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(251)三菱地所に見る「激安保留床で大儲け」の仕掛け

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住友不動産や三菱地所など一部の再開発業者は、地権者に重要事項を知らせぬまま地権者を踏み台に「莫大な額の開発利益を自社で独占」しようとする実態が各地の地権者からの報告から見えて来ました。
そしてその「大儲け」の源泉は、彼らが巧みに仕組む激安保留床単価にあることもわかって来ました。

本トピックスでは、三菱地所が計画する「芝三丁目西地区再開発」を事例として取り上げ、彼らがどれほど「大儲け」するのかを、三菱地所が実際に地権者へ提示した数字をもとに検証してみます。(注1)

(注1) この地区ではタワマン建設が計画されており、デベロッパーは三菱地所三菱地所レジデンス丸の内よろずの三菱系3社です。
本トピックスでは便宜上、これら3社を合わせて「三菱地所」又は「三菱」と呼ぶことにします。
Contents
1. 「激安保留床単価」 どうやって見分ける?
2. 三菱地所が地権者へ提示した資料がこれ!
3.一方、こちらが近隣地区の実勢相場だ!
4.「激安保留床単価」で三菱地所はどれだけ儲かる?
5.三菱はどれだけ儲けるつもり?
6.まとめ

「激安保留床単価」 どうやって見分ける?

見分けるのは難しいことではありません。
近隣地区の実勢相場(坪単価)と再開発業者側が設定する「保留床単価」とを比較し、単価が妥当な水準にあるかどうかを見極めるだけです。
簡単な作業なだけに地権者がこれを怠ると後日後悔することになります。なぜなら、三菱地所など一部の業者が主導する再開発事業では、近隣相場の半値以下と言った「激安保留床単価」が平然と提案されるケースが散見されるからです。
激安保留床単価は再開発業者の「大儲け」の源泉であるだけに、地権者は「保留床単価」が妥当であるか否かを常に検証する必要があります。
再開発では保留床単価が安いほど、再開発業者(=参加組合員)の得る保留床面積は増えますが、そのぶん権利床面積は減る仕組みだからです。従い、保留床単価が世間相場から大きく乖離した激安保留床単価だと、地権者は期待利益を逸失(=大損)することになります。(注1)

(注1)そのロジックに関しては以下のトピックスで詳しく解説していますのでご参照ください。
(178)「保留床総取り」のカラクリと業者の手口(前編)
(179)「保留床総取り」のカラクリと業者の手口(後編)

三菱地所が地権者へ提示した資料がこれ!

以下は三菱地所が2021年及び2024年の二度にわたり地権者側へ配布した資料です。

 

一方、こちらが近隣地区の実勢相場だ!(注2)

(2025.4.2現在)

(注2)今回の事例はタワマン建設なので、近隣の分譲相場は比較的容易に得ることができます。一方、オフィスビルの場合にはタワマンのような分譲相場がないため、他の指標(例えば「不動産REITの売買データ」など)を参考にしたり、或いは、「年間賃料/坪÷利回り」から算出した数字を標準保留床単価と見做すなどの工夫が必要となります。

「激安保留床単価」で三菱地所はどれだけ儲かる?

三菱の資料には「保留床単価は約440万円/坪」と明記されています。
一方、近隣タワマンの分譲相場を調べてみたところ、
「白金ザ・スカイ」で1,215~1,652万円/坪
「麻布台レジデンスB」で2,862~3,238万円/坪
で販売されています。何れも廉価な低層階における販売価格です。
(高層階における坪単価は低層階のそれよりも高くなります)

三菱が提示した「保留床単価」は1年前(2024年)のものではありますが、それにしても彼らの保留床単価は世間相場とはあまりにもかけ離れている点にご注目ください。(注3)

これが
激安保留床単価
と言われるものです。

(注3)ここ数年、建設物価が高騰しているにも関らず、三菱地所は2021年に続き3年後の2024年に提出した資料でも「保留床単価440万円/坪」を据え置いた点にもご注目ください。同じ数字を何度も繰り返すことで激安保留床単価を既成事実化させてしまおうとする彼らの目論見が透けて見えます。地権者はこの点にも注意が必要です!

三菱はどれだけ儲けるつもり?

それでは次に、三菱が提示した「激安保留床単価」がそのまま適用され、タワマン竣工と同時に彼らが市場価格で売却したと仮定した場合の
三菱地所の粗利を単純計算(=試算)してみます。

【Case①】 近隣の最安値1,215万円/坪で売却したと想定した場合

        *売却せず保有した場合には、同額が三菱の「含み益」となります。

【Case②】 近隣の最高値3,238万円/坪で売却したと想定した場合

        *売却せず保有した場合には、同額が三菱の「含み益」となります。

つまり、

三菱地所には
総事業費1,500億円をはるかに超える

2,560億円~ 9,242億円

もの粗利が転がり込む

試算となります。(注4)
その一方で「地権者は等価交換して終わり」だとしたら、あまりにも理不尽すぎるのではないでしょうか?

(注4)昨年、地元地権者団体は「三菱は1,850億円もの含み益を得る」との試算結果を公表しましたが、今回行った試算はその額をはるかに超える額となりました。尚、地元団体が行った試算の詳細についてはトピックス(228)港区でも再開発業者の「ぼろ儲け」が発覚か!をご参照ください。

まとめ

資本主義の世の中ですから、民間の営利企業が自社利益の極大化を目指すこと自体に何ら問題はありません。
しかし再開発と言う、市民の税金まで投入される極めて公共性の高い事業において、再開発業者のみが莫大な利益を上げ、しかもそれが「不公正な形」で、且つ「地権者の犠牲」のもとに行われるとなれば問題ではないでしょうか?

三菱地所の芝三丁目西地区における最大の問題!

それは、事業主体である地権者たちに重要情報を開示せず、秘密主義を貫く点にあるようです。地元地権者団体によれば、再三の要望にも関らず、三菱は事業計画の概算数字すら開示しようとしないのだそうです。
事業の全体像すら知らされぬまま「再開発に同意しろ」と言われてもそれは無理と言うものです。
「開発利益の独占」が疑われている今、三菱地所はその疑念を払しょくするためにも、地権者たちと真摯に向き合い、基本計画数字の提示とともに丁寧な説明を行う責任があります。
再開発への同意集めはそれからです!
三菱地所はこの順番を取り違えるべきではありません。
世間は見ています!

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