(257) 港区は三菱の「ぼろ儲け」を黙認か?(その①) からの続きです。
前トピックスと重複する部分もありますが、港区の「不適切な地権者対応」について、少しでも多くの皆さまに理解して頂くため、本トピックスでは事実関係を中心に更に詳しく解説して参ります。
さて、前トピックスでは…
「三菱地所が再開発で1,850億円も儲ける可能性がある」との地元地権者たちの問題提起に対し、港区役所は ①論点には一言も言及せず、②調査も行おうとせず、まるで ③三菱地所の「ぼろ儲け」を黙認するかの返答を地権者に対し行った上、なんとそれを④区の公式ホームページで公開までしていたことを報じました。
そのような地権者対応が、本来行政が遵守すべき「公平性」、「中立性」、「透明性」の理念から逸脱した「不適切な対応」であることは誰の目にも明らかです。
1.いったいどこの話?
2.何が問題なのか?
3. 港区が行った「指導」とは
4. 「指導」のどこが不適切なのか
5. まとめ
いったいどこの話?
現場は、東京タワーから約1キロの距離にある都内港区でも超一等地に立地する「芝三丁目西地区」です。
この地区で再開発を行おうとしているのは三菱地所(注1)ですが、現在はまだ計画段階(=準備組合段階)にすぎません。
(注1) この地区のデベロッパーは三菱地所、三菱地所レジデンス、丸の内よろずの三菱系3社ですが、本トピックスでは便宜上、これら3社を合わせて「三菱地所」又は「三菱」と呼ぶことにします。
何が問題なのか?
疑惑の発端は、三菱地所が3年ほど前に地権者へ配布した資料です。当該資料を地元地権者たちが専門家を交えて分析した結果、
三菱地所が総事業費1,500億円を超える
1,850億円もの粗利を竣工と同時に得る!
との試算結果が出たことにあります。(注2)
(注2) 粗利1,850億円と言う数字はあくまでも3年前の配布資料を基に算出された試算結果にすぎません。その後現在に至るまでの3年間に近隣地区の相場が大幅上昇している現状を勘案すれば、現時点での三菱地所の粗利は2,500億円を超えるとの試算結果が新たに出ています。尚、試算の詳細については、(251)三菱地所に見る「激安保留床」で大儲けの仕掛けを参照ください。
この試算結果を受け地元地権者団体は港区へ問題提起を行いました。
具体的には港区に対し、三菱地所が「ぼろ儲け」する状況を区として認識・容認しているのかを問い、更に区へ実態調査の実施を求めました。
しかし残念ながら、区の返答は(冒頭でもお伝えした通り)論点への言及が一言もない極めて不自然且つ不誠実な内容でした。
港区が行った「指導」とは
以下の図を用いて時系列的にわかりやすく解説します。
先ずは(1)にて再開発事業の流れの中での「現在位置」を皆さまにご確認頂いた上で、続く(2)にて今回港区が地元地権者たちに対して行った「不適切な指導」をイメージ図で表わしてみます。
(1) 【再開発事業の流れ】
「芝三丁目西地区」の再開発計画は現在検討段階(上記①)にあります。
まだ何も正式には決まっていない段階での問題提起です。
一方、港区が地権者へ推奨したのは「縦覧」や「意見書提出」等の「再開発決定後」の手続きでした。(上記③)
その「手続き」を行うためには、先ずは地権者側による「再開発への同意」(=本組合の設立)が前提条件となります。
このように区の指導内容には矛盾点があることにお気づきください!
(2) 【港区の指導内容】
上記イラストからもわかるように、区は「再開発への同意が先で、問題提起はそれから」との立場です。
再開発事業の流れから見ても、港区の指導内容には大きな論理的矛盾があることをご認識ください。(注3)
(注3)余談ですが、このような矛盾を表現するのに米国では「Catch-22」と言う言葉がよく使われます。「Catch-22」は第二次世界大戦を題材にした小説で脚光を浴びることになった米軍の軍務規則の条項名ですが、「精神障害を自己申告すれば軍を除隊できる」と言う規則がある一方で、「精神障害だと自己判断できるのは精神障害ではない証拠」だと見做され、結局は軍を除隊出来ないと言う「ジレンマ」に陥ることを揶揄した言葉です。まさにこれは「再開発が不当だと言うのなら、先ずは再開発に同意した上で問題提起すればよい」と言う港区の論法と似ていないでしょうか?港区は再開発事業の行政監督官庁なのですから、「地権者をジレンマに陥れるような詭弁」を区民である地権者たちに対して発するべきではありません。
「指導」のどこが不適切なのか
地元地権者たちからの問題提起(=告発)に対する港区の対応は以下の点で不適切だと考えられます。
1.港区は「再開発の仕組み」についての説明を行うだけで、論点である「三菱地所の巨額の含み益」疑惑に関して一切言及をしていない。
(注釈:まさに「見て見ぬふり」であり「臭いものに蓋をした」と捉えられかねない不誠実な対応)
2.港区は再開発の決定後(=本組合設立後)に「縦覧」や「意見書提出」と言った機会が設けられていることに言及し、その段階で問題提起(=公正さや妥当性を確認)すれば良いと指導している。
(注釈:「再開発決定前」に発覚した問題を「再開発決定後」へ先送りさせようとした港区の指導には論理的矛盾があり、不誠実でもある!)
3. 港区は上記手続きの存在を理由に「実態調査は行わない」と結論。
(注釈:地権者から告発を受けながら区として調べもしないのは、まさに区の「不作為」や「業務怠慢」に該当するのでは?)
4.港区は地権者からの告発とも言える重大な問題提起を、区はホームページ上では「ご意見」として処理。
(注釈:区民は何を申し立てても単なる「ご意見」としてしか扱われないのか?)
まとめ
「再開発が不当だと言うのなら、
先ずは再開発に同意した上で問題提起すればよい!」
港区の地権者に対するこのような姿勢を皆さまはどう思われますか?
資本主義の世の中ですから、民間の営利企業である三菱地所がどれだけ儲けようと基本的には彼らの自由です。
しかし、再開発事業(第一種市街地再開発事業)となると話は別です。
再開発は私たち市民の税金まで投入される極めて公共性の高い事業であり、実際に当該地区(芝三丁目西地区)では行政から40億円もの補助金交付が見込まれています。そのような事業なだけに、再開発に乗じて関係業者が「ぼろ儲け」するなど社会的にも許される筈がありません。
港区が公式ホームページで公開した地権者対応には驚くばかりです!
再開発に乗じた三菱地所の「ぼろ儲け」懸念が問題提起されたにも関らず、区はこの問題を正面から取り上げようとせず、「再開発の手続き」の説明に終始するばかりで、具体的な対応を怠りました。
とりわけ「三菱地所の巨額の含み益」について一言も言及しなかった港区役所の対応は極めて不自然だと言えないでしょうか?
本来行政として遵守すべき「公平性」、「中立性」、「透明性」がそこには存在しません。
早くも巷では港区(職員?)と業者との癒着を疑う意見が聞こえ始めて来ています。
港区にはこの問題に対する説明責任があります。
先日、港区の「不適切な指導内容」に疑念を抱いた品川区在住の元区議が港区長宛へ質問状を送付しました。
果たして港区からはどのような回答が来るのでしょうか?
地元地権者だけでなく、市民の誰もが理解し納得できる港区の説明を期待したいところです。