TOP_Topics 再開発、ここに注意

(3)説明会で気をつけること

投稿日:

初期の段階(都市計画決定前)に行われる事業者側主催の各種説明会において、参加者が気づいた点や感じた点を列挙します。

「上から目線」で説明が行われていると感じる場面が多い。
2018年3月に開催された全体説明会で実際に起きた出来事です。
開会直後に司会者が注意事項として「本日の説明会での録音・録画はご遠慮願います。但し、私共は記録の為録音させて戴きます」と切り出したのです。
録音・録画を禁止する正当な理由など何もない筈なのに何という扱いなのでしょう。案の定、説明会終盤の「質疑応答タイム」にある地権者が「その根拠を説明せよ」と詰め寄り、司会者が謝罪する結果となりました。もちろん事業者側に悪意はなかったと思います。しかし普段の事業者側の地権者に対する「上から目線」がこのような場面で無意識に出てしまったのでしょう。

地権者の平均的な知識レベルより少し上のランクで説明が進行する
説明会は全体としてはわかりやすい構成で、且つ丁寧に行われます。しかし説明には時として一般には使用されることの少ない専門用語が使われたりして、結果として「わかったようで良くわからない」状態で帰宅する地権者も多いのでは。もっとも地権者側の知識レベルも千差万別ですし、勉強不足を指摘されればそれまでですが、それでも全体的には「地権者の知識よりも少し上のレベルで説明が行われているな」と感じる場面がよくあります。これが意図的なものではないことを願っています。

説明会は何度も開かれ多くの資料が配られる
説明会は全体説明会の他、マンションや仲見世と言った地権者別にも頻繁に開かれ、開催の都度様々な説明資料が配られます。事業者側が作成する資料ですから当然彼等が理想と考える内容が盛り込まれています。出席した地権者は資料を受け取るだけで、都度内容に対して確認や同意を相手から求められることはありません。しかし注意すべき点があります。事業者は説明資料を時間をかけて何度も配ることでそこに盛り込まれた内容を既成事実化し、事業を先に進めてしまう懸念があります。将来、地権者が何らかの問題に気づき「聞いていない!」、「反対だ!」と抗議をしても、事業者側はすかさず「過去に何度も資料にてご説明させて戴いており、既に皆さまからご了解を頂いたものと認識しております」などと畳み込んで来る懸念があります(このことは実際に都内の別の再開発計画において確認されています)。まだ泉岳寺ではそのようなケースは報告されていませんが、事業者側の手法の一つとして知っておくべきです。

都合の良い話はするが、都合の悪い話はしたがらない
これは何も不動産取引に限らず、営利企業であればどこにでもよくある話です。しかし、私たちが真に懸念するのは、都合の悪い質問をすると事業者側は正面からなかなか答えようとしないことです。説明会後半の質疑応答タイムには多くの地権者が関心を持つ「資産の保証」や「将来の生活再建」と言った質問をします。しかし多くの場合、事業者側は「ご意見として承ります」、「一度検討させて戴きます」とその場での返答を保留し、結局、そのまま回答をしてこないと言ったケースも散見されます。この点に不満を持つ地権者は多いようです。

重要事項はなかなか書面で出してくれない
地権者が重要だと認識する事項ほど、事業者はこれを書面で確認をしたがらない傾向にあるように見受けられます。その最たるものが地権者の「資産」と「将来の生活再建」に関する保証です。「将来のことはわからないので具体的なことは紙には書けない」、「再開発とはそういうものだ」などと言われ畳みかけられてしまいます。しかし、果たしてそれでよいのでしょうか?
私たちの大切な資産を何の具体的な保証もないまま再開発のために供出することなど出来ません。将来、新築の地権者棟に入居できたとしても、「管理費」や「修繕積立金」が高騰すれば生活を維持して行くことも出来ません。年金生活者にとっては致命的です。地権者にとり大変重要な事項にも係らず、事業者は書面による保証を出したがりません。その一方で、彼らは「再開発なら皆さん持ち出し無しで新築マンションをもらえる」などと都合の良い話ばかりして再開発への書面による「同意」を取り付けようとしているのですからフェアではありません。

最近では資料に代わりスライドを見せられるケースがある
事業者が説明の際に利用する道具ですから、地権者側が「紙で配れ」、「スライドはダメだ」などと注文を付けることは出来ません。しかし、ここで注意すべき点があります。紙の資料であれば自宅へ持ち帰り後日内容の再確認が出来ますが、スライドは一旦見終わり、電源が切られると、後には何も残りません。残るのは「記憶」だけです。あくまでも一般論ですが、見せる側が「相手に見せたいが証拠としては残したくない」場合にはプロジェクターが適しているのです。
将来、スライドを見せられた場合、重要だと思う場合には相手に断った上で写真を撮っておくことを推奨します。将来のトラブル防止のために。

説明会はガス抜きの場?
説明会によっては「地権者の不満を解消させるためのガス抜きの場としても利用されているのでは」と思わせる時があります。2018年3月に開催された全体説明会がそうでした。事業者側があたかも再開発が既定路線であるかのような説明を行ったあと、質疑応答タイムとなりました。すると多くの地権者から批判的な意見や不満が続出し、100名ほどの参加者の大半が再開発に反対ではと思わせるほどでした。
しかし「的外れな質問」や「感情的な意見」も多々あり、これらの方々は閉会後になぜかすっきりした顔をされていました(笑)。まさにガス抜きです!
しかしこれではいけません!私たちの資産に係る重要な説明会ですし、時間も限られています。それに説明会の場を設けた事業者側に対しても失礼です。
地権者も事前に勉強し、冷静な態度で説明会に望み、そして建設的な意見を述べるよう心掛けるべきではないでしょうか?

-TOP_Topics, 再開発、ここに注意

関連記事

(131)地元の「災害危険度」をご存じですか?

本トピックスは(130)業者が仕掛ける「不安商法」にご注意!の続きとしてお読み下さい。 前トピックスでも報じた通り、一部のコンプライアンス意識の欠如した再開発業者は、防災面での不安を過度に煽ることで、 …

(98)仲見世疑惑に対しても住友は拒否!

本トピックスは(91)住友不動産も疑惑に沈黙か?並びに(92)住友不動産も疑惑に沈黙か?(その2)からの続きです。 前トピックス(97)住友不動産が回答を全面拒否!でもお伝えしていますが、 住友不動産 …

(212)危険な「…だろう」の思い込み10選

再開発事業者は営利目的で再開発を進めようとする民間業者ですから、彼らは様々な場面で地権者とは利害が対立します。 特に地権者の従後資産に大きく影響を与え得る「従前評価方針」、「保留床単価」、「増床制限」 …

(141)土地持ちは損をする!(動画を公開)

土地所有者にとり、まさに判断の「決め手」とも言える重要な問題。 それは再開発で、地権者の「土地」がビルの「床」へ変換されることで、資産の価値が時間と共に減って行く(=損をする)と言う深刻な問題です。 …

(6)再開発は6年で終わる?

事業者側が作成した資料のなかで、「再開発は15年かかるものだと聞いていますが、本当ですか?」の質問に答える形で、「いいえ、都市計画決定から6~7年程度で完成する想定となっています」と記されています。 …