本トピックスは(128)土地所有者は「再開発」で損をする!?でも取り上げましたが、最近、地元地権者団体が新たな視点からこの問題を地域内で報じましたので、再度「続編」として取り上げます。
さて土地所有者の皆さま!
再開発では再開発事業者がなかなか語ろうとしない現実があります。
それは、再開発(第一種市街地再開発事業)においては地権者の「土地」がビルの「床」へ変換される結果、資産価値が時間の経過と共に減少してしまう(=損をしてしまう)と言う現実です。
損をしてまで再開発に応じようと言う地権者はいない筈です!
地権者にとり、これほど不平等な再開発はありません!
この問題の解決なくして「再開発への同意」は考えられません。
地元地権者団体は住友不動産に対し、この問題に関し「公開質問」を行いました。しかし、
住友不動産は回答を拒絶しました!
真実を語れば誰も再開発に同意しなくなる。だから答えられない!
恐らくそんなところではないでしょうか?
住友不動産は、全国各地で同様の再開発計画を進めているだけに、安易に真実を語ってしまうと他地区へも情報が波及しかねない。
だから「回答拒絶」しか選択肢がなかったのだと推測しています。
まさに「地権者のことなどどうでも良い」と言う姿勢です。
残念ながら、これが住友再開発の実態なのです。
「土地から床へ」の何が問題なのか?
土地は所有していれば30年後も50年後も土地としての資産価値は残ります。これに対して「床」は減価償却資産です!
たとえ権利変換当日の「その瞬間は等価」であったとしても、交換後、床の価値は目減りして行き、30年もたてば価値は半減してしまいます。
地権者にとり、これほど不平等な再開発はありません!
ご注意ください!
もし皆さまが「1,000万円の土地を同額の高級車と交換してほしい」と言われたら喜んで応じますか?自動車は10年も経てば価値は半減してしまいます。再開発の「床」も基本的にはこれと同じ考えです。
権利変換で土地所有者はどれだけ損する?
資産評価額は前提条件や市況等で大きく変動しますが、再開発で「土地」が「床」へ変換される事実だけは変わりません。そこで土地所有者が再開発でどれだけ資産を失ってしまうのか?話をわかりやすくするために戸建木造住宅に25年居住する地権者のケースを単純化して説明します。
【前提条件】
– 従前資産額1億円 (内訳:土地1億円、老朽建物ほぼ0円)
– 従後資産額1億円 (内訳:土地3,000万円、新築建物7,000万円)
– 土地に減価償却はないので、評価額は将来にわたり不変と仮定
– 従後の建物は法定耐用年数47年、定額償却で計算
●従前の資産評価額の内訳:
土地1億円+建物(ほぼ0円)= 資産評価合計1億円
●従後の資産評価額の推移:
① 権利変換時:土地3,000万+建物7,000万= 合計1億円
⇩
② 10年後: 土地3,000万+建物5,460万= 合計8,460万円
⇩
③ 20年後: 土地3,000万+建物3,920万= 合計6,920万円
⇩
④ 30年後: 土地3,000万+建物2,380万= 合計5,380万円
ご覧の通り、単純計算では30年後に資産評価額はほぼ半分となります。
地元地権者団体の試算とは言え、戸建住宅に住み続けていればこれほどの減少額はあり得ないことです。
ここが再開発の「落とし穴」ですのでご注意ください。
これに対し業者側は「ここは利便性の高いエリアなので将来資産価値は高まりますよ」と促すのが常套句のようです。確かに利便性の高いエリアではそのようなことは起こり得ます。しかしそうなる保証はありません。
不動産に「絶対」はないからです。絶対なのは、「床」は年々減価償却して行くと言う事実だけです。
また仮に業者が言うように「資産価値が高まりそうなエリア」であれば、なおさら「土地」を手放さずに所有し続けていたほうが得だと言うことになります。何れにしても特段の保証が得られぬ限り、土地所有者にとり再開発に応じるメリットはありません。
法人の場合、問題は更に深刻!
同じ土地所有者でも「企業」や「個人事業主」の場合は問題が更に深刻かも知れません。土地を担保に事業資金の銀行借り入れがある場合、
もし土地が床に変換されるとなれば銀行融資枠が減り、経営に支障が出かねないからです。経営者であればなおさら簡単に土地は手放せません。
また、営業車を頻繁に利用する企業では、再開発ビルへ入居後は今までのような短時間での車の出し入れができなくなる不便さにも覚悟が必要です。また「車の出し入れ」だけでなく、倉庫からの商品在庫等の出し入れにも支障が出る可能性があることも考慮が必要です。
更に、当地区では宗教法人である「神社」も再開発の対象となっていますが、神社にとっても問題は深刻です。
神社は昔から地域住民が神への感謝や願いを伝えるために訪れるかけがえのない場所であり、神が宿るとされる、いわば「神域」です。
その神社も、再開発で土地所有権を手離すこととなれば、神社が未来永劫存続して行くこと自体に支障が出かねません。再開発は「街づくり」どころか、まさに「地域社会壊し」だと言えないでしょうか?
まとめ
再開発では「土地」が「床」と言う減価償却資産へ変換されることで、
土地所有者は確実に資産を減らします!
「等価」なのは権利変換される「その瞬間だけ」ですのでご注意下さい。
篤志家でない限り、損をしてまで再開発に応じる地権者はいません。
一方、当地で再開発を進めようとしている住友不動産はこの重要な事実について地権者側へ詳しく説明をしようとしません。
地元地権者団体が、昨年、この問題について住友不動産へ公開質問を行いましたが、
住友不動産は回答を拒絶しました!
もし再開発が「地権者の損にはならず、むしろ利益になる」と言うのであれば、地権者の公開質問に率直に答え、抽象的な形ではなく具体的にそれらを書面にて提示すると言うのが再開発事業者である住友不動産の役割であり責務ではないでしょうか?
残念ながら、住友不動産は説明責任を果たそうとしません。
住友不動産の言動を観察していると、都合の悪い話については「聞かれなければ話さない」、「聞かれても話さない」、「重い口を開いたとしても正直には話さない」。そして最後は「自分たちは事業協力者にすぎない」との理屈で、「信用」も「業歴」もなく、法人格すら有さない「準備組合」なる組織へ説明責任を転嫁させようとするのですから、極めて不誠実だと言わざるを得ません。
皆さま、これが住友再開発の実態です!
住友不動産が全国で計画する再開発事業(第一種市街地再開発事業)はどこも似たような手法で進められている筈ですので、各地の地権者の皆さまは是非とも当地区での事例を参考として頂きたいと思います。