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(262)三菱地所に対し、遂に「ハラスメント」の声が!

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現場は三菱地所(注1)が再開発を計画する港区の「芝三丁目西地区」
三菱地所による「1,850億円ぼろ儲け疑惑」が浮上したにもかかわらず、彼らは説明責任を果たさぬどころか、逆に地権者への締め付けを強化。追い詰められた地元地権者たちが三菱地所へ宛てた書簡では、遂に「ハラスメント」の文言までが飛び出す事態となりました!
しかし、三菱地所はこの文言を真摯に受け止めるどころか、逆に地権者側に対して更なる「嫌がらせ」ともとれる行動をとり始めたようです。
大企業である三菱地所のこのような地権者対応には疑念を抱かざるを得ません。万一世間がこれを問題視することとなれば三菱地所の「企業イメージ」の棄損はもとより、場合によっては三菱グループ全体のイメージ低下をも引き起こしかねないからです。企業のリスクマネージメントの観点からも極めてまずい対応だと言わざるを得ません。
本トピックスでは、このハラスメント問題について詳しく解説して参ります。

(注1) 芝三丁目西地区のデベロッパーは三菱地所三菱地所レジデンス丸の内よろずの三菱系3社ですが、本トピックスでは便宜上、これら3社を合わせて「三菱地所」又は「三菱」と呼ぶことにします。

 

Contents
1. そもそもハラスメントとは
2. なぜハラスメントの声が上がったのか?
3. 米国「三菱セクハラ事件」の教訓
4. 実は三菱地所も同時期に米国民の反感を買っていた!
5. まとめ

そもそもハラスメントとは

ハラスメントとは、ある発言や行為により相手に不快な感情を抱かせたり、或いは人としての人格や尊厳を傷つけたりすることを言います。
ここで注目すべきは、実際にハラスメントであるかの判断基準は「受け取る側の主観にある」と言う点です。
従い、たとえ加害者側が相手を傷つける意思や悪意は無かったと主張したところで、受け取る側が不快だと認識すればハラスメントは成立します。

ハラスメントは世間では大企業における「上司と部下」と言った主従関係を背景に行われる不適切な言動が問題視されることが多いようですが、再開発もこれと同様、組合組織を中心に開発区域と言う閉鎖社会の中で大企業である「三菱地所」と、区域内に閉じ込められた「地権者」との間には実質的な「権力の主従関係」が構築されていると見ることが出来ます。

さて今般、芝三丁目西地区の再開発現場において、三菱地所による執拗な勧誘や嫌がらせに困惑する地元地権者たちから遂に「ハラスメント」と言う言葉が発せられました。
三菱地所はこの事実を重く受け止める必要があります。

三菱地所は、バブル経済末期にグループ企業である三菱自動車が米国で引き起こした「三菱セクハラ事件」での会社側の対応の不手際により、三菱グループ全体が手痛い打撃を被った過去があることを今一度思い起こし、芝三丁目においても事態がこれ以上こじれぬよう、地権者たちに対しデベロッパーとしての説明責任をしっかり果たすべきです。

なぜハラスメントの声が上がったのか?

1.
過去のトピックスでもお伝えしている通り、きっかけの一つは三菱地所が自ら地権者へ配布した資料を地権者側が専門家を交えて分析した結果、三菱地所が総事業費1,500億円の再開発に対し、竣工時に1,850億円もの莫大な「含み益」を得るとの試算結果が出た点にあります。(三菱地所が莫大な利益を得る一方で、地権者側は事業主体であるにもかかわらず「等価交換」して終わりの処遇。地権者を犠牲にしても開発利益を独占しようとする三菱地所に対する地権者側の不信感が根底にあります。)
過大すぎる含み益の額に驚いた地元地権者団体は、過去から何度も三菱地所に対し詳細説明を求めると共に、「最新事業計画数字」の提出を要求しています。しかし三菱地所は口をつぐんだまま今もこれらの要求には応じていません。(地権者たちに「儲けの手口」を見破られてしまったため、釈明のしようがないのかも知れません。)

2.
その三菱地所は地権者側の疑問や要望には一切答えぬ一方で、何ごともなかったかのように地区内の地権者たちを相手に粛々と「個別訪問」や「電話連絡」等を続けており、更には「説明会」、「勉強会」等への勧誘も行い続けるありさま。そのような三菱地所の活動はもはや「迷惑行為」だと判断した地権者団体は、2025年6月に三菱地所へ宛てた書簡の中で初めて「ハラスメント」と言う言葉を明記したのでした。具体的にそれは、

地権者側の要望が満たされるまでは、(準備組合員を除く)一般地権者たちに対して、説明会や打ち合わせに関わる戸別訪問や電話連絡等による勧誘活動を控えてほしい。もしこれを無視して勧誘行為が行われた場合には、これを三菱地所の地権者に対するハラスメントと捉える」

と言う、三菱地所への警告ともとれる内容でした。

3.
ところが三菱地所はこの要望を無視しただけでなく、同書簡を発送した地権者団体代表に対し、「ならば今後は(書簡の送付者である)代表者個人に対してのみ勧誘活動を控える」と言った、まさに特定の個人に対する「嫌がらせ」(=まさにハラスメント)とも捉えられかねない回答書を送ってよこしたのです。(注2)

(注2) 三菱地所は以前から地権者団体名で発信される「不都合な要望」に対しては、「団体の要望」を意図的に「個人の要望」へとすり替える手口を使うことが確認されています。
これは「地権者が団結し集団でまとまる」ことを恐れる再開発業者が考え出した、集団と個人とを分離させようとする「苦肉の策」だと考えられます。

因みに、同地区の地権者団体は敢えて会員名簿を非公開としているため、三菱地所は唯一氏名が判明している代表者個人を対象としたのかも知れませんが、地権者側の質問や要望に一切答えぬ一方で、地権者を意図的に分断してしまおうとするやり方は大企業としての三菱地所らしからぬ狡猾な手法だと言えます。4.
今後この問題がどのように進んで行くのか定かではありませんが、

地権者が発したハラスメントの警告に対し、
三菱地所がハラスメントを以て答えた

と地権者や世間が認識することとなれば、事態の深刻化は不可避です。

米国発「三菱セクハラ事件」の教訓

冒頭で言及した「三菱セクハラ事件」は1990年代に三菱グループ中核企業である三菱自動車に対してセクハラ訴訟が起こされたにもかかわらず、会社側が訴訟に正面から反発しハラスメントへの対応を怠り続けたことから米国社会が反発し、結果として三菱グループ全体の企業イメージを失墜させてしまった事件です。
事件の発端は1992年に米国三菱自動車の社内で発生した複数の女性社員に対する経常的なセクハラ行為でした。1996年にかけ集団訴訟を含む複数の訴訟が提起されましたが、三菱側が誠意をもって対処しなかったばかりか、ハラスメントを告発した女性たちに対して会社側が嫌がらせや報復を行っていると報じられたことなども手伝い、米国社会が反発し、その後全米規模の「三菱製品ボイコット運動」へと発展した事件。
製品ボイコット運動は各地で壮絶を極め、一般消費者向けにビジネスを行う「三菱自動車」や「三菱電機」の製品はもとより、三菱グループとは無縁の「三菱鉛筆」(注:三菱鉛筆は三菱グループの一員ではありません!)までが被害を受けることとなり、同グループが長い年月をかけ米国内で築き上げてきたMITSUBISHIのブランド・イメージが瞬時に崩れ去った事件として有名です。

俗に「歴史は繰り返す」と言いますが、三菱地所が芝三丁目西地区で現在行っている地権者対応は、まさに①会社側が誠意をもって対処しない②特定個人を対象に『嫌がらせ』と見做されかねない行為を行っている、の2点において、「三菱セクハラ事件」と酷似しているので要注意です。
三菱地所には是非とも「三菱セクハラ事件」を他山の石として、業界大手デベロッパーらしい責任ある地権者対応を行って貰いたいものです。

実は三菱地所も同時期に米国民の反感を買っていた!

「三菱セクハラ事件」と直接的な関係はありませんが、たまたまこの事件が発生する少し前の1989年に三菱地所はニューヨーク・マンハッタン中心部にある有名なロックフェラーセンター(注3)を買収しています。

(注3)その中核をなすのは5番街に面した70階建て超高層ビル。
このビルは毎年クリスマス期になると玄関前にスケートリンクが設置され、巨大なクリスマスツリーが飾られることで世界的にも知られています。

セクハラ事件とは異なり、こちらは純粋な投資事業としての買収行為です。
しかしロックフェラーセンターは「ニューヨークのランドマーク」であり、且つ「米国の富の象徴」でもあったことから、買収によりニューヨーク市民を中心に米国民の反感を買い、「三菱セクハラ事件」と時期が重なったことも相まって、MITSUBISHIブランドのイメージ低下に一役買ってしまったようです。(注4)

(注4)米国の不動産王として知られていたドナルド・トランプ氏(現、米国大統領)も「日本により米国は引きちぎられつつある」などと述べ、三菱地所のロックフェラーセンター買収に不快感を示していたことが当時の記録に残されています。

しかしながら日本のバブル経済の崩壊と共に三菱地所によるロックフェラーセンターの経営もしだいに行き詰まり、1995年には現地運営会社が破産したことから、結局、三菱地所はこのビルを売却しています。

まとめ

今回は芝三丁目西地区の地権者たちが発した「ハラスメント」なる言葉をテーマとして取上げました。
しかし、同地区の真の問題はハラスメントそのものよりも、三菱地所が地権者たちに対して「1,850億円ぼろ儲け疑惑」に関する釈明を一切せず、更には「最新の事業計画数字」の開示すら行おうとしない点にあります。
三菱地所は再開発の事業主体である地権者に対し、事業の根幹である「事業計画数字」すら開示せず、更には地権者からの質問や要望にも応じない一方で、「再開発への同意」だけは地権者たちから取り付けようと言うのですから、まさに「身勝手な話」であり「虫のいい話」です。

もし再開発が地権者の利益になるとの確証があるのなら、
地権者の疑問や要望に率直に答え、
抽象的な形ではなく具体的にそれらを書面にて提示する。
これこそがデベロッパーの役割であり責務です!

明らかに三菱地所はこれを怠っています!
なぜ地権者たちがハラスメントと言う言葉を持ち出すに至ったのか?
その理由はもう皆さまもお分かりだと思います。
地権者側が「ハラスメント」なる言葉を持ち出した以上、三菱地所はこれを厳粛に受け止め、問題をこじらせないよう丁寧な地権者対応が必要であることは言うまでもありません。
それが出来ないようなら再開発計画は中止です!

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