こんなに違う地権者対応!
トピックス(29)からの続きです。
前回は森ビルの行った「六本木ヒルズ再開発」を例にとり、「地権者への対応」が森ビルと住友不動産とでは大きく異なることを、以下の3つの側面から比較を行い皆さまへお伝えしました。
●森ビルはここが違う(その1):地権者に対する姿勢
※森ビル:社長自らが直接対話に応じて決断した!
※住友:私たちの窓口は決定権を持たぬ現場の住友社員だけ
(従い、山積する問題もいつまでたっても解決しない)
●森ビルはここが違う(その2):保留床の地権者への提供
※森ビル:一部を提供。これにより地権者棟の維持費が大幅ダウン
※住友:提供しない。地権者へは「等価交換」の話しかしない。
(現状では床を貰っても生活再建が困難となる懸念あり)
●森ビルはここが違う(その3):「単独建替え」希望者への対応
※森ビル:応じた
※住友:応じない。それどころか「阻止」の構えで臨んでいる
今回は更に「権利変換」についての両社の対応の違いも比較してみました。
森ビルはここが違う(その4):権利変換の保証
※森ビル:保証した
(従前評価額や事業費等が増減した場合でも権利変換率は変更しないことを具体的に書面で保証)
※住友:一切保証しない
(唯一書面で出したのは判断材料としての作成者不明の「権利変換モデル」のみ。保証はなし。)
住友不動産の対応
先月、あるマンションが、個々の所有者の権利変換について最新版がないか準備組合へ照会したところ、準備組合事務局から戻ってきた回答は、「再開発の目処が付いたときに修正する」、また「過去に提示した権利変換モデルは概算であり、その時点での地権者の判断材料として出したもの」などと書かれていた由。
2年近くが経過し、今も住友準備組合は抽象的な説明に終始し続けており、具体的なことは何一つ答えようとしないのです。
もちろん「地権者へ保証をしよう」と言う意思などいささかも感じられません。
森ビルの対応
さて今度は森ビルの対応を見て行きます。先ずは添付資料をご覧下さい。
これは森ビルが「六本木ヒルズ再開発」を進めるために準備組合(=地権者)宛に発行した保証状の内容です。
保証条項には「権利変換率の保証」が含まれており、そこには「従前評価額や事業費等が増減した場合も権利変換率は変更しない」と書いてあります。
森ビルは住友不動産とは異なり、多くの保証を地権者に対して行いました。
まとめ
これで皆さま、もうおわかりだと思います。
住友不動産は権利変換の条件を「出せない」のではなく「出したくない」のです。 他社が出せて住友不動産が出せないことなどない筈です!
保証はしないが同意だけは地権者から取付けたいと言う姿勢なのです。
自社の都合が最優先で地権者のことなど二の次ともとれる住友不動産側の対応は明らかに森ビルとは異なります。
私たちの考える住友不動産の手法は次の通りです。
2.再開発の進捗と共に各種規制により地権者の選択肢が狭まるのを待ち、一気に「強気の権利変換条件」で地権者を合意へと導く。
組合設立まで引き延ばされると、権利変換交渉は地権者に圧倒的に不利となります。
泉岳寺と同じ住友不動産が主導する近隣の「三田三・四丁目再開発」でも、地権者たちは保証を取付けていなかったために、組合設立後の最後の段階でこの洗礼を受けたようです。(最後は部屋の天井高まで低くされたとの話が伝わって来ています)
さて、森ビルが地権者へ発行した保証状には権利変換率の保証に関連して「従前評価額や事業費等が増減した場合も権利変換率は減額しない」と書かれています。
この条項は泉岳寺では極めて重要な条項となります。
特に重要なのは「事業費が変動しても権利変換率は減額しない」なる部分。
何故なら、泉岳寺の準備組合は地権者の事前相談や了解を得ることもなく「JR新駅とを結ぶ歩行者用デッキの設置」を組合が負担することを目玉に港区から都市計画決定の承認を取付けようと計画しているからです。
「歩行者用デッキ」はJR恵比寿駅からガーデンプレイスへと続くコンコースに近いイメージのものでしょうか。膨大な事業費がかかります。
その事業費は基本的には組合負担(=地権者負担)となります。
そもそもJR駅直結で国道までまたぐ大がかりな「公共設備」をなぜ国土交通省などの公的機関ではなく、泉岳寺の「260名の地権者」で負担しなければならないのか疑問ですが、仮にこれを組合が行うとなれば、事業費のしわ寄せは「権利変換条件の悪化」と言う形で地権者へ跳ね返ることとなります。
その結果、権利変換で「100㎡の床」を見込んでいた地権者が、「70㎡しか貰えない」と言ったことが起きるかも知れません。
このような不安を解消するためにも、「従前評価額や事業費等が増減した場合も権利変換率は減額しない」と言った保証の取付けは不可欠なのです。
森ビルはこれに応じました。
住友不動産は話題にしようともしません。
納得できなければ「再開発へは同意しない」。
これが弱い立場にある地権者が出来ることです。全体の2/3以上が同意しない限り再開発を進めることは出来ないのですから…