(マンション区分所有者はご注意!)
管理組合を利用した「多数賛成」演出の仕組み
「マンション管理組合を味方に引き込みさえすれば、個々の区分所有者などあとでどうにでもなる…」 そのようにもとれる準備組合の活動実態が、各地の住民団体との情報交換を通じて明らかになって来ました。(注1)
その手口は次の通りです。
区域内に狙いを定めた分譲マンションがあると、再開発業者は先ずマンション「管理組合の理事長」に声をかけ、「準備組合の理事」として迎え入れようとするのだそうです。なぜそこまで優遇するのか?目的の一つは、管理組合を味方につけることで、後日「マンション全体が再開発に賛成」だと見せかける「演出」を行いやすくするためなのだそうです。
「マンション管理組合」を準備組合へ加入させることで、そこに住む区分所有者たちは[個々の権利者の意思とは関係無く]全員が準備組合へ加入したと見做されます。そしてその加入の事実をもって[個々の権利者の意思とは関係無く]マンション全体が「再開発には賛成の意向」だと見做す筋書きです。
各地の住民団体との情報交換を通じて初めてわかった再開発の実態です!
(注1)
マンション管理組合が法律や管理規約に基づき、総会での正式決議等を経た上で準備組合へ加入したのであれば、少なくとも「手続き面」での問題はクリアされます。しかし実際にはそのような手続きを経ることなく加入した事例が各地で表面化し、問題となっています。)
「加入」しただけでなぜ「賛成」となるのか?
そう仰る方は、先ずは地元の準備組合の規約を良くお読み下さい。各地で設立される準備組合の規約には「目的条項」があり、そこには必ずと言って良いほど「再開発事業に向け検討・準備を行うこと」と記されています。
一旦、加入者とされた以上、いくら「私は再開発には反対だ」、「情報を得る目的で加入しただけだ」と主張したところで、この条項がある限り加入者全員が再開発には前向きだと見做されます。マンションには多数の区分所有者がいますので、それがそのまま「マンション住民の熱意」、即ち「地元の熱意」だとして行政や議会へ報告されるのだそうです。準備組合が加入率の高さにこだわるのも、まさにこの理由からだと思われます。
「それなら私は直ちに脱会する!」と言い張ったところで、準備組合はマンションの管理組合単位での入会しか認めていないため、個人単位で脱退することは出来ません。辞めたくても辞められないのです。その様な状況下で、加入の事実を以て、マンション全体が「再開発には前向きだ」とされてしまうのです!
「同意書」の他に、なぜ「多数賛成」まで必要なのか?
「同意書」は行政が「都市計画決定」を実行する際に、地権者による合意形成が得られたことを確認するための最も重要な判断材料です。一方で、行政は「同意率」の他に、「地域住民の再開発への熱意がどれだけあるか」も判断材料とします。そこで再開発業者側が着目するのが「マンション」です。
「管理組合」を仲間に引き入れて協力を得ることができれば、多くの権利者が住む「マンション」は、「多数賛成」を演出をするには最適な舞台となり得るからです。以上は各地の住民団体との情報交換を通じて明らかになった実態です。マンション地権者の皆さまはくれぐれもお気を付け下さい。
実はマンション住民は軽視され続けている!
再開発事業では、マンションはあたかも一棟まるごとで計画への賛否を表明したかの演出がなされ、結果として、個々人の意向は反故にされます。
マンション地権者への不当な扱いはこれだけにとどまりません。
再開発業者は上述のごとく区分所有者を「多数賛成」の道具として利用しておきながら、一方で、都市計画決定に際して「マンションは1棟全体で1人」としか勘定しないと言う、区分所有者の「人権」にも抵触しかねない不平等なルールまで適用しようとしているのです。(注2)
マンション区分所有者の方々は、ここまで再開発事業者に軽視されても、それでも再開発へ同意したいと思われるのでしょうか?
マンション区分所有者の「1票の格差」問題とは
たとえマンションに「100人の区分所有者」がいたとしても、都市計画決定の同意率の計算では「戸建て1軒」と同等の「1人」としか見做されません。
もちろんそのような法律は存在せず、事業者側が勝手に決めたルールですがその影響は甚大です。例えば再開発区域が「権利者100人のマンション1棟と戸建て4軒の合計104人」で構成されていたとします。この場合、たとえ
マンション100人全員が再開発に「反対」しても、戸建て4軒が「賛成」すれば、80%の地権者同意があったと見做され、再開発は進んでしまうのです。
合計104名の内100名が反対したのですから実際の反対率は96%です。それなのに「80%同意」が達成されたとして再開発は進んでしまうのです。
この矛盾こそがマンション住民の「人権」にも係わる「1票の格差」問題です。
因みに、泉岳寺では既に41名のマンション住民が署名と共に港区長へ「1票の格差」是正を求める嘆願書を提出しています。
(注2:「本組合」設立時にはそのような法規定が存在します。しかし「都市計画決定」時にそのような法規定は存在しません。まだ再開発など何も正式には決まっていない「平時」から、事業者側が決めたルールを一方的に適用しようとすることには無理があります。ましてや港区長宛の異議申し立てまで出されている現状で、もしこれを無視して不平等なルールを無理やり適用しようとすれば、当然紛争となります)
まとめ
マンション管理組合を利用して「多数賛成」が演出される仕組みがわかってきました。区分所有者は知らぬ間に「再開発賛成」にされてしまうと言うのです。事業者は再開発事業を進めるため、マンション地権者を「賛成演出」のために利用しておきながら、いざ再開発の賛否を問う段階においては、「マンションは1棟で1人」としか計算しないと言うのです。これではまるでマンション地権者の「使い捨て」です。私たちもこれを見過ごす訳には行きません。
そもそもマンションは「住民による自治」が大原則ですから、法や規則に基づき、「民主的に運営されている管理組合」であれば何ら問題はありません。しかし現実には特定の管理組合役員が、準備組合側の意向に従い、マンション全体を再開発賛成へと不当に誘導しようとする様々な動きが各地で問題視されています。
さて皆さまの「管理組合」は果たして健全に運営されていますでしょうか?
決してこの問題に「無知」、「無関心」、「他人任せ」であってはなりません。