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(45)準備組合は設立すべきか?(その3)

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トピックス(44)準備組合は設立すべきか?(その2)からの続きです。
前トピックスでは、準備組合は事業者にとり実に都合の良い制度であること。逆を言えば、地権者にとっては都合の悪い仕組みであることをお伝えしました。一方で、「準備組合」は法人格を持たない単なる任意団体ですので、例え少人数の賛同しか得られなかったとしても、事業者が作ろうと企てれば簡単に設立できてしまうこともお伝えしました。
泉岳寺でもその様な形で準備組合が設立されています。

一旦、準備組合が設立されると、事業者は待っていましたとばかりに「準備組合」の名の下に地権者宅を訪れ、甘い話ばかりを口頭で持ちかけ、実際には不公平・不公正な条件の下で、まだ再開発事業に対する知識も不完全な地権者たちを相手に一気に再開発への同意をとりつけようとしますので注意が必要です。(泉岳寺での事例)

従い、本トピックスでは、準備組合が一方的に設立された場合に注意すべき点について泉岳寺での経験に基づき述べさせていただきます。

準備組合が一方的に設立された場合に注意すべき点

①地権者の意に反して準備組合が設立された場合の対応

準備組合は法人格を持たない単なる任意団体(=仲良しクラブ)ですから、事業者や一部の地権者がこれを設立しようと思えばいつでも設立出来てしまいます。
仲間内で何を議論し何を決定しようと彼らの自由であり、部外者は口を挟めません。しかし、そこで決めたことが部外者の資産や人権へも影響を及ぼしかねないとなると話は別です。
このため、もし意に反して「準備組合」が設立されてしまった場合は、地域住民や行政に対し「準備組合が地域住民の意思を代表していない組織である」ことを徹底的に周知させて行くことが肝要です。(皆さまの地域の準備組合も、それがもし「ごく一部の地権者」や「事業者主導」により設立されていたとしたなら問題です。この機会に検証されてみては如何でしょうか?)

②設立後は一気に同意書集めが進むものと心得よ

既に(43)準備組合は設立すべきか?でも説明しましたが、一旦、準備組合が設立されると、事業者は待ってましたとばかりに、まだ再開発に対する知識も乏しい地権者を相手に「持ち出し無しで新築マンションに住める」などと言った甘い話ばかりを切り出して一気に同意書集めを図ろうとします。まさに短期決戦です。地権者が再開発に対する基礎知識を身につける前に、都合の良い話ばかり聞かせ、出来るだけ多くの「同意」をかき集めてしまおうとする意図があったと思わざるを得ません。何故なら、再開発に対する基礎知識や知恵が身についた現在、もし同じ勧誘が行われたならば、おそらく多くの地権者は同意書の内容に疑念を抱き、記名・捺印などしなかったであろうと推測出来るからです

その同意書ですが、中身をよく読むと地権者側に圧倒的に不利で不平等な内容となっているので、この点にも注意が必要です。
(注:泉岳寺の場合です。詳しくは、(42)これが同意書の正体だ!をご参照下さい)

③行政への「準備組合結成届」に関しての注意点

準備組合が設立されると、まず事業者は「準備組合結成届」を区市町村へ提出します。
(泉岳寺の場合は港区へ提出)
港区では泉岳寺での準備組合結成届を受理した後、港区長名で再開発事業の許認可権者である東京都知事に対し準備組合が結成されたことが「進達」されました。
(因みに、「進達」というのは役所用語で単に「届け出る」と言う意味だそうです。 尚、実際に都知事へ進達された書簡については本トピックス最後に添付の「準備組合結成届」をご参照下さい)

ご覧のとおり、この都知事宛の「進達」は行政による「単なる連絡手続き」に過ぎないのですが、事業者はこれを最大限誇張して地権者へ報じました。
具体的には、彼らの刊行物である「準備組合ニュース」の中で、「この手続きにより、港区が “当準備組合の進める市街地再開発事業” を正式に支援することが、東京都に認知されました」などと大げさに報じたのです。
港区は、準備組合を「認知」はしたが「正式に支援」までは決定していないとの立場でした。都知事宛の「進達」についても単に「準備組合が出来ましたよ」と言う内容が区から都へ伝達されただけなのに、この有様です。
もちろんその目的は、同意を渋る地権者に対してあたかも「再開発は半ば決定している」と言った事実とは異なる印象を植え付けることで、一人でも多くの地権者から「同意書」を取付けることだと思われます。
再開発など実際にはまだ何も決まっていないにも係わらず、あたかも再開発は決まっているかの如く演出を行い、地権者に誤った認識を植え付けようとする事業者側のこのようなやり方は全くフェアではありません。
因みに、彼らは多くの場面でこのようなレトリック(=巧言)を駆使して来るので注意が必要です。

準備組合は設立すべきか?(まとめ)

1.地権者の皆さまが「勉強会」や「街づくり協議会」と言った協議の場に幅広く参加され、しっかりと時間をかけて検討を行った結果、将来の街づくりのためには「準備組合の設立が必要だ」と言うのであるのなら何ら問題はない筈です。

2.しかし、いまやコロナ禍の影響で社会経済情勢の変革の波が押し寄せてきており、再開発も今後事業として成り立つかが不透明になってきています。このため少なくともコロナ禍が収束し、将来が見通せるようになるまでは、準備組合の設立は保留されたほうが賢明かも知れません。

3.準備組合は任意団体ですので、一部の地権者、或いは事業者が設立しようと思えば設立出来てしまいます。しかし、一度準備組合が設立されると、事業者は(地権者が再開発に関する基礎知識を身につける前に)一気に地権者の「同意」取り付けに走る懸念があるので注意が必要です。また一旦設立されると、たとえ将来事業性に疑念が生じたとしても、事業者は簡単には解散に応じようとしない懸念もありますので、設立前にこれらの事態についても考慮しておく必要があります。

4.準備組合はあくまでも真に「地権者主体」となる形で設立されるべきです。決して「再開発事業者主導」で設立されるべきではありません。たとえ表面上は「地権者主体」の準備組合が設立されたように見えても、もし再開発事業者が裏にまわり「事業協力者」と「事務局」の双方の業務を担うこととなれば、結局は「再開発事業者が主導する準備組合」となってしまうのでこの点にも注意が必要です。

5.再開発事業者が主導する準備組合が出来上がると、彼らは「準備組合」の名の下に強引で且つ不公平・不公正な手法を用いて地権者へ再開発への同意を迫ってくることが、少なくとも泉岳寺では確認されています。ついては全国の皆さまも是非この点にはご注意下さい。(尚、泉岳寺に於けるそれらの具体例については、当ホームページ内の随所に記載がありますので是非ご参照下さい)

準備組合は法人格のない任意団体ではあるものの、もしそれが正当な形で設立され運営されるのであれば、再開発計画の窓口として一定の役割を果たすものと思われます。しかし再開発事業者が主導する形で準備組合が設立されると、彼らの一方的なやり方で再開発が一気に進んでしまう懸念もあります。もう一段先の「再開発組合設立」まで進んでしまうと、今度は再開発に同意しなかった地権者までもが強制的に組合員として再開発に組み込まれてしまいます。それだけに、準備組合設立に際しては、その是非をめぐり慎重すぎるほどの検討が必要ではないでしょうか?
地権者の大切な土地や資産の処分にも係わる問題だけに、「石橋を叩いても渡らない」くらいの慎重姿勢でも良いかも知れません。地権者が、将来「こんな筈ではなかった」と後悔することだけは絶対に避けたいものです。

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