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(169)「準備組合」支配の3要件

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本トピックスは(168) 3分でわかる「住友再開発」での注意点からの続きです。前トピックスでは住友不動産がなぜ執拗に地権者を再開発同意へ誘導しようとするのか、その背景と注意点について解説しましたが、本トピックスでは、今度は住友不動産が「地権者主体」の組織である筈の「準備組合」を、如何にして自社の支配下におさめて行くのか?その「仕組み」について地権者目線から探ってみます。

なぜ住友は「準備組合」を支配したがる?

そもそも再開発は「地権者が主体」となって進める事業ですから、住友不動産がいくら努力しても制度上単独でこれを進めることは出来ません。
そこで住友不動産は「地権者が主体」で運営される「準備組合」に着目し、その組織を自ら実効支配してしまおうと考えるのでしょう。そうすることで、その「準備組合」を隠れ蓑に、営利目的の自社の諸活動をあたかも「地権者主体」で進める活動であるかのように装うことができるからです。一旦、支配権を確立しさえすれば、再開発業者にとり「準備組合」はとても使い勝手の良い組織となります。

支配の3要件はこれ!

再開発事業者が準備組合を支配するために使う仕掛けは

① 素人役員+②丸投げ+③融資、の3点セット

であることが、各地の地権者団体との情報共有を通じて見えてきました。

① 素人役員
準備組合は任意団体ですから、作ろうと思えば誰でも簡単に出来てしまいます。そこで住友不動産は「自社に協力的な住民」ばかりを集め、その彼らを組合役員に祭り上げることで、いつの間にか準備組合を設立してしまいます。では協力的な住民なら誰でも良いのかと言うと、そうではありません。再開発業者側は敢えて「投融資事業経験に乏しく」、且つ、「事業全体の統括能力に欠ける」、いわゆる「素人」を選ぶ傾向があるように見受けられます。本来必要とされる人材とは逆の人材を選定するのです。理由は簡単です。「知識」と「経験」、そして「指導力」のある人材が役員に就任すれば、再開発事業者は準備組合を意のまま操ることが難しくなるだけでなく、場合によっては反旗を翻される懸念さえあるからです。
従い、再開発業者側が求めるのは、その心配のない従順な「イエス・マン」と言うことになります。
実際に各地の準備組合の役員構成を見ると、地元でも良く知られた人望の厚い人物が任命されるケースが多く見受けられ、外見上は適切な人材配置であるかのように見えます。しかし、再開発を進めるにあたり、「人望」と「事業の統括能力」とはまったく別ものである点に注意が必要です。後者が欠如した準備組合では、もはや誰も再開発事業者を指揮・監督できなくなると言う点で致命的です。

② 業務の丸投げ
再開発は、私たち市民の税金も投入される公共性の極めて高い事業です。また総事業費も数百億円規模、或いはそれ以上にも及ぶ大事業です。そのような大事業を検討し推進するために設立される準備組合の役員に、「知識」も「経験」も「統括能力」もない人間が就任すればどうなるかはもはや言うまでもありません。
本人たちも、準備組合の理事長や理事その他役員に就任してはみたものの、「これから先、何をすべきか良くわからない。困った!」と言うことになります。そのような輩が行き着く先は事業協力者を名乗る再開発業者への「業務の丸投げ」と言うことになります。まさに再開発業者の思惑通りの結末がそこに待ち受けています。

③ 準備組合への融資
最後は「金」の力による準備組合の支配です。
準備組合は「信用」も「実績」も「責任能力」もない単なる任意団体にすぎませんから金融機関から原則として融資を受けることは出来ません。しかしその一方で、再開発を検討するには多額の費用がかかり、しかもそれは億単位の額となることもあります。多くの準備組合では、活動資金を再開発事業者から「融資」の形で調達すると言った現実があるようです。
「地権者が主体」で運営されるべき準備組合が、その地権者とは利益相反関係(注1)にある再開発事業者から活動資金の「融資」を受けるとなれば、結果がどうなるかは言わずもがなです。
再開発業者側は「影響はない」と否定しにかかるでしょうが、資金の提供側が強い発言力を持つことはビジネスの世界では常識です。
再開発業者の準備組合に対するこのような「融資」行為を、いま海外で問題となっている「一帯一路」政策による『債務の罠』との類似性に着目し、その危険性を指摘する意見もあるほどです。
(詳細は(150)借金返済!実は「債務の罠」だった?をご参照下さい)

(注1)「利益相反」とは、例えば二者間の関係において、ある行為が一方の利益になると同時に、他方への不利益になることを言います。

まとめ

本トピックスでは、再開発事業者が本来「地権者主体」の組織であるべき「準備組合」を、如何にして自社の実効支配下におさめて行くのか?
その「仕組み」について地権者目線から探ってみました。
もちろん、各地には健全な形で運営されている「準備組合」も多々ある筈ですので、全ての「準備組合」がそうだとは言えません。
しかし私たちが各地の地権者団体との情報共有で分かったことは、当地区の「準備組合」はもちろんのこと、他地区でも多くの「準備組合」が再開発事業者に実効支配されているのではと言う強い懸念です。

そして、そこには再開発業者が密かに仕掛ける、
① 素人役員の任命、
② 再開発事業者への丸投げ、(注2)
③ 金の力による支配、
の3つのメカニズムが存在するのではと言う点です。

(注2) 準備組合の役員たちも、安易な気持ちで職務を続ければ、将来責任を追及される可能性がありますので注意が必要です。準備組合の要職にある者が、「職務怠慢」、「業者任せ」、「不作為」と言った事由で将来組合員(=地権者)から訴訟を受けた場合には、相当高額な賠償責任を負う危険性があることが過去の裁判所の判決文で示されているからです。(詳しくは、(54)理事が準備組合を訴えた!をご参照下さい)

さて、皆さまの地区の準備組合はどのような状況でしょうか?
一度、準備組合内部に「上記3要件」が存在するのか否かを検証されてみては如何でしょうか?

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