下さい。素人判断は自己リスクとなります!

 

(注)当ホームページで使用する「事業者」又は「開発事業者」の用語は、住友不動産の他、再開発推進に携わるコンサル、設計事務所、その他関係企業や個人を包括するものとします。

-TOP_Topics, 再開発、ここに注意

関連記事

(189)再開発後に待ち受ける新たな地権者地獄(前編)

「区域外の構築物」の設置にはご注意あれ! 住友不動産の再開発が終わり、地権者が新築の地権者棟へ入居できたとしても、「やれやれ、これでホッと一息!」などと安心はしていられません! 権利変換が終了した後も …

(43)準備組合は設立すべきか?(その1)

最近、首都圏各地の複数の地権者団体から、「再開発に向けて準備組合を設立したいとの提案が出されているが、果たして応じるべきか?」との相談を受けています。 もちろん、地域ごとに事情は異なりますし、地域全体 …

(76)住友はやはり保留床を買わない?

本トピックスは、(63)住友は本当に「保留床」を買うか? 及び(71)住友は本当に「保留床」を買うか?(その2)からの続きです。 やはり住友が保留床を買う確約など存在しなかった? そう思わざるを得ない …

(84)疑惑へと発展か?(その3)

本トピックスは(77)仲見世に優遇住宅か?、(78)仲見世に優遇住宅か?(その2)、(79)疑惑へと発展か?、並びに(81)疑惑へと発展か(その2)からの続きです。 「準備組合」がついに本性を現した! …

(144) なぜ「準備組合」は不適格なのか?

なぜ「準備組合」は相手として不適格なのか? 泉岳寺「地権者の会」では、その主な理由を記した書簡を6月22日付で準備組合理事長宛に送付しました。 その書簡を入手しましたので、解説を交えながら要点を皆さま …