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(102)マンション住民を再開発へ引きずり込む法

投稿日:2021年10月20日

本トピックスは(100)マンション区分所有者は「使い捨て」?及び(101)マンション区分所有者は「使い捨て」?(その2)から続く「総集編」です。

各地の住民団体、専門家、NPO等を交えて地権者目線でマンション問題を協議した結果、事業者側がマンション区分所有者を再開発へ引きずり込む手口が徐々に明らかになって来ましたので、整理して皆さまへお伝えします。
前トピックスで報じた内容と一部重複する部分もありますが、マンション区分所有者の皆さまは自己の資産を守るためにも知っておくべき情報ですので是非とも最後までご熟読下さい。

事業者が狙うのは「マンション管理組合」!

既にお伝えしました通り、区域内にめぼしいマンションがあると、事業者が先ず着手するのは、マンション管理組合側の理事長や役員等を再開発準備組合の理事に迎え入れ、管理組合内部に再開発への賛同者を作ることです。

マンション管理組合を準備組合へ加入させることで先ずは①準備組合自体が「多数演出(=高加入率)」を装うことが出来ます。また、管理組合内部に賛同者を配置することで、②管理組合を使い、区分所有者たちを再開発賛成へと誘導することが容易となるほか、③区分所有者を「多数賛成」の道具として利用することも可能となります。その一方で、都市計画決定への同意率算定にあたり、事業者は④区分所有者が何人いようと「マンションは1棟で1人」としか数えないと言った差別を実行しようとします。
なぜ差別するのか?そうすることにより、マンション内における反対者の発言力を最小限に抑えられるからだと見ています。
このように…

「管理組合」を上手く利用して
マンション住民を再開発へ引きずりこむことが出来れば、
事業者側にとってこれほど都合の良いことはありません!

「1棟全体で1人」はマンション住民の権利の侵害

事業者はマンション区分所有者の権利を軽視しており、例え100人が住むマンションでも「全体で1人」としか勘定しません。この設例では各区分所有者は100分の1の発言権しか与えられないのです。「都市再開発法」ではたしかにそのような規定は存在しますが、再開発などまだ何も正式に決まっていない平時において再開発決定後の規定を適用することには無理があります
泉岳寺では41名の住民がこれを「権利の侵害」だとして港区長へ善処を求めています。

マンション管理組合は準備組合へ加入できるのか?

そもそもマンションの維持管理の目的で存在する「管理組合」が、マンションを壊すことを前提とする「再開発準備組合」に加入できるのかと言う議論が各地で行われています。
また、このような議論に入る以前の「手続き上の問題」として、理事長や理事の専断で準備組合に加入していた事例が各地で表面化しています。
管理組合が「区分所有法」や「管理規約」の規定に反し、正式な決議を経ぬまま準備組合へ加入することは許されません。皆さまの「管理組合」は正しく運営されていますでしょうか?ぜひとも「総会議事録」等を確認して見て下さい。

準備組合加入率80%は本当か?

各地の準備組合はどこも高い加入率を誇示するようですが、これも意図的な「多数演出」の一環だと見ています。高い加入率の背景には「管理組合単位で準備組合へ加入させることで、区分所有者全員を準備組合加入者と見做す仕組みがあるからだと考えられます。マンション比率の高い地域ほど現実との乖離が生じることになります。もし準備組合が個人単位で加入を募っていればそのような高い加入率にはならない筈なので、まさに数字のトリックだと言えます。例えば区分所有者が100人いるマンションで、仮に「80人が再開発反対」だったとしても、管理組合が準備組合へ加入することで100人全員が加入者とされ、マンション全体が「多数賛成」であるとして「地元の熱意」の演出に利用されかねないのです。
「加入」しただけでなぜ「賛成」なのか?とお思いでしょうが、準備組合規約には「市街地再開発事業に向けて準備する」なる条項があります。これがあるため、「私は再開発には反対だ」、「情報を得る目的で加入しただけだ」と主張したところで、加入者である以上、全員が再開発には前向き姿勢だと判断され、「多数賛成」の演出に使われてしまうのです。この仕組みに不満なら準備組合から脱会すれば良いのですが、悲しいことにマンション区分所有者は、管理組合単位での加入となっているため、個人としての脱退が出来ません!
辞めたくても辞められないのです。このようにマンション住民を半ば強制的に再開発賛成へと引きずり込もうとする仕掛けが至る所に潜んでいます。
さて「準備組合加入率80%」と言われて信頼するか否かは皆さまのご判断ですが、事業者発表の加入率が高ければ高いほど区分所有者が「いつの間にか再開発賛成にされる」懸念も高まります。これを防ぐには、先ずは区分所有者個々人が「マンション管理組合」の運営に不審な点は無いか、日頃から関心を持つことが肝要です。

あたかも「再開発が前提」であるかの
議案や回覧が館内で回り始めたら要注意です!

皆さまにおかれましては「いつの間にか賛成者」にされぬようくれぐれもご注意下さい。

再開発業者によるマンションの地上げにも要注意!

マンション区分所有者がもう一つ注意すべきは、再開発業者によるマンション内の地上げです。計画の進行と共に、業者が地上げを進めて行くことは一般に知られています。各地の再開発現場では「空き地が虫食い状態で点在する」と言った光景も散見されます。事業者が地域住民に対して「再開発が進んでいる」との雰囲気を醸し出すには効果的なやり方かも知れません。
しかし「空き地」ならまだしも、これが「マンションの部屋」となると話は別です。
業者はマンションを地上げした後、「空き家」のまま放置し「管理すら行わない」ケースがあるからです。再開発を早く進めたい業者にとってはマンションの劣化や治安面での不安増大は好都合なのかも知れませんが、それらが原因で火災や水漏れ等の事故が起きれば住民にとっては大きな迷惑です。
一般に、マンション管理規約では区分所有者に専有部分の適正な管理を行う義務を課しており、他の住民との共同の利益に反する行為を禁じています。
「物件を買い取った後は放置しておく」と言うのは決して許されない行為です。
区分所有者の皆さんは、「管理組合のチェック」と共に、「地上げされた物件の管理状況」にも注視して行く必要があります。

まとめ

再開発は公共性を謳いながらも、実際に優先されるのは再開発事業者の「もうけの論理」であることがわかって来ました。再開発は地権者の私権の制限を伴うだけに、もしそれが地権者にとり、不平等・不透明な形で進められるとなれば言語道断です。今般、首都圏各地の関係者との情報交換により、マンション住民を不当に利用することで、再開発へ無理やりこぎつけようとする事業者側の姿勢が垣間見えて来ました。特にマンション内に「準備組合の理事」がいる場合、その人物が管理組合を利用して「過度に再開発への勧誘」を住民に対して行っていないか注視して行く必要があります。
さて皆さまのマンションはどのような状況でしょうか?
再開発業者が如何なる「演出」や「勧誘」を行おうと、再開発の是非を判断するのは(区分所有者を含む)地権者です。再開発業者は「同意」を求めて執拗に地権者のもとへやって来ますが、「再開発は不要」と考えるなら、業者側と対話する義務はありません。少なくとも港区ではこのことを地権者に対して書面で確認済です。(今まで再開発だと言われ、業者との対話は義務だと思い込んでいた地権者にとっては朗報です!)
さて再開発に同意するか否かはあくまでも地権者個々人の自由裁量です。
しかし自分自身で充分「理解」し「納得」しない限り、安易に同意書には捺印すべきではありません。
このことは「将来こんな筈ではなかった」と後悔しないためにはとても重要です。

(注)「マンション住民を再開発に引きずり込む手口」に関しては、あくまでも住友不動産が泉岳寺の地権者に対し不平等、且つ不透明な形で実行しようとしている再開発事業の実態を解明しようとする中で明らかとなったものです。従い、全ての再開発事業者がこのような不当な手口を使うことを確認したわけはありませんので、この点はお含み置き願います。

YouTube動画はこちら(以下のサムネイルをクリックすることでご覧頂けます)

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