公園管理の現状
再開発に伴い移設が水面下で検討されているのは、開発区域内にある港区所有の「泉岳寺前児童遊園」。港区は再開発を認可する立場にありながら、一方では再開発エリア内にある児童遊園の「地権者」でもあると言った複雑な立場にあります。(役所内では担当部局が分かれており、再開発を担当するのが「開発指導課」であるのに対し、児童遊園は「土木課」の管轄です)
担当部局は違っても同じ役所だと思うのは誤りで、両部局には住民への対応と言う点で大きな差があります。以下で詳しく説明して行きます。
移設計画と反対運動の現状
再開発事業者は、現在の児童遊園の敷地に「高層オフィスビル」並びに「地権者棟」を建設したいとして、港区と(水面下で?)協議を進め、児童遊園を近隣の交通量が多く危険な場所へ移転させることを画策しているようです。
一番の問題は 再開発を優先させれば子供の安全が損なわれる点です。
このような状況下、地元では2018年11月に「児童遊園移設に反対する会」が結成され、民間企業の営利目的のために、子供たちの安全・安心を軽視してまで区の公園を移設することは断じて許されるべきではないとして、2019年8月までに港区民を中心に 600名を超える市民による移設反対の署名を集め、武井港区長あてに移設を行わないよう嘆願書を提出しました。
まだ区長とは面談できていないものの、「移設に反対する会」では公園移設計画の担当窓口である港区「土木課」と複数回に亘り協議を続けています。
気になる土木課の不穏な動き
さて問題はここからです。
世間ではマスコミや市民団体などから「役所の隠蔽体質」が問題視されることがよくあります。役所が住民に対し情報を提供したがらず、その結果、知らぬ間に再開発計画が水面下で進んでしまい、気が付けば「再開発」がほぼ決定してしまったなどと言うケースで、最近全国各地で増えていると聞きます。
まさにそれが港区の土木課でも起きるのではないかと私たちは懸念しています。
住民には情報を提供したくないと言った姿勢が顕著に表れているからです。
(これが果たして「土木課」の体質なのか、或いは「担当責任者」の問題なのかは不明ですが、何れにしても本来の行政のあるべき姿ではありません)
【土木課の隠蔽体質?その①】
●土木課の担当責任者は昨年11月に、“地権者の方々が主体”だと説明する泉岳寺の「準備組合」と既に(移設に向けた)打合せをしていることを認めています。
●しかし、今日に至るまで 一切その内容を具体的に説明しようとしません。
業を煮やした地元住民が、港区の情報公開制度を利用して、準備組合が過去に土木課へ提出した一切の資料を請求しましたが、ここでも彼らは内部の事業に関する情報であるとして 情報公開請求にも応じませんでした。
●まだ再開発は初期の計画段階に過ぎず、住民へ公開できない情報などない筈です。更に、本件では区民を中心とする600名もの住民が移設に反対表明をしているにも関わらず、情報公開請求にも応じようとしない土木課の姿勢は問題です。区役所のあるべき姿とは言えません。区民には公に出来ない「何か」があるのではと勘ぐってしまいます。
【土木課の隠蔽体質?その②】
●更にはっきりと隠蔽体質ではと思わせる事例がありました。
「児童遊園移設に反対する会」では2019年8月16日付で港区長宛に 移設しないことを求める「嘆願書」を提出しています。これは港区民を中心として累計600名が署名した重要な区長宛の書簡です。
●ところが この書簡までもが区の文書管理台帳で「一般非公開」とされていたのです。
この「嘆願書」は港区民を中心とする600名もの住民が純粋に子供たちの安全を考え「移設しないでほしい」と訴えた書簡です。署名人の個人情報保護は別として一般公開されて困る記載など一切含まれていません。「嘆願書」を提出した側がそのように言っているのですからなおさらです。それにも関わらず「一般非公開」とされたのです。移設反対運動が起きている事実を区民には知られたくなかったということなのでしょうか?もし土木課が自らの裁量で公開・非公開を判断していたのだとしたならば、港区情報公開条例にも抵触しかねない行為ではないでしょうか?区民の「知る権利」が阻害されたことになります。
実はその後、地元住民がこの件で抗議を行った結果、土木課からは「改める」との言質を得ました。しかし実際に「一般公開可」となったのかは現時点ではまだ確認できていません。何れにしても区役所のあるべき姿ではありません。
【不当に設立された準備組合とのつきあい】
ところで、土木課が打合せを行っているとした「準備組合」ですが、最近港区に保管されていた公式文書にて、 準備組合が不当に設立されていた事実が明らかとなりました。
(詳細はトピックス(34)準備組合は謎だらけ(その3)をご覧ください)
「移設に反対する会」では早速2020年4月9日付書簡にて、土木課に対し、そのような不透明な団体とは付き合うべきではない旨、通告を行いました。行政が「不当」、「不正」、「不透明」と言われる団体と付き合うことは社会通念上許されることではないからです。
もし土木課がこのまま「不当な準備組合」との交際を続ければ、地元住民の反発のみならず、広く社会からも注目を集めることになります。
土木課には、是非とも区民に対して公平・公正で、且つ隠しごとのない透明性ある行政を行って頂きたいと願っています。
まとめ
冒頭でも述べましたが、役所が住民に対し情報を提供せず、その結果、住民の知らぬ間に再開発計画が水面下で進んでしまい、気が付けば「再開発」がほぼ決定していたなどと言う事は絶対にあってはなりません。
このため私たち港区民も、公平・公正の観点から行政の「不穏な動き」や「隠蔽体質」に対しては毅然とした態度を取ることが重要だと考えています。
皆さまの地元でも、公園の移設や廃止をめぐり、将来類似の事例が発生するかもしれません。是非とも今回の事例を参考としていただければ幸いです。
編集後記
昨今のコロナウィルスの感染拡大に伴う「学校の休校」や「企業のテレワークの普及」もあってか、泉岳寺前児童遊園では終日、子供から大人に至るまで多くの区民が訪れ、互いに一定の距離は取りつつも「気分転換」や「軽い体操」などの目的で賑わいを見せています。(4/15/20現在)
まさに 現在の場所にある児童遊園が区民にとり憩いの場であることが実証された形となっています。このかけがえのない児童遊園を民間企業の営利目的のために移転(しかもより危険な場所へ移転)するなど決してあってはならないことだと改めて思う次第です。
尚、過去の公園問題の経緯に関しては以下のトピックスをご参照下さい
(17)公園移設反対運動(その1)
(18)公園移設反対運動(その2)