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(149)頓挫すれば組合加入者が借金返済?

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本トピックスは(148)もし再開発計画が頓挫したら?からの続きです。

頓挫した場合、使った資金の精算はどうなる?

当地の準備組合は住友不動産から数億円単位の資金を借り入れているようです。借入金ですから当然返済義務を伴います。
もし再開発が成就せず準備組合が解散するとなった場合、借入契約がある以上、一般には準備組合側に「借入金」の返済義務が生じますが、もし準備組合に借入金返済のための原資が無い場合、組合加入者個々人に多額の「金銭負担」が生じる恐れが出て来ますので注意が必要です。
従い、加入者は、どのような状況下で個々人への金銭負担が生じるのかを知るために、準備組合が貸し手(当地の場合、住友不動産)との間で交わした借入契約の中身を確認しておく必要があります。

しかし不思議なことに、当地の準備組合はその借入契約(=覚書)の中身を組合員へ公開しようとはしません。それどころか準備組合は「ご懸念には及びません」などと言う言葉を公然と発し、この問題に幕引きを図ろうとさえしています。何か公にすることのできない裏事情でもあるのでしょうか?
何れにしても、準備組合への加入に際しては自身で契約内容を確認しておくことが肝要です。これを怠ると、将来再開発計画が頓挫した場合、組合加入者に思わぬ金銭負担が発生することがあるからです。

加入しただけで、なぜ返済義務まで生じる?

準備組合は単なる任意団体に過ぎませんが、組織として「規約」が存在し「役員」まで任命されているため、金銭債務の問題に関しては「民法上の任意の組合」と見做される可能性があります。その場合、準備組合の活動から生じた金銭債務は、各組合員個々の債務と見做され、個々の組合員には無限の責任が生じることになります。
準備組合加入者たる者、この点は認識しておく必要があります。

仮に準備組合に3億円の返済金があり、組合員総数が150名だったとすれば、単純計算で1人当たりの返済額は200万円にも及びます!決して小さな額ではありません。
「自分は情報を得るために準備組合へ加入しただけだ」ではすまされない現実がそこにあります。

では、そのような事態を防ぐにはどうしたらよいのか?
加入者自身が「借入契約」の中身を精査し、個人としての返済義務が発生する具体的要件について予め知っておく必要があります。
加入者個人が金銭負担を強いられる問題であるだけに、先ずは「借入契約」の全文を準備組合から入手することが大前提となります。もしそこで不明瞭な点が見つかれば、弁護士など専門家のチェックを受けられることをお勧めします。

準備組合の「言葉巧みな説明」にご注意!

因みに、当地区の準備組合は加入者からの質問に対し、機関誌である「準備組合ニュース」を通じて以下の通り回答をしています。

●【組合員の質問】
万一、再開発計画がとん挫した場合、準備組合の役員や権利者に金銭的負担が生じることはあるのか。

●【準備組合の回答】
事業協力者(注:住友不動産)による保留床の買い取りに加え、貸付金についても、前記「事業協力に関する覚書」の中で、当準備組合の責により同覚書が解除された場合を除き、事業の推進が困難となった等の場合でも、同社は当準備組合の役員、構成員等個人への返還請求を行わない旨の取り決めもしております。したがって、当地区ではご質問のようなことは生じませんので、ご懸念には及びません。

準備組合の回答のどこが問題なのか?

準備組合は組合員への返還請求に関し、住友との覚書があり「そのようなことは生じませんので、ご懸念には及びません」と言い切りました。
そう言い乍らも、そこには例外規定があることを公にしました。
その例外とは「準備組合の責」と言う、いかようにも解釈可能な極めて漠然とした事由です。もし覚書内に「準備組合の責」とされる場合の具体的要件が書いてなければ、組合員には不利となります。

例えば、「地権者の信任が得られないので解散する」と言った
合理的な理由であっても、住友がそれは「準備組合の責」だと解釈すれば、組合員には金銭負担リスクが生じることになります。
準備組合は「ご懸念には及びません」と言い切りましたが、実際には、組合員は「返還請求リスク」を持ち続けることとなります。

そうでないことを確認するには「覚書」の全文を見る必要があります。条文によっては専門家の意見を仰ぐ必要も出て来ます。
しかし残念なことに準備組合は「覚書」を公開しようとしません。

また「覚書」のもう一方の当事者は住友不動産です。その住友不動産は資金の「貸し手」です。それにも関らず住友不動産はこの件に関しては沈黙したままです。何も発言をしません。
「ご懸念には及びません」と言っているのは準備組合だけである点にもご注目下さい。極めて不自然だと言わざるを得ません。

「覚書」を公開しないまま、地権者に対して「ご懸念には及びません」の一言で問題を片づけてしまおうとした準備組合は不誠実だと考えざるを得ません!

「覚書は見せないが、どうか準備組合を信じてほしい」

そう言わんばかりの準備組合を果たして信じたいと思うでしょうか?

まとめ

不動産取引には落とし穴が多い」と世間ではよく言われます。今回のような準備組合の「巧みな説明」には特段の注意が必要です。

さて、「返済請求」への不安を持たれた皆さま!
ここは一旦、準備組合から脱退されてみては如何でしょうか?
状況を冷静に判断し、疑念が払しょくされたら再度加入すれば良いだけの話です。
準備組合が発する「大丈夫です!」、「ご懸念には及びません」などと言う説明を信じた結果、後日「多額の返済金」を請求されたのではたまりません。

不動産取引には、時として思わぬ「仕掛け」や「落とし穴」が潜んでいることがありますのでご注意下さい。
この辺については、次トピックスで更に取り上げることとします。

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