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(253)三菱地所の次の一手は「増床制限」か?

投稿日:2025年5月9日

本トピックスは(251)三菱地所に見る「激安保留床で大儲け」の仕掛け及び(252)三菱地所に見る「地権者攻略」の手口からの続きです。
今回は三菱地所がこれから「芝三丁目西地区再開発」に於いて、確実に行うであろう地権者攻略の「次の一手」を予測してみました。
同地区ではまだ都市計画決定前の準備組合段階にすぎません。しかし三菱地所が「激安保留床単価」で保留床(=開発利益)を独占しようとする狙いが見えてしまった以上、将来「都市計画決定」が実行された場合、彼らが次に地権者に対して仕掛ける方策は「増床制限」であることまで見えてしまいました!本トピックスではこの点を詳しく解説して行きます。

 

Contents
1. 前トピックスで見えた「地権者攻略の手口」
2. 次の一手は「増床制限」
3.「増床制限」とは何か?
4.増床制限のための様々な口実
5.増床制限は業者の単なる希望にすぎない!
6.まとめ

前トピックスで見えた「地権者攻略の手口」

過去に三菱地所が地元地権者へ配布した資料から見えてしまったもの。
それは彼らが地権者に対し正しい情報を伝えようとせず、逆に自社に都合の良い理屈ばかりを並べ立てる手法で、世間相場から著しく乖離した

「激安保留床単価」を既成事実化させ
保留床面積の最大化を通じ開発利益を独占!

その一方で「事業リスク」まで負わせながら

地権者に対しては「等価交換して終わり」

の処遇しか与えようとしない点です。

もし地権者が投資事業に精通したビジネスパーソンであったなら、決してこのような理不尽な条件に応じることはありません。
しかし芝三丁目地区に住む地権者たちの多くは事業投資の知識も経験もないごく普通の生活者たちであり、現役を退いた高齢者も多く含まれる構成となっています。そのような地権者層を相手に三菱地所は再開発事業の基本情報すら開示しない一方で、明らかに公正さや透明性に欠ける手法を平然と駆使することで開発利益の独占を企もうとしていることが、彼らが配布資料から垣間見えてしまいました。

本来、再開発の事業主体は地権者であり三菱地所ではありません。
また事業リスクを引き受けるのも地権者であり三菱地所ではありません。
それにも関らず、三菱地所はあたかも「自分たちが主で、地権者は従」であるかのマインドコントロールを行うことで、地権者に対しては「開発利益無しの従前評価」と言う、まさに世間で言う「ハイリスク、ノーリターン」の条件を受け入れさせようとするのですから尋常ではありません。(注1)

(注1) 三菱地所がこのような横柄な態度に出る背景の一つとして「都市再開発法」の不備が挙げられます。「都市再開発法」には地権者の従前資産を担保する規定は存在しても、「開発利益の処分」に関する規定が一切存在しないのです。再開発業者はこの法律の盲点を利用して「開発利益」を自社で独占してしまおうと企むのだと考えられます。

次の一手は「増床制限」!

芝三丁目西地区はまだ「都市計画決定」実行前の準備組合段階ですが、既に多くの問題が表面化しており、果たして三菱の思惑通り再開発が実現するかは不透明な状況にあります。従い、以下はあくまでも「都市計画決定」が将来実行されたとの仮定で議論を進めて参ります。

もし「激安保留床単価」が既成事実化されたまま「都市計画決定」が実行された場合、三菱地所がとるであろう「次の一手」は間違いなく

地権者に対する増床制限

だと考えられます。「増床制限」は三菱地所に限らず、住友不動産その他一部の再開発業者が頻繁に用いる「開発利益独占」のための手法ですので、各地の地権者の皆さまもこの手法については是非ともお知り置きください。

「増床制限」とは何か?

「増床」とは、地権者が権利床と一体の区画を有償にて追加取得することを言います。
もし再開発業者が「激安単価」で床を購入するのであれば、地権者だって同じ単価で床を買い増したいと思うのは自然の成り行きです。
三菱地所の提案する「等価交換」方式では、従後の権利床面積は従前の床面積よりも大幅に狭くなりますから、たとえ有償であっても激安単価で床を購入できれば地権者個々人の生活設計に合わせた床面積を自在に確保することが可能となりますし、また相場より著しく低い「激安単価」で床を購入できる以上、転売すれば莫大な額の売却益も期待できます。このように「増床」は地権者にとり大きなメリットをもたらします。
一方、このことは再開発業者側にとってはデメリットとなります。
地権者が増床を行えば、その分再開発業者が得る保留床は減少するので、彼らにとっては期待利益が収縮することになります。
このため業者側は地権者が簡単には床を買い増すことができないよう、様々な理屈のもとでハードルを設けようとします。それが「増床制限」です。
しかし、業者側の理屈は論理的根拠に乏しいものばかりですので、安易に彼らの説明を鵜呑みにはせず、必ず説明を文書で取り付けた上で、彼らの説明が合理的根拠を持つものであるかを検証することが大切です。

増床制限のための様々な口実

一般に再開発組合が再開発事業者により傀儡化されている現場では、再開発組合を通じて地権者の「購入金額」や「面積」に関する増床制限が設けられ、地権者が床の追加購入を簡単に行えないよう様々な対策が講じられます。
形式上それは「地権者が自ら設定したルール」とされますが、その実態は、保留床を独占的に手に入れたいと考える再開発事業者の「自分たちは安く独占的に床を手に入れるが、地権者にはそうさせない」と言う身勝手な論理に基づき、予め傀儡化させた再開発組合を誘導することでルール化させるものですのでご注意ください。
また業者側は増床を「権利床」としての取得ではなく、「保留床の売却」(注2)だと説明することで「増床手続きが煩雑になる」として、地権者の増床意欲を減退させる方向へ誘導しようとしますので注意が必要です。

(注2) 保留床の売却となれば、売却に際して「公募」や「組合総会の決議」等、様々な要件を定めた「都市再開発法第108条」が適用となる他、印紙税のかかる売買契約書の締結も別途必要となります。業者側はこの点に着目し、地権者に対し「手続きが煩雑になる」、「増床はあくまでも例外的な特別措置」と言った印象操作を行うことで地権者側が増床を断念する方向へ誘導しようするので注意が必要です。

増床制限の口実はそれこそ本トピックスで説明しきれないほど多種多様ですので、今後のトピックスにて更に詳しく解説して参ります。

「増床制限」は業者の単なる希望にすぎない!

そもそも都市再開発法に「増床制限」に関する規定など存在しません!
また、増床制限を課すか否かは地権者側(=地権者が名実共に主体となり組織される組合)が決める事柄であり、再開発事業者(=参加組合員)の都合で決めるべき事項ではありません。(注3)
従い、業者の言う「増床制限」は彼らの単なる希望だと捉えるべきです。

(注3) 一部の再開発業者が準備組合の結成段階から深く関与し、組合組織の傀儡化を目指す理由がまさにここにあります。事業経験に疎い地権者たちを組合役員に祭り上げ、彼らを「操り人形化」することで業者側は意のままに再開発事業を進めようとするので注意が必要です。
尚、詳しくは(171)傀儡型「準備組合」を見分ける法をご参照ください。

まとめ

再開発(第一種市街地再開発事業)は地権者が主体となり進める事業ですが、その一方で、三菱地所や住友不動産をはじめとする一部の再開発業者は「事業協力者」を名乗りながら、地権者が知識に疎いことに乗じて開発利益を自社で独占するための様々な仕掛けを構築しようとしますので地権者は注意が必要です。
業者側が真っ先に取り組むのは「準備組合」や「本組合」の傀儡化です。
その次に彼らが取り組む「地権者攻略の手口」は主に以下の3点です。

 

開発利益無しの従前評価
(地権者は「等価交換して終わり」の処遇!)
激安保留床単価の既成事実化

(これにて三菱地所は開発利益を独占!)
地権者に対する増床制限

(三菱は激安単価で床を入手しながら、地権者にはそうさせない!)

上記のうち、①と②は三菱地所が地権者へ配布した資料から見えてしまいました。[詳しくは、トピックス(251)及び(252)をご参照ください]
③ の「増床制限」が今回取り上げたテーマです。
今後再開発計画が進んだ場合、三菱地所は必らずや「増床制限」を仕掛けてくると思われますので地権者は注意が必要です。
尚、「増床」を単なる床の追加購入と捉えるべきではありません。
なぜなら、

「増床」は
業者が得る開発利益の一部を
地権者が取り戻す大切な手段

になり得るからです。
本来、増床ルールを決めるのは地権者側(=組合)であり、再開発業者側ではありません。従い、増床を制限しようとする業者側の理屈を鵜呑みにはせず、彼らから必ず文書にて説明を取り付けた上、その根拠を検証して行くことが何よりも重要です。

因みに、当HPでは「増床制限」を含む上記3点の地権者攻略の手口を「地権者をカモる3本の矢」として過去に解説していますので詳しくは以下のトピックスをご参照ください。
↓↓↓
(199)地権者をカモる「3本の矢」

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