本トピックスは(228)港区でも再開発業者の「ぼろ儲け」が発覚か?の続きです。
現場は東京都港区の「芝3丁目西地区」。
ここは都心一等地の住宅街で、地権者総数約150名。
一方、再開発事業者は三菱地所(株)、三菱地所レジデンス(株)、及び三菱系(株)丸の内よろずの3社。
三菱側はこの地にタワマン建設を計画中。現在はまだ準備組合段階で、都市計画決定に向けての「同意書」集めは始まっていません。(注1)
その様な状況下、地元で明るみになった
事業費1,500億円の再開発で
三菱側の「含み益」が1,850億円?
本当にそうなるのか?
実際に検証してみました!
三菱側が過去に提示した数字を組み合わせるとこうなる
三菱の資金計画
近隣地区のタワマン分譲相場
三菱側が自ら「近隣のタワマン」だとして参照した白金ザ・スカイ(45階建て、総戸数1,247戸)について2024年8月時点での分譲相場は以下の通りとなっています。
三菱の「ぼろ儲け」のカラクリはこれ!
上記からもわかる通り、3年間と言うタイムラグはあるものの、三菱側が提示した保留床単価440万円/坪が如何に近隣の分譲相場から乖離した激安単価であるかがわかります。
仮に三菱側が取得した保留床のすべてを竣工時に売却し、その際の分譲単価が保守的に見て「1,000万円/坪」だとした場合、やはり
三菱側の売却益は1,850億円
との試算結果となりました。
売却しない場合には、同額が彼らの「含み益」となります。
実際には分譲単価は1,000万円/坪を上回ることが想定されますので、その場合には三菱側の利益は更に増える計算となります。
彼らが「大儲け」するプロセスは以下の通り説明が可能です。
保留床単価を440万円/坪に設定することで、
総面積33,030坪の保留床を獲得。
竣工後に獲得した保留床のすべてを
分譲相場で売却することで1,850億以上の利益を得る
莫大な利益の源泉が激安保留床単価にあることは言うまでもありません。
ですから、「保留床単価」が低いほど保留床面積は増えて行き、再開発業者は得をします。その一方で、保留床面積が増えた分だけ「権利床面積」は減りますので地権者は損をします。
保留床は再開発業者の収益源ですから、彼らはあらゆる手段を駆使して「保留床単価」を極力低く設定しようとします。
その結果が、相場を度外視した激安保留床単価だと考えられます。
再開発業者側が恐れるのは、この実態を地権者に気付かれることです。
彼らが地権者を集めた説明会において、さかんに「従前評価」や「権利床単価」と言った話ばかりを持ち出すのは、まさに地権者の関心が保留床へ向かわぬように仕向けるためだと考えられます。
地権者の権利床を決める要因は、
実は「保留床単価」なのです!
この点は重要ですので、地権者の皆さまは是非ともお知りおきください。
まとめ
今回、試算に使用した概算数字は三菱が3年前に提示した数字です。一方、昨今では事業費も高騰しており、新たに事業採算を計算し直す必要があります。このため、地元団体は三菱に対し「最新の概算数字を出してほしい」と要求しましたが、「今は出せない」として三菱側は提示を拒否したそうです。(注2)
地権者側に手の内を読まれてしまった以上、最新の概算数字を出したくても出せないのが彼らの本音なのかも知れません。
しかし、再開発は補助金(芝三丁目では約40億円)も投入される公共性の極めて高い事業ですから、デベロッパーは事業計画の基本となる各種概算数字を地権者へ開示する責任があります。
地権者に対し説明責任を果たさず、「都合の悪い数字は出さない」と言った秘密主義に徹する姿勢では再開発を進めることは困難です。
今回の事例は他地区でも起こり得ることですので、各地の地権者の皆さま、とりわけ三菱及び住友再開発関連の地権者の皆さまは、是非とも、芝三丁目の事例を参考に、同様の数式を用いて独自に業者の採算を計算されてみては如何でしょうか?
(215)「事業費高騰」で地権者はこれだけ損する!をご参照ください。