高齢者にとり「再開発は障害だらけ」!
本トピックスは(117)高齢者はつらいよからの続きです。
高齢シニア世代の地権者が抱える問題や悩みを、引続き「会話方式」にて取り上げてまいります。
再開発の話が持ち上がってから5年が経過したが、結局、地権者の同意は集まらなかったな。
この間、わしは5歳年をとった。残りの人生は静かに過ごしたい。
5年経ってもまだ目処すら立たぬ再開発話には、もうこれ以上翻弄されたくないと言うのが本音だ。
泉岳寺では本当に多くの高齢者が住んでいる。影響を受けるのはなにも地権者本人だけではないのよ!配偶者だって高齢者が多いし、それに最近では子供たちまで高齢者と言う家庭も増えているそうよ。
そこへ突然「再開発やるから引っ越して」と言われたらパニックだわ!
私たちにとり「再開発」は地域の「高齢者問題」でもあるのよ!
その通り。高齢者にとり目処すら立たない再開発話は本当に辛い。
幕引きを望んでいる高齢者は多い。皆さん口に出さないだけだ。
いま思えば初期の全体説明会で聞かされた話とは全然違っている。当時の資料には、2020年度に「明渡し、解体着工」と記されていたわ。今はもう2022年よ!私たちはどんどん歳をとって行くばかりね。
たしかに説明会ではバラ色の話ばかりだったな!悪い話を聞かされた記憶はない。わしらにゆっくりと考える時間も与えぬまま、説明会の直後から「同意書集め」がはじまったことも覚えている。
住友不動産の社員が地権者宅にやってきて、「皆さん賛成です!」、「取りあえず三文判でよい」とか言われ、言われるまま同意書へハンコを押してしまった地権者も多いと聞いている。
でもその後多くの問題が表面化し、同意する地権者もいなくなって行ったわね。今や同意する人は殆どいないらしい。
その通り。地権者だって「知識」が身に付けば再開発の実態がわかってくるから、当然、同意しない地権者も増えてくる。事業者はそうなることを過去の経験から知っている。だからこそ彼らは「地権者が知識を身につける前に出来るだけ多くの同意書をかき集めてしまおう」と考えたのだろう。実際に説明会が終わったとたん、わしらに検討する時間も与えないまま慌ただしく「同意書集め」が始まったのだから間違いない。
それが事実だとすれば公平なやり方ではないわね。
ところでいま何が一番大きな問題となっているの?
問題は山ほどあるが、やはり深刻なのは「地権者が事業リスクを負う」と言う問題かな?例えば、立派な再開発ビルを建てても「床」が埋まらなければ地権者が損失を負担することになる。そのような重要な話を今まで事業者は地権者へしっかり説明して来たのだろうか?わしの記憶にはない。
えっ?ビルの損失は再開発事業者が負担してくれるんじゃないの?
準備組合は何度も「住友不動産が買うから問題ない」と言ってるけど。
彼らの巧みな言葉のレトリックにはご注意下さい!そのように主張しているのは「準備組合」という法的位置付けのない任意団体だけです。肝心の住友不動産はそのような確約を一切地権者に対して行なっていませんね! この点は極めて要注意です。この状態で将来、再開発ビルの「床」の引取り手が見つからなければ損失は地権者が負担することになります。住友不動産を訴えても彼らに責任は生じない仕組みです。結局、地権者は「泣き寝入り」することになりかねません。
でもここは都心の一等地よ。そのような場所に立派なビルを建てて損失が出ることなんてあるのかしら?
不動産事業に「絶対」はありません。しかもコロナ禍で港区のビル空室率は急上昇中です。だからこそ地権者側は、住友不動産から事前に書面による保証を得ることでリスク軽減を図る必要があるのです。これを「リスクヘッジ」と言いますが、事業投資の世界では当たり前のことです。これを怠ると将来地獄を見ることになるかも知れません。
実際に岡山県津山市の再開発では、事業者を信じた地権者全員が資産を失うと言う事件も起きました。再開発史に残る大事件です!朝日新聞も2021.11.19付夕刊でこの件を改めて報じています。
なんだか再開発は、よほど注意しないと「落とし穴」が多くて怖いな。
高齢者の私にはリスクを取る余裕などない。私は今のまま、この地で静かに余生を送りたい。ただそれだけだ。「再開発に応じない」と言う決断も一つの立派な選択肢ではないだろうか?
まとめ
再開発事業は竣工まで20年前後かかるとても息の長い事業ですが、事業者はあまりこのことを言いたがらないようです。何故なら、もし正直に語れば高齢者層の多くが「再開発に対して消極的」になるからだと考えられます。
このことに加え、再開発事業(第一種市街地再開発事業)では、地権者が事業リスクを負担すると言う現実があります。
損失が出た場合、その穴埋めを行なうのは再開発事業者ではなく、地権者です。最悪の場合、地権者は資産の全てを失うことさえあります。事業者はこの事実もあまり言いたがらないようです。
以上ような現実を勘案すれば、
再開発は高齢者にとりまさに地獄!
だと言っても決して過言ではないのではないでしょうか?
トピックス
(117)高齢者はつらいよでも詳しく報じた通り、再開発が決まれば
高齢者には多くの障害が待ち構えています。なんとか「命を削る思い」で竣工までたどり着けたとしても、新居での維持管理費が高額となれば
生活再建に支障をきたし、結局は地域から出て行くことになりかねません。
更には、
事業リスク負担の問題があります。損失が発生すれば地権者が共同でこれを負担することになり、最悪の場合には資産全部を失うこともあります。若い世代ならまだしも、高齢者に対して今から「事業リスクまで負担せよ」と言うのはあまりにも酷です。
残り少ない人生の平和で有効な過ごし方を考えれば
「再開発には応じない」と言う決断も
一つの立派な選択肢ではないでしょうか?