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(213)「保留床」激安総取りのしくみ(図解)

投稿日:2024年3月27日

これだけ違う!「保留床」取得の考え方

各地区との情報共有を通じて再開発事業者側の考えが見えて来ました。

本来「保留床」はこのようにして決まる!

再開発(第一種市街地再開発事業)は、再開発施設の一部(=保留床)を再開発事業者(=参加組合員)へ売却処分することで事業費の不足分を賄う仕組みです。(そして地権者側は保留床を売却した残りを権利床として無償で取得し、従前評価額に応じて地権者間で配分する仕組みです)
ここで地権者が注意すべきは、再開発事業者が保留床処分金(=事業費不足額)を拠出したからと言って、従前評価に基づく権利床以外の床面積(保留床)がすべて業者側のものになるわけではないと言う点です。業者側の得る保留床面積は近隣地区の相場に準拠した「保留床単価」で別途計算される必要があります。その計算式は次の通り。

保留床面積=保留床売却額÷保留床単価

保留床面積の計算に際しては業者側が提示する「保留床単価」が近隣の相場から乖離した低い単価となってはいないかを地権者側は入念にチェックする必要があります。

「激安の保留床単価で大儲け!」のしくみ

【解説】

例えば、保留床処分金が1,000億円で、近隣相場に基づく保留床単価が1億円/坪だとします。その場合、業者側が獲得する保留床は1,000坪となります。しかし、多くの業者はここで「相場の半値」と言った保留床単価を提示してくることが各地区との情報交換を通じてわかって来ました。
もし業者が提示する保留床単価が相場の半値の5,000万円/坪だとしたらどうなるでしょうか?彼らの得る保留床は2倍の2,000坪へ拡大します。これが再開発事業者の「保留床の激安総取り」の仕組みです。(注1)

地権者側がこの仕組みに気付かぬか、或いは知っていても黙認すれば、保留床面積が増えた分だけ地権者の得る権利床面積は減る(=開発利益が享受できなくなる)結果となります。
一方で、再開発事業者側はどうでしょうか?
世の中には「濡れ手に粟」と言う言葉がありますが、本来であれば1.000億円を支払い1,000坪の床を手に入れる筈であったところ、業者側はその2倍の2,000坪を手に入れることが可能となります。
仮に再開発ビルの竣工後に、この無償で手に入れた「1,000坪の床」を市場価格(設例では「1億円/坪」)で売却するとしたらどうなるでしょうか?
業者側には1,000億円もの収益が転がり込む計算となります。
まさに「あぶく銭」です。これだけではありません。まだ話は続きます。
設例では再開発事業者(=参加組合員)が払った保留床処分金は1,000億円です。これに対し、獲得した2,000坪の保留床の半分を売却して1,000億円もの収益(=利益)が出せる訳ですから、業者側の収支は、「保留床処分金1,000億円-保留床売却益1,000億円=ゼロ」となり、

実質負担無しで残りの1,000坪の保留床を手に入れた計算

となります。まさにこれが「激安の保留床単価で大儲け」する錬金術だと私たちが考える所以です。
このロジックは業者が地権者へは決して「語ろうとはしない」部分であり、同時に開発利益を地権者へ渡さないための手法でもありますので、地権者の皆さまはご注意ください!。

(注1)再開発事業者は営利目的で再開発を進める民間業者ですから、彼らにも相応の利益を得る権利があります。従い、彼らとは現実には近隣相場ではなく、その卸値で「保留床単価」を取り決めることになります。
例えばタワマンの場合、分譲業者の粗利は一般に20%前後と言われていますので、もし近隣の分譲相場が1,000万円/坪であれば、業者の「保留床単価」は、その卸値である「800万円前後」が適正単価となります。
以上を基本に業者側と「保留床単価」の交渉を進めて行くことになります。

再開発事業者は「利益相反相手」である!

地権者は決してこの事実を忘れてはなりません。
ご存じの通り、再開発施設の床は「保留床」と「権利床」とで構成されます。総床面積は一定ですから、「保留床」が増えれば「権利床」は減り、逆に「保留床」が減れば「権利床」は増える関係にあります。
このことはまさに、再開発事業者(=参加組合員)と地権者とは互いに「利益相反相手」であることを意味しています。
保留床は再開発事業者側にとり、膨大な利益を生む「宝の山」であるだけに、再開発の仕組みと業者側の狙いを把握した上で、彼らと正論を以て交渉を進めないと、地権者は開発利益をすべて再開発業者側に持って行かれる懸念がありますのでご注意ください。

権利床面積を決める鍵は「保留床単価」にあり!

権利床面積を決める際に重要なのは、実は「保留床単価」であることが図解からもおわかり頂けたかと思います。
ではなぜ再開発事業者はこの事実を地権者へ伝えようとしないのか?
それは彼らが恐れるのは、地権者が知識と知見を身に付け、

「保留床単価」こそが権利床面積の決定に際して重要

だと言う事実に気付くことにあるからだと考えられます。
このため、彼らは地権者の関心が「保留床単価」に向かわぬよう、権利床があたかも「従前評価」のみで決まるかの説明を繰り返すことで、地権者の関心を「保留床単価」の値決めからそらそうとするのだと推測されます。
地権者はこの事実からも目を逸らすべきではありません。

まとめ

再開発(第一種市街地再開発事業)は、地権者が主体となり、自ら事業リスクを取りながら進めて行く事業なのに、なぜ事業が成功しても地権者は開発利益を享受することができないのか?
その理由は、住友不動産を含む一部の再開発業者が「地権者は等価交換して終わり」だと地権者に信じ込ませることで、開発利益(=保留床)を自社で独占してしまおうと画策するからだと考えられます。保留床は彼らにとり膨大な利益を生み出す「宝の山」であるだけに、

再開発事業者の主目的は
保留床を激安単価で独占することにある

と考えてもおおかた間違いではありません。
しかし、保留床が増えれば、その分だけ権利床は減ってしまいます。
再開発事業者は地権者の利益相反相手であるだけに、彼らの「保留床・安値総取り」の仕組みを把握した上で、適正な「保留床単価」で床が購入されるよう再開発事業者側へ強く求めて行くことが望まれます。(注2)

(注2)本トピックスで示した「図解」は地権者目線で見た私たちの分析結果です。既に私たちは住友不動産を含む複数の再開発事業者による「激安保留床単価」の実態を把握していますが、すべての再開発事業者について確認ができたわけではありません。
従い、各地の地権者の皆さまは、是非とも地区の再開発事業者が提示する「保留床単価」が妥当なのかを独自に検証されては如何でしょうか?

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