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(232)人気ドラマ「地面師たち」から学ぶもの

投稿日:2024年9月12日

皆さまは「積水ハウス地面師詐欺事件」をご記憶でしょうか?(注1)

(注1)2017年に東京都品川区五反田にある約600坪の旅館敷地の地上げをめぐり、大手不動産業者「積水ハウス」が55億円もの大金を地面師たちに騙し取られた事件。

この事件を題材にしたドラマ「地面師たち」がNetflixから配信され、7月下旬の配信開始以来5週連続で視聴率1位と大人気です。実はこのドラマはストーリーの面白さに加え、不動産業界の内部実情が随所に描かれており、再開発を考える地権者たちにとり参考となる情報が満載です。

ドラマの舞台は港区・高輪!

なんと、このドラマの舞台は私たちが住む東京都港区・高輪エリアです。ドラマ内で地面師たちが狙うのは、ある仏教寺が所有する3,500坪の広大な敷地と言う設定ですが、ロケに使用された寺は映像から高輪にある「X寺」と思われ、その寺は私たちが問題視する住友再開発(泉岳寺周辺地区市街地再開発事業)の計画地から僅か300mの至近距離に位置しています。このため泉岳寺周辺地区で撮影された映像が随所に登場し、私たち地元住民にとっては、あたかも土地をめぐる詐欺事件が身の回りで起こっているかのような臨場感があります。

不動産業者の行動パターンを知るヒントが満載!

このドラマは、地権者ではなく大手不動産業者が地上げの詐欺被害に遭うと言う点で一般の再開発事業とは設定が異なります。しかし乍ら、このドラマは不動産業界内の「不都合な真実」をリアルに描写しており、大手不動産の幹部たちの「地上げへの執着心」「出世競争」、更には社内の「決裁制度」「コンプライアンス体制」、等々、ドラマながら再開発業者の強引な営業活動を理解するためのヒントが満載です!

「地面師たち」と不動産業者との類似点?

大手不動産業者を犯罪集団と比較するのはいささか気が引けますが、両者にはどうしても類似点がある気がしてなりません。

地面師たちの特徴 指示役のもとで、情報屋交渉役不動産ブローカー弁護士書類偽造屋なりすまし役、など様々な役割を担う詐欺師たちが集まり、巨額の土地売却代金を騙し取るためのチームを編成して活動する点にあります。

再開発業者の特徴 は、多くの現場で「事業協力者」に扮した再開発業者が実質的な指示役として準備組合内へ入り込み、地元理事たちを従え、更に自社の息のかかったコンサル不動産鑑定士弁護士、等を雇い、巨額の開発利益を自社で独占するためのチームを編成して活動する点にあります。(注2)

(注2)あくまでも住友不動産をはじめとする一部の業者に関しての特徴を記したものであり、全ての再開発業者がそうであるかは不明です。各地の地権者の皆さまは、是非ともそのような実態が無いか個別にご確認ください。

地面師たちは、最後は売却代金を買主から騙し取ることに専念します。
再開発業者は、最後は開発利益を(地権者には与えず)自社で独占することに専念します。
「似て非なるもの」とは言い切れない何かがそこにあります。

制作者側は「住友再開発問題」を認識していた?

五反田の地面師詐欺事件は2017年に発生し、「地面師たち」の原作は2019年のリリースですから、ドラマの制作者はその頃から高輪における「住友再開発問題」の存在を認識していたと考えられ、実際にその形跡をドラマ内で感じとることが出来ます。
偶然かも知れませんが地面師たちが狙った3,500坪の土地は高輪における住友再開発問題のエリアとほぼ同面積です。またセリフの中で東急、森ビル、三井と言ったライバル企業名が複数回登場するのに、なぜか住友不動産名は登場しません。(1度だけどこかで出たか?)。
ドラマでは開発計画を「高輪プロジェクト」と呼んでいますが、詐欺の現場が問題の住友不動産の再開発プロジェクトから僅か300メートルしか離れていないことから、「高輪プロジェクト」が「住友不動産の再開発問題」を想起させ、混乱が起きることを避けたかったのかも知れません。

「地面師たち」から学ぶもの

「土地は不動産だから盗まれる心配がない」との考えが如何に危険であるかについて、このドラマは警鐘を鳴らしていますが、まさにこれは再開発取引にも当てはまる教訓です。
このドラマは再開発問題に悩む地権者にとり、純粋に娯楽として楽しむ以上の何かを与えてくれます。前述したように、再開発区域内に住む地権者が「業者側の行動様式」や「不動産取引の注意点」を知る上で参考となる情報が随所に含まれているからです。

このドラマは、
*人は土地を欲しがる、
*人は土地を奪い合う、
*土地が人を狂わせる、
と言った「人間が持つ欲望」を鋭く描写しており、その実態を知れば、安易な気持ちで再開発取引に応じることが如何に危険な行為であるかが理解できます。

まとめ

「たかがドラマ、されどドラマ」!
このドラマには再開発で悩む地権者たちに参考となる情報が満載です!
地権者としてはドラマが描く不動産業者側の「金儲け」と「出世」の犠牲になることだけは避けなければなりません。
その意味で、このドラマは、
不動産取引には「落とし穴」が多いこと、
取引には慎重姿勢が必要であること、
「無知」、「無関心」、「他人任せ」では騙されてしまうこと、
を私たちに示唆してくれています。

またドラマでは「あと一歩と言う時に足を引っ張るのはいつも味方だ!」と言うセリフが登場しますが、まさにこれは「名言」であり再開発に於いて地権者が注意すべき点を言い当てています。地権者を分断させるのは再開発業者の常套手段だからです。(注3)

(注3)再開発業者が恐れるのは、地権者が知識と知恵を身に付け一丸となって業者側へ要求を突き付けてくることです。
このため業者側は常に地権者を分断させ、互いに反目し合うように仕向けようとすることが各地で確認されています。

さて「地面師たち」はNetflix(ネット上の有料の動画配信サービス)で視聴できます。(注4)

(注4)尚、このドラマには暴力や殺人シーン等が含まれており、「推奨年齢16歳+」となっていますのでご注意ください。

また「集英社」から文庫本(税込み814円)も販売されていますので、ご興味ある方は是非どうぞ。

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