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(217)住友の錬金術:1,300億円の事業で含み益が1,300億円?

投稿日:2024年4月22日


「含み益」とは、売却すれば得ることができる未確定の利益を言います。

総事業費1,300億円の再開発で、なんと
住友不動産側に1,300億円もの「含み益」が?

再開発は市民の税金も投入される公共性の極めて高い事業ですから、まさか再開発業者がこれほど大儲けするとは誰も思わない筈です。
また再開発は地権者が「事業主体」となり「事業リスク」までとりながら進める事業ですから、まさか住友不動産がその地権者を差し置いて自分たちだけ大儲けするなどとは夢にも思わない筈です。
しかし、残念ながら私たちが事例として取り上げた現場での試算では、住友不動産総事業費1,279億円の再開発ビジネスで、竣工時に1,364億円もの「含み益」を得るとの結果が出ました。(注)

業者側に1,364億円もの「含み益」が出る一方で
事業リスクを取らされる地権者が「等価交換して終わり」

だとしたら、まさにこれは地権者を踏み台にした「ボロ儲け商法」です。
しかし本当にそうなのか? 本トピックスでは試算結果を公開すると共に、試算に用いた各数字の引用元や計算根拠をオープンにしますので、是非、皆さまにおかれましても検証して頂きたいと思います。

(注)ここでは再開発を主導する住友不動産が参加組合員として単独で「保留床処分金」を全額負担したケースを想定しています。事例として取り上げた現場では、住友の他に2社が関与しています。しかし、何社いようと「保留床処分金」の総額は不変ですし「含み益」(1,364億円)にも変わりはありません。

現場は「南池袋二丁目C地区市街地再開発事業」

ここは住友不動産が主体となり、他2社と共にJR池袋駅(東京都豊島区)近くの約1.7ヘクタールの土地に総事業費1,279億円を投じてタワマン2棟を建設する事業で2022年に工事着工。竣工は2027年の予定。

集めた事業計画数字がこれ

【数字の引用元や計算式等】
(従前)総専有面積:関係資料からは確認できず
(従前)資産総額:組合配布の説明会資料(権利変換モデル案)から数字を引用
(従後)総専有面積:組合「事業計画書」に記載の「容積対象床面積」を引用
           実際の専有面積は若干少なくなります(ゴミ置き場等の共有部分が含まれるため)
施設の総価値:関係資料からは確認できず
保留床比率:[⑥保留床総面積÷③総専有面積×100]
保留床面積:[③総専有面積-⑩権利床面積]にて自動計算
保留床単価:[⑭保留床処分金÷⑥保留床面積]にて自動計算
保留床購入金:⑭保留床処分金と同額
権利床比率:[⑩権利床総面積÷③総専有面積×100]
権利床総面積:[②従前資産総額÷⑪権利床単価]
権利床単価:説明会資料での加重平均値は105万円/㎡。一方、住民団体発行の「かわら版」では100万円/㎡(=330万円/坪)となっていたため低い方を採用
権利床還元率:①従前総専有面積が不明のため計算できず
総事業費:組合「事業計画書」に記載の数字を引用
保留床処分金:組合「事業計画書」に記載の数字を引用
増床負担金:組合「事業計画書」に記載が無いため「負担金ゼロ」と判断
補助金:組合「事業計画書」に記載の数字を引用
支出計:組合「事業計画書」に記載の数字を引用
収入計:組合「事業計画書」に記載の数字を引用

【備考】 再開発組合の「事業計画書」は豊島区HPに掲載されたものを引用。
また事業の全体像把握に際しては、地権者を含む地域住民からの情報提供も参考とさせて頂きました。

大儲けのカラクリは「激安保留床単価」にあり!

過去のトピックス(213)及び(214)でも詳しく説明していますが、大儲けのカラクリは業者が巧みに設定する激安保留床単価にあります。
激安単価は保留床面積を大幅に増やすので住友不動産は得をします。一方で、保留床面積が増えた分だけ権利床面積は減るので地権者は損をします。

今回算出された住友不動産の保留床単価306万円/坪は、以下の図が示す通り、近隣タワマンの分譲相場の半値以下と言う激安単価です。仮に適正分譲相場を750万円/坪だと見れば、一般的な分譲業者の粗利は20%前後と言われていますので、住友不動産が本来設定すべき適正保留床単価は750万×80%=600万円/坪となるべきです。
つまり、住友は保留床単価を306万円の激安水準に設定したことで、労せずして坪当たり294万円もの差益を生み出した計算となります。

600万円-306万円=294万円/坪

では次に、住友不動産が竣工後に保留床のすべてを市場の分譲相場である「坪750万円」で売却したらいったいどれだけの利益が出るのでしょうか?計算式は次の通りです。

つまり住友不動産は、自らが負担した保留床処分金を全額回収した上、更に1,364億円もの利益を得る計算となります。売却しない場合にはそのまま1,364億円が「含み益」となります。これが彼らの錬金術です。

尚、「激安保留床単価」の仕組みや弊害等の詳細については、以下の
トピックスをご参照ください:
(213)「保留床」激安総取りのしくみ(図解)
(214)激安「保留床単価」で地権者はこれだけ損する!

激安保留床単価で地権者は確実に損する!

上述の通り、「激安保留床単価」は住友不動産へ膨大な利益をもたらす一方で、地権者へは権利床面積の減少と言う形で損をもたらします。
下図はその影響をイメージしたものです。

埼玉大学名誉教授の岩見良太郎氏が過去に大都市圏で保留床を伴う再開発事業について行った調査では、再開発後の資産の取り分比率は、どの再開発現場も概ね「保留床80%:権利床20%」の比率だったそうです。
今回取り上げた「南池袋二丁目C地区再開発事業」もその例にもれず、「保留床84%:権利床16%」の試算結果となりました。
再開発ビルで創出される膨大な床面積(=開発利益)の大半は住友不動産側が独占し、地権者は開発利益の恩恵にあずかれない構図がここでも明らかになった感があります。

まとめ

総事業費1,270億円の不動産取引において、業者が事業費をも上回る1,364億円と言う「含み益」を生み出すビジネスなど滅多にはありません。
もしこれが「地権者も含めたWinWinのビジネス」であったなら、それこそ「素晴らしい錬金術である!」と住友不動産を絶賛したくもなります。
しかし、良く考えて見ればこれはマジックでも何でもなく、単に知識と情報力に劣る一般の地権者の犠牲の上に実現できた「含み益」にすぎないと言えるのではないでしょうか?
地権者が本来得るべき権利床を削ってでも自社に膨大な「含み益」をもたらそうとする。

これが住友不動産の正体だったのか?

少なくとも地権者にはそのように見えてしまった感があります。

そもそも再開発事業を律する法律は、市民の税金まで投入される公益性の高い事業であることを前提としているため、民間の再開発業者に膨大な事業利益が上がる前提では作られていません。これに加え、もし業者の膨大な利益が「地権者は等価交換して終わり」なる前提に成り立っているのだとすれば、住友再開発は極めて不当なビジネスだと見做さざるを得ません。

地権者が損をしないためには地権者側も再開発の基礎知識を身に付けることが何よりも大切です。その上で業者側に不明瞭な動きがあれば遠慮なく質問し、必ず彼らから書面で回答を得た上でその内容を(できれば外部の専門家も入れて)精査するといった地道が作業が不可欠です。
地権者の「無知」、「無関心」、「他人まかせ」は業者を利するだけですのでご注意ください。

既に南池袋では工事が始まっているため、もはや後戻りは出来ません。
しかし、他地区の地権者の皆さまにおかれましては、是非とも南池袋の事例を「他山の石」として頂き、地元で進行する事業計画を一度精査されてみては如何でしょうか?
自らの資産を守るためですから、何ごとも「備えあれば憂いなし」です!

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