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(270)三菱は「激安保留床単価」で一気にホームスチールか!?

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ホームスチールとは、野球で3塁ランナーが本塁への盗塁を試みることを言います。例えば9回裏2アウト3塁と言った、もう後が無い状況下でどうしても追加点がほしい場合などに試みられるプレーです。成功すれば貴重な追加点を得ることが出来ます。
まさにこれは国土交通省が令和9年度(2027年度)から「激安保留床単価」の規制(注1)に乗り出すのを前に、今のうちに再開発を決めてしまおうとホームスチールを狙う三菱地所(注2)と重ね合わすことが出来ます。
因みに、今回のホームグラウンド(現場)は港区の「芝三丁目西地区」
激安保留床単価で莫大な開発利益を狙う三菱地所にとり国土交通省の要綱改正は法律ではないにせよ逆風であることに変わりはありません。しかし、規制の適用前までに当該地区を「都市計画決定」へと持ち込むことが出来ればすべり込みセーフとなり、三菱地所は「激安保留床単価」を使い追加点(莫大な「含み益」)を稼ぎ出すことが少なくとも国交省の要綱上は可能となる算段です。一方、地権者はまさにホームベース(土地資産)を守ろうとするキャッチャーです。守る側は素人の手弁当チームで高齢者も多く、マスクやプロテクターなど身を守る装備も不十分なため、開発利益を狙い全速力でホームベースへ突進してくる百戦錬磨の強豪チームの走者(三菱地所)に体当たりされたら元も子もありません。
心身ともにダメージを負い将来の生活再建もままならなくなってしまいかねず、地権者にとっては重大な局面だと言えます。
本トピックスではそのような現場の実態についてレポートします。

(注1)国土交通省は再開発事業の制度全体を所管する監督官庁です。
規制の詳細については(269)「激安保留床単価」是正へ国交省が動き出した!をご参照ください。

(注2) 芝三丁目西地区の再開発ではタワマン建設が計画されており、関与するデベロッパーは三菱地所三菱地所レジデンス丸の内よろずの三菱系3社です。尚、本トピックスでは便宜上、これら3社を合わせて「三菱地所」又は「三菱」と呼ぶことにします。

 

Contents
1. 三菱地所の問題点
2. 地権者側も我慢の限界
3. まとめ

三菱地所の問題点

再開発(第一種市街地再開発事業)は地権者が事業主体となり進めて行く事業ですが、三菱地所はこの原則を軽視し、莫大な開発利益(保留床)の独占を狙い自らが主体となり一方的に自前の再開発計画を進めようとしている点に第一の問題があります。第二に、三菱地所は地権者に対して自らの再開発計画に同意するよう執拗に追い詰める点に問題があります。第三に、三菱地所は地権者の要望や疑問に素直に答えようとしない点に問題があります。
総じて言えば、三菱地所はデベロッパーとしての役割や責務をまったく果たしていないと言えます。

「芝三丁目西地区」では三菱地所が「激安保留床単価」を既成事実化させる手口で総事業費1,500億円をはるかに上回る1,850億円もの莫大な開発利益(=保留床)を稼ぎ出すとの試算結果が三菱地所自らが地権者たちへ配布した資料の分析により判明しています。(注3)
これに対し、地元地権者団体は三菱地所へ何度も説明を求めていますが、三菱は今も沈黙を守り続けています。これに加え、同団体は三菱地所に対して「最新の事業計画数字」の提出をも要求していますが、三菱は「時期が来たら出す」というばかりで今も提出を拒んでいます。

地権者は自ら事業リスクを引き受けながら再開発を進める事業主体であり、これに対し三菱地所は事業協力業者に過ぎません。
再開発事業ではあくまでも地権者が「主」であり、三菱は「従」ですが、
この関係をすり替えようとしているところに三菱地所の問題があります。

(注3) 「激安保留床単価」を使った開発利益(保留床)独占のカラクリと手口に関しては下記トピックスをご参照ください。
(178)「保留床総取り」のカラクリと業者の手口(前編)(2023/4/11)
(179)「保留床総取り」のカラクリと業者の手口(後編)(2023/4/17)

最近、三菱の現場担当者は何の根拠も示さぬまま、

「港区と協議し、来年度中に都市計画決定へ進めることにした」

なる情報を地権者たちに流布し始めたそうです。
国土交通省の要綱改正を知り、早期に再開発を決めたい三菱地所が、地権者に対し「再開発は既定路線だ」との印象操作を始めたのだと推測されます。このように業者が発する流言には裏があるので要注意です。
それにしても地権者を置き去りにしたまま業者側の事情で再開発を急ごうとするなど、もし事実であればまさに「愚の骨頂」であり「言語道断」だと言わざるを得ません。

地権者側も我慢の限界

地権者たちは「説明会」「勉強会」と称する集会に頻繁に召集され、その都度、数十ページにも及ぶ専門的な資料を手渡されて帰宅する。その資料も三菱側に有利な内容がそれとなく記載されていることがあるため、熟読して反論しない限りいつの間にかそれが既成事実化されてしまう懸念がある。それがわかっていても地権者に毎回熟読や反論を求めるには時間的にも能力的にも無理がある。結局、集会への参加を重ねるごとに地権者は徐々に不利な状況へと追いやられることになり兼ねない。
加えて、集会とは別に地権者宅へ繰り返し勧誘にやってくる三菱地所の社員たち。彼らにとっては業務の一環かも知れないが、突然の訪問で日常生活を乱される地権者側としては「迷惑」そのもの。
何度断っても地権者個々人への勧誘活動を止めようとせず、ハラスメントを繰り返す三菱地所の現場社員たち。

その様な状況に我慢の限界を感じた地権者20数名が先日、三菱地所側に対して書面による「勧誘(接触)不要通知」を提出したようです。
今後は三菱側からの連絡(勧誘)は「郵送」のみとし、従来行われていた「戸別訪問」や「電話連絡」等は拒否すると言う強い内容です。

この地区の地権者総数は約150名ですから、その約15%に相当する地権者たちが三菱による勧誘(接触)を書面で拒絶したことになります。
港区役所は「概ね80%の地権者からの同意取得」を都市計画決定の判断基準としている(即ち20%が不同意なら再開発は進まない)ことから、15%もの地権者たちが提出した「勧誘(接触)不要通知」が三菱地所に与えた影響は決して小さくはありません。

三菱地所はここで一旦立ち止まり、なぜ地権者たちが「勧誘(接触)不要通知」を提出しなければならなかったのか、その辺の事情をよく考えてみるべきではないでしょうか?

まとめ

三菱地所は国土交通省が「激安保留床単価」への規制に乗り出すことを知ってか、規制開始前に駆け込みでホームスチール(都市計画決定)を決めようと走り出した可能性があります。

ホームスチールは野球用語ですが、直訳すれば「家を盗む」となるだけに地権者にとっては気になる言葉です。
三菱地所の地権者に対する勧誘活動は一段と活発化しており、彼らの執拗な勧誘に耐えかねた20数名の地権者たち(地権者全体の約15%)が三菱側へ勧誘(接触)不要通知を提出する事態へと発展しました。
再開発の先行きが一段と不透明になったことは間違いありません。

三菱地所は「勧誘を続けていればそのうち観念して再開発に同意するだろう」と芝三丁目の地権者たちを甘く見ていた可能性があります。
偶然にも「勧誘(接触)不要通知」が提出されたのと同時期に、政界では公明党が自民党との「連立政権」からの離脱」を宣言し自民党を慌てさせました。自民党が「公明党は決して離脱などしない」などと甘く見ていたことが致命的となったようです。
芝三丁目もこれと似た構図です。
芝三丁目でも20数名の地権者たちが一斉に三菱地所の勧誘からの離脱を行ったことを、三菱地所は重く受け止めるべきではないでしょうか?

今、三菱地所に必要なのは「地権者へのリスペクト」と共に、地権者の誰もが納得する「公平、公正、且つ透明性ある事業協力活動」ではないでしょうか?

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