本トピックスは、
(行-19) 港区は三菱の「ぼろ儲け」を黙認か?(その①)
(行-20) 港区は三菱の「ぼろ儲け」を黙認か?(その②)からの続きです。
今回は、港区が公式ホームページ上で公開した「不適切な地権者対応」から見えてきた区の行政指導の「問題点」や「矛盾点」を、
港区役所が犯した3つの過ち
として整理してみました。
1. (過ち①) 港区は「地権者の指摘事項」に言及すらしない!
2. (過ち②) 港区は自らの「監督責任」を放棄しようとしている!
3. (過ち③) 港区には「透明性」と「説明責任」も欠如!
4. まとめ
【過ち①】
港区は「地権者の指摘事項」に言及すらしない!
地権者側の指摘事項
芝三丁目の再開発事業において、三菱地所が1,850億円もの「含み益」を得る懸念があり、公共性の高い事業として問題があるのではないか?
港区の回答
再開発組合が権利変換計画を定める際(=即ち再開発の正式決定後)に縦覧や意見書提出等の機会が設けられているので、そこで再開発計画が公正で妥当かを確認できる。
港区の問題はここにあり
① 再開発の決定前に発覚した問題を、再開発の決定後に提起すれば良いとした区の指導は「地権者の再開発への同意」を前提とした指導であり、論理的矛盾があるだけでなく地権者たちを誤った方向へ導く危険な指導だと考えられます。(一旦再開発が決定すると地権者は実質的に後戻り出来ないと言う現実を無視した区の極めて不適切な指導!)
② 更にもう一つ問題があります。今回の論点(=疑惑)は「三菱地所の過大な含み益」についてです。税金も投入される公共性の高い再開発事業において、特定の民間業者が過大な含み益を得る制度運用など言語道断であり社会も決して容認しません。しかし港区はこの点には一言も言及しないまま、単に都市再開発法に基づく手続きの説明に終始するだけで、あたかも三菱の莫大な含み益を黙認するかの如く何の対応策もとらないとしました。
区内の再開発計画を主管する立場にある港区が、区民から重大な問題提起(=告発)を受けたにも関らず、論点には一言も言及しようとしないまま「見て見ぬふり」を決め込んだことは問題です。更に「制度的な手続き」の説明に終始した言動は「論点ずらし」そのものであり、「臭いものに蓋」をしようとする区の姿勢が見てとれます。
もはや行政指導のあるべき姿とは程遠く、まさに行政の「不作為」や「業務怠慢」が疑われる事例だと言え、区の責任は重大です。
【過ち②】
港区は自らの「監督責任」を放棄しようとしている!
地権者側の指摘事項
再開発事業を通じて三菱地所が過大な「含み益」を得る可能性があり、行政の監督官庁である港区がこれを認識していないのであれば、直ちに実態調査を行うべきではないか?
港区の回答
再開発組合が権利変換計画を定める際(=即ち再開発の正式決定後)に縦覧や意見書提出等の機会が設けられているので、そこで再開発計画が公正で妥当かを確認できる。従い、港区は実態調査を行わない。
港区の問題はここにあり
再開発組合の設立後(=再開発の正式決定後)は監督責任が「港区」から「東京都」へ移管されます。この点に着目し、「業者の過大な含み益問題」に巻き込まれたくない港区担当部局が、地権者からの問題提起を先送りすることで東京都へ監督責任を転嫁しようとした可能性が考えられます。
(まさに昔からよく言われる「役所のたらい回し」という行為です。)
実際に区の地権者たちへの指導は「疑念があるなら東京都とやってくれ」と言う内容です。しかしこれは単なる先送りで済む問題ではありません!
地元地権者たちは、再開発の是非を検討する過程で三菱地所が過剰な利潤を得る疑念が生じ、そのしわ寄せが地権者の資産評価に及ぶのではと心配したからこそ区へ問題提起(=告発)したわけであり、その検証を「再開発決定後」の手続きに委ねた港区の行政指導は、地権者の正当な権利を侵害する公務員の越権行為に該当する可能性があります。
また国家賠償法のもと、公務員には善管注意義務(注1)も課せられていることから、区が自らの監督責任のもとで実態調査を行うのは当然のことであり、もし区がこれを不当に回避しようとしたならば、まさにそれは「不作為」そのものであり「業務怠慢」だと見做されるべきではないでしょうか?(地元地権者たちは、弁護士等の専門意見も聞いた上、港区長に対し抗議されては如何でしょうか?。泣き寝入りすべきではありません。)
(注1)善管注意義務とは「善良な管理者の注意義務」の略で、社会通念上当然に要求される注意義務のことを言います。公務員の場合は民法ではなく「国家賠償法」がその根拠となります。今回の事例で言えば、「港区が故意または過失により違法に地権者の権利を侵害し損害を与えたとき」などが善管注意義務違反に該当します。因みに、「過失」とは「職務上当然尽くすべき注意義務を尽くさない」場合を言いますので、そのように考えれば、今回港区が公式ホームページ上で公開した「不適切な行政指導」には「故意・過失」と認定され得る言動が満載だと言えるのではないでしょうか?
【過ち③】
港区には「透明性」と「説明責任」も欠如!
地権者側の指摘事項
「三菱地所が1,850億円もの巨額の含み益を得る」可能性があることを区は把握し容認しているのか? そうでないのなら実態調査を行い、(「再開発事業の利益配分」や「事業の透明性」等について)具体的な説明を行ってほしい。
港区の回答
再開発組合が権利変換計画を定める際(=即ち再開発の正式決定後)に縦覧や意見書提出等の機会が設けられているので、そこで再開発計画が公正で妥当かを確認できる。従い、港区は実態調査を行わない。
港区の問題点
問題は区が論点である「三菱地所の過度の含み益」に関して一切言及しようとしない一方で、「実態調査は行わない」と結論づけた点です。
公共性の高い再開発事業においては、地権者(=区民)からの問題提起に正面から向き合い、地権者に対し情報を提供し説明責任を果たすことは行政の重要な責務です。残念ながら今回の件では港区はその責務を放棄したと見做さざるを得ません。
前述した通り、今回の事例では港区(職員)の「善管注意義務違反」や職務の「不作為」や「怠慢」等が疑われるため、当該地区の地権者たちは一度弁護士等と相談した上で港区長区へ抗議すべきではないでしょうか?
まとめ
港区の職員には国家賠償法に基づく善管注意義務が課せられる他、憲法第15条2項が定める「すべて公務員は全体の奉仕者であり一部の奉仕者であってはならない」なる規定の遵守も義務付けられています。更に、港区役所が区民の納める税金の一部で運用されていることも勘案すれば、
港区は区民でもある地権者に対して
「公正」、「公平」、「透明性」に欠ける指導を
行うことがあっては決してなりません。
地元地権者も区民ですから、もし不当な扱いを受けたと感じたら、これを人権や財産権の侵害として捉え、積極的に声を上げるべきではないでしょうか?
港区側も是非とも自らの過ちを認め、直ちに公平、公正、且つ透明性ある行政へと切り替えて頂きたいものです。地権者はしっかり見ています!
【編集後記】
最近、ストーカー殺人事件のニュースをよく耳にします。
残念に思うことは、被害者が事件発生前に警察へ「通報」や「相談」を行っており、更には「被害届」まで出していたにも関らず、警察側の対応が「悪い」又は「遅い」ために大切な命を落としてしまう事例が散見される点です。
今回の港区の「地権者対応」もこれと似たパターンではないでしょうか?
「被害者」を「地権者」に、「加害者」を「三菱地所」に、「警察」を「港区役所」に、そして「被害届」を「問題提起」に置き換えて考えてみると問題の所在が見えて来ます。
再開発事業では命までは失わないとしても、命の次に大切な土地資産を失いかねない点で両者には共通項があると言えます。
また弱い立場にある者(=再開発の場合は地権者)が常に被害を被る点でも両者は共通しています。そしてその弱者を守る役割を担うのが行政機関である「警察署」であり「港区役所」なのです。港区には是非とも自らの役割と責務を再認識し、頑張って貰いたいものです。応援しています!