住友不動産が各地で展開する再開発の現場では、どこも準備組合への「高い加入率」が誇示される傾向にあるようです。
しかし、調べてみるとそこには
加入率が人為的に「操作」される仕組み
が存在することもわかって来ました。
例えそれが「違法」ではないとしても、事業者側に都合の良いルールばかりを適用して得られた、実態とは乖離した「高い加入率」であれば問題です。更にそのような数字を行政へ提出し、「地元の熱意は高い」などと説明することで都市計画決定へ駒を進めようとするのなら更に問題です。
残念ながら、住友不動産が他1社と共同で進める「中野4丁目西地区」では、不当に水増しされた「準備組合加入率」を根拠に準備組合が都市計画決定への申請を行なおうとしたとして、多数の地権者が準備組合から脱退する事態となり、裁判沙汰にまでなっています。(詳細についてはトピックス(111)なんと中野でも水増しが!そして訴訟へ…をご覧ください)
たかが「任意団体」の加入率ではないか!
そのようなご意見もあります。準備組合は法人格のない「任意団体」であり、単に再開発に関心ある人たちの集まりにすぎないとの位置付けですから、彼らが仲間内で集まり、何を話し合い、何を取り決め、そして何を行なおうと彼らの勝手ではないかと言う理屈です。
たしかに原則論としてはその通りかも知れません。
しかし「準備組合への加入率」は、それが行政へ報告された場合、再開発事業の是非に影響を及ぼす可能性があるだけに、もし水増しされた数字を根拠に都市計画決定がなされれば、準備組合や再開発とは関わりを持ちたくない地権者たちの「財産権」や「人権」、そして彼らの「将来設計」へも影響を及ぼすことになりかねません。
従い、「たかが任意団体の加入率ではないか!」として簡単に済まされる問題ではないのです。
なぜ加入率が水増しされるのか?
港区では「同意書」が都市計画決定の判断材料として重視される一方、「準備組合加入率」もまた地権者の熱意を計る材料として考慮されます。区市長村によっては「準備組合加入率」を重視し、それのみで都市計画決定を判断する自治体もあるようです。
このように、行政はどこも「加入率」を重要視している以上、再開発を早く進めたい事業者が、行政や地権者に対して「加入率を高く見せよう」と考えるのは理解できます。しかし、その数字が恣意的に演出されるとなれば問題です。
組合加入者を「賛成者」と見做す仕組み
住友再開発に於いては、準備組合加入者を「賛成者」と見做す仕組みがあるので、加入の際には注意が必要です。
準備組合の人間(実際には住友不動産の社員が窓口になることが多い)はどうもその事実を地権者には伝えていないようです。
それどころか、彼らは各地で「賛成でも反対でも構わないから」、或いは、「情報を得るために」などと言って準備組合への勧誘を行なうことが知られています。泉岳寺を始め、港区内の住友再開発の現場でも、そのように勧誘された地権者が多数いるようです。
しかし、住友不動産側のそのような説明を額面通りに受け取るべきではありません。彼らの説明を聞き、安易に加入することは薦めません!そこには「落とし穴」があるからです。
例え「私はもともと再開発には反対だ!」、「情報を取るために加入しただけだ」と主張したところで、一旦加入した以上、事業者は行政に対してその人物を「賛成者」だとして申告する懸念があるのです!
それはなぜか?
先ずは皆さまの地元の準備組合規約を良くお読み下さい。
規約には「組合の目的」として再開発の実施を「推進する」、「検討する」、「準備する」と言った条文が必ず書かれている筈です。
つまり、一旦「準備組合へ加入」すれば、事業者にはその加入者を「賛成者」として行政へ報告できる「根拠」が生まれてしまうのです。
これが「加入者」=「賛成者」とされる仕組みです。
住友不動産はこの事実を
地権者へはっきりと伝えているのでしょうか?
どれだけの加入者がこの事実を理解した上で加入しているのでしょうか?規約を読まなかったのは自己責任だと言ってしまえばそれまでですが、この仕組みにより、地権者の将来が本来とは異なる方向へ誘導されてしまうとしたら問題です。
泉岳寺の「加入率80%」…の仕組み
泉岳寺では地権者総数260名の9割弱に相当する約230名が主要4棟のマンション区分所有者です。
準備組合はこれら230名に対し、「個人単位」での加入を認めず、「マンション管理組合単位」でしか加入を認めていません。
「マンション管理組合」の加入を以て、館内の区分所有者全員が本人の意思とは関係なく組合員と見做されてしまう仕組みです。この方式なら「加入率80%」などいとも簡単に達成出来てしまいます。
区分所有者一人一人の意思を軽視したやり方です。
規約を良く読まずに加入した個人の場合には自己責任を問えますが、マンション区分所有者は個々人の意思とは関係無く、マンション管理組合の準備組合への加入を以て一律に「加入者」とされ、そして「賛成者」とされてしまうのですからたまったものではありません。
この仕組みを知れば、なぜ準備組合がマンション管理組合の役員を「準備組合理事」に招き入れようとするのかもご理解頂ける筈です。
まとめ
住友不動産が関与する再開発現場では、「準備組合加入率」までが「水増し」される実態が各地の地権者団体との情報共有を通じて見えて来ました。
準備組合へ加入すれば「賛成者」だと見做される懸念があるのに、規約をしっかり説明せず、「賛成でも反対でも構わないから」、「情報を得るために」などと言って勧誘しようとする行為は、もし事実だとすれば地権者を欺く行為だと言っても過言ではありません。
また、マンション区分所有者の加入を「マンション管理組合単位」でしか認めない仕組みも、高い加入率を得るための仕掛けであることがわかって来ました。「管理組合単位」ではなく、本来あるべき「個人単位」での加入を認めれば、加入率は間違いなく減るからです。
そもそも再開発の是非は「個人」が決めるものです。「管理組合」が決めるものではありません。準備組合への加入を以て「賛成者」と見做されてしまう仕組みが存在する以上、現行の方式は直ちに廃止し、個人単位での加入方式へと切り替えるべきです。
住友不動産は各地で「数字の水増し」の問題を起こしています。
地権者は不当な演出には毅然とした態度で臨む必要があります。
「準備組合加入率」は「同意率」と共に、行政が再開発を判断する際に重視する指標です。もしそれが人為的に操作されるとなれば、各地の住友再開発は最初から事業者の思惑通りの「出来レース」となってしまいかねません。決して許されるべき行為ではありません。