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(カラクリ-15)地権者必見!三菱が1,850億円も儲けるカラクリ

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結論から先に言うと、カラクリの核心部は

三菱地所が仕掛ける「激安保留床単価」

にあると言えます。
現場は三菱地所(注1)が総事業費1,500億円を投じてタワマン建設を計画中の「芝三丁目西地区市街地再開発事業」(東京都港区)。
この地区では三菱地所が地権者に対して「等価交換して終わり」を強いる一方で、三菱側は竣工時に1,850億円もの「含み益」を得るとの試算結果が出たことは過去のトピックスで何度も報じている通り。
この問題について地権者側は1年以上に亘り三菱地所に対し説明を求めています。しかし、

三菱地所は今も沈黙したまま説明責任を果たしていません!

デベロッパーとして極めて無責任、且つ不適切な対応です。

地権者の財産権にも影響を及ぼす重大なインシデントであり、三菱地所は他地区でも同様の手口を用いて再開発を進めようとしているのでは?との疑念も広がりつつあります。そこで各地の地権者の皆さまにも実態を知って頂くため、本トピックスでは三菱地所が1,850億円もの莫大な利益を生み出す錬金術を再度皆さまへわかりやすく解説して参ります。

(注1) 関与するデベロッパーは三菱地所三菱地所レジデンス丸の内よろずの三菱系3社です。本トピックスでは便宜上、これら3社を合わせて「三菱地所」又は「三菱」と呼ぶことにします。

 

Contents
1. プロジェクトの概要
2. 三菱が自ら提示した数字を組み合わせた結果がこれ
3. 一方、近隣地区のタワマン分譲価格はこれ
4. 三菱地所の「含み益」を計算してみた
5. 「激安保留床単価」についてのおさらい
6. 今も地権者を見下し続ける三菱地所
7. もはや地権者の我慢も限界!
8. まとめ

プロジェクトの概要

● プロジェクト名: 「芝3丁目西地区市街地再開発事業」
● 主たる建築物: タワマン
● 地権者総数: 約150名(内、約9割が借地権者)。
● 再開発業者: 三菱地所(株)三菱地所レジデンス(株)、及び(株)丸の内よろずの三菱系3社。
● 補助金予定額:40億円
● 現状:準備組合段階。問題山積で都市計画決定には至っていない。

三菱が自ら提示した数字を組み合わせた結果がこれ

一方、近隣地区のタワマン分譲価格はこれ!

三菱側が自ら「近隣のタワマン」だとして言及した白金ザ・スカイ(45階建て、総戸数1,247戸、2023年竣工)について2025年10月時点での分譲価格は以下の通り。

三菱地所の「含み益」を計算してみた

上記からもわかる通り、若干のタイムラグはあるものの、三菱側が提示した保留床単価440万円/坪が、いかに近隣の分譲相場から乖離した激安単価であるかがわかります。(因みに、三菱側は今も440万円/坪の単価を堅持中。何としても既成事実化を図りたい様子がうかがえます)

仮に近隣地区のタワマン平均分譲相場を極めて保守的な1,000万円/坪と見做し、三菱地所が取得した保留床のすべて(33,030坪)を竣工時に売却した場合、

三菱側の売却益は1,850億円

との試算結果となります。
売却しない場合には、同額が彼らの「含み益」となります。

三菱が「大儲け」するこの過程を文章で言い表すと以下の通り。

因みに、上記の計算で用いた分譲単価(1,000万円/坪)は低層階の最低販売単価を基準にした極めて保守的な単価であり、より現実的な分譲単価である1,300~1,500万円/坪を基準に考えれば、三菱地所の利益は約2,800~3,500億円にも上る試算となります。
莫大な利益の源泉が激安保留床単価にあることは言うまでもありません。

事業主体である地権者が「等価交換して終わり」の扱いを受ける一方で、
業者に過ぎない三菱地所がこれだけ「ぼろ儲け」すると言うのはどう考えてもおかしな話です。全国各地の三菱再開発区域内の地権者たちも自らの地区の実態について検証してみるべきではないでしょうか?(注2)

(注2) 日本経済新聞も2025年8月15日付朝刊において三菱地所が前期に5兆円もの「含み益」を得るなど業界でも突出して莫大な「含み益」を得ていると報じています。尚、著作権の関係で同記事を掲載することは出来ませんが、ご興味のある方は図書館やインターネットのデータサービス等にてご閲覧ください。

「激安保留床単価」についてのおさらい

再開発業者の得る保留床面積は、

保留床面積(坪) = 保留床処分金 ÷ 保留床単価(坪)

の計算式で決まります。この内、保留床処分金は定額で決まりますから「保留床単価」が低いほど保留床面積は増えて行き、再開発業者は得をします。しかしその一方で、保留床面積が増えた分だけ「権利床面積」は減りますので地権者は損をします。
再開発業者側が恐れるのは、この実態を地権者に気付かれることです。
しかし三菱地所の願いもむなしく、芝三丁目の地権者たちはこの実態に気づいてしまいました!

今も地権者を見下し続ける三菱地所

地権者には「等価交換して終わり」を強いる一方で、三菱地所は竣工と同時に1,850億円もの含み益を得る!この不平等について地権者側は三菱地所に対し1年以上に亘り説明を求めています。しかし、三菱地所は沈黙し続けるばかりで説明責任を果たそうとしません。

更に地権者側は、三菱地所に対して最新の事業計画数字の提示を求めていますが、三菱側は事業計画数字も提示しようとしません。

三菱再開発傘下の各地の地権者の皆さま!
これが三菱地所の実態ですのでご注意ください。

そもそもデベロッパーである三菱地所が、事業主となる地権者からの疑問や要望に一切答えようとしないのは極めて不自然ですが、地権者の犠牲のもとで「大儲け」を企む三菱地所の手の内が地権者に知られてしまった以上、説明のしようがないのかも知れません。

もはや地権者の我慢も限界!

この様な状況にもかかわらず、何ごともなかったかのように地権者たちに対して再開発への執拗な勧誘を続ける三菱地所。その三菱地所に対し、先月20数名の地権者たちが「もはや我慢も限界」だとして

三菱地所に対し「勧誘(接触)不要通知書」を送付

しました!
今後、住戸訪問をはじめ、電話、メール、ファクスなど、郵便以外の手段による連絡勧誘行為は一切お断りと言う強い内容です。

なぜ地権者たちをそこまで追い詰めてしまったのか?

三菱地所はこの事態を重く受け止め、特に現場へ足を運ぶことのない三菱地所本社の経営陣は今一度現場で三菱社員たちにより何が行われているのかを見極め、そして反省すべき点はしっかりと反省すべきではないでしょうか? 三菱地所は地権者を決して軽く見るべきではありません。

まとめ

再開発には、地権者が名実ともに主導して進める「自発的再開発」と再開発業者が主導権を握り進める「強制的再開発」の二種類があります。
後者の場合、地権者の財産権は不当に侵害され、本来地権者が享受すべき開発利益をすべて営利目的の再開発業者に持って行かれてしまう懸念が生じるので地権者は注意が必要です。

今回取り上げた芝三丁目西地区は典型的な「強制的再開発」の事例だと考え、地権者の土地資産が「等価交換して終わり」とされる一方で、業者である三菱地所が1,850億円もの莫大な「含み益」を得る懸念があることを検証しました。
三菱地所が自ら公表した数字を根拠に行った検証であるだけに、検証結果の精度は高いと自負しますが、もしこれが事実でないと言うのであれば、三菱地所は地元地権者たちに対し書面を以てしっかり説明を行うべきです。
残念ながら三菱地所は

今も地権者に対し説明責任を果たさぬまま
何ごともなかったかのように勧誘活動を進めようとしている

点に彼らの根本問題があります。

この事態を「もはや我慢も限界」だとして地権者20数名が一斉に三菱地所に対して「勧誘(接触)不要通知」を提出しました。
20数名と言うのは地権者総数の約15%にも相当する数だけに、三菱地所が今後どのような対応を示すのか?
当サイトでは引き続き動向を皆さまへ「事実」としてお伝えして参ります。

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