トピックス(82)著名建築家による監修を要望!では、世界的に著名な某建築家の方から、現行再開発計画の見直しに向けてご協力いただけるとのオファーがあったことを報じました。そして地元「地権者の会」はこれを「泉岳寺ならではの再開発」が実現できるチャンスと捉え、住友不動産に対し同氏のコメントを受け入れる形で設計を見直すと共に、同氏をマスターアーキテクトとして採用することを求める書簡を提出したことも報じました。
何故、地元「地権者の会」が著名な建築家から協力を取付けることができたのか?
本トピックスでは、その辺の事情につきご説明します。
著名建築家へお願いするに至った経緯
●トピックス(60)こんな地権者棟に住みたいですか?及びトピックス(61)それでも再開発に同意しますか?でも報じた通り、昨年突如として住友不動産が提示してきたA案でもB案でもC案でもない「C2’案」なる地権者棟(中層棟)の提案。何かが不自然だと感じた地権者有志が集まり、専門家へ依頼して3D-CADを用いたコンピューター解析を行った結果、なんとC2’案では1年中陽の差さない住戸が全体の約半数もあることが判明。更に彼らの図面には日影図が極小に描かれていた事実まで明らかとなり、「これが地権者主体の再開発と言えるのか?」と問題となりました。
これらはコンピューター解析で初めてわかった事実です。事業者側は「どうせ地権者には建築の詳細などわからない」と考えたのでしょうか?もし故意であったとすれば残念な行為です。
●さてその解析結果ですが、それが正しいものであることを検証すべく、データをホームページ上で公開したところ、多くの建築専門家の方々から住友不動産側が提案したC2’案は「良好な住環境とは言い難い」、「地権者軽視の設計だ」と言ったコメントが寄せられました。
●C2’案を推し進めようとする住友不動産側に対し、C2‘案はもはや地権者の望む設計ではないと確信した「地権者の会」は、業界内の多くの関係者へ窮状を訴え続けた結果、今般、有名建築家と繋がることが出来た次第です。
●同氏は、ご自身が近隣駅のデザインをご担当されていることもあり、泉岳寺周辺地区には思い入れが深く、また駅前区再開発のデザインにも関わっているとのこと。建築家として、駅前に続く大規模再開発群については、「街並みとの調和」や「東京の次世代の街づくり」の観点から、非常に高い関心を持たれています。 そのような背景もあり、今回「地権者の会」が窮状を訴えたことで、快く接見にも応じて頂き、「地権者本位」且つ「近隣地域との調和のとれた」設計への協力を惜しまないと快諾を頂くに至った次第です。 同氏からのオファーは大変貴重なチャンスでもあり、私たちはこの機会を無駄にすべきではないと強く考えています。
同建築家が適任である理由
同氏は近隣駅の他、各地でランドマークとも言える建造物の設計を担当されています。そしてこれらの建造物に共通するのは「和の文化を感じさせる基本コンセプト」です。
駅の屋根は「折り紙」をデザインモチーフにしていますし、某競技施設では「全国の木材」が多用され再生可能な持続的社会へのメッセージを世界へと発信しています。また某演芸場では「現代にマッチする和のデザイン」を取り入れ、昭和の古びた街並みに新風を送り込み地域の活性化・話題づくりに大きく貢献しています。
当地区も泉岳寺を中心とした「門前町」であるとの観点に立てば、同氏の監修により「参道の整備」や「中門周りの景観」も含め、未来に通じる「和のテイスト」を活かした日本文化の香り漂う「街づくり」が可能となる筈です。更には、当地の再開発でも何らかの対応を必要とされるであろう「アフターコロナ禍におけるビジネスタウンの在り方」という観点でも、世界中で活躍されている広い知見の下、たびたび新聞等で発言されており、高い次元での工夫や経済性とのバランスも、大いに期待できることでしょう。 そしてその人柄も、柔軟で聡明な、朗らかなカリスマ性をもつ、尊敬したくなる人物でもあります。
同氏を例えばマスターアーキテクト(*1)として戴くことで、各地で提案されている「紋切り型」の再開発とは明らかに異なる「泉岳寺にふさわしい再開発」が実現できるチャンスが広がるものと考えます。また同氏ご自身も「高層建築物ありき」の発想ではなく「住民目線も取り入れた街づくり」を重視されておられることから、名実ともに第一種市街地再開発事業にふさわしい、「地権者の、地権者による、地権者のための街づくり」に近づくことが期待されます。更に同氏の設計・監修となれば、建造される構築物はもとより、地域全体の付加価値も一段と高まることから、地元地権者にとり、まさに「一石二鳥」の効果が期待できますし、進退窮まる現状を打破できる「起死回生」を狙う、最善の戦略であると考えます。
結果は追って皆さまへご連絡します。
マスターアーキテクトとは、「街づくり」全体のデザインを、住民の快適な居住環境や周辺地域との景観面での調和を図りながらプロジェクト全体を統括的に監修する専門家のこと。
欧米では既に一般的に採用されている方式で、日本でも近年普及が進み、例えば渋谷駅周辺地区で進行中の多くの再開発現場でマスターアーキテクト方式が採用されています。一流の建築家をマスターアーキテクトとして迎え入れることで、再開発事業全体の付加価値が大きく向上するだけでなく、事業者目線で行われがちだった従来型の再開発ではなく、新たに「生活者の目線」や「街のサステナビリティ(=持続可能性)」と言った視点も取り入れることで、真に人々にとり暮らしやすい街の実現が期待されます。