TOP_Topics 再開発、ここに注意

(93)高齢者はつらいよ

投稿日:

2年前にもこの問題を取り上げましたが、今回、YouTube動画の紹介も兼ねて、改めてこのテーマを取り上げます。

高齢者は再開発を心から喜べるのか?

実は、再開発で一番影響を受けるのはご高齢のシニア世代なのです。
その原因の一つは、事業者側があたかも再開発は6~7年と言った短期間で実現するかの説明を行うことにあります。その言葉を額面通りに受け取り、それならと「再開発へ安易に同意」してしまうことから苦難の人生が始まります。

実は再開発は竣工までに長い年月を必要とする事業なのです。
事業者がそのことを正直に言わない限り、一般地権者にはそれがわかりません。
準備組合の設立から竣工まで20年前後かかる再開発事業など世間にいくらでもあります。あの有名な六本木ヒルズ再開発も竣工まで17年を要しています。その近隣にある三田小山町C地区再開発に至っては、「都市計画決定」まで22年、組合設立まで26年もかかっており、今もまだ工事は始まっていません。結局、竣工までに30年以上かかる計算となります。
再開発は事業者の言う「短期間で竣工」と言った事業ではありません。
再開発は竣工まで実に長い年月を必要とする事業なのです。

しわ寄せを受けるのは高齢者!

そうなると、ご高齢のシニア層がその影響を最も強く受けることになります。事業者はあまりこのことに触れたがりません!
何故なら、再開発が長い年月を要する事業だと最初からわかってしまえば、多くの地権者、とりわけ高齢のシニア世代が再開発に及び腰となるからです。
再開発が本当に6~7年と言った短期間で終了するのであれば、賛同する
シニア世代も多いかも知れません。自身がまだ健康な内に再開発後の新生活を始められると考えるからです。しかし竣工まで15年、20年、或いはそれ以上かかるかも知れないとなれば話は別です。
高齢のシニア層にとり人生に残された時間はどうしても限られてしまいます。元気で自立した生活が送れる期間(=健康寿命)となれば更に短くなります。
そうなると、シニア層は再開発への見方を当然変えなくてはなりません。
ご高齢のシニア世代にとり、15年も20年もかかる再開発は致命的です。
身体が不自由になってから「仮住まい」などで引っ越しを繰り返したりしたくはありません。また「自分が健康なうちに戻る!」と言った気力も失せて行きます。
場合によっては「介護施設へ入居」することになるかも知れないし、何よりも辛いのは寿命により永遠に戻れないシナリオも想定しなければならないことです。

高齢のシニア層にとり再開発は障害だらけ

一旦、再開発に向けた「仮住まい」が始まれば、地域のコミュニティは消滅し、いままで築き上げてきたご近所付き合いも無くなります。
仮住まいで他の区市町村へ移るとなれば、介護支援体制も変わります。
もちろん医療支援体制も変わります。引っ越し先によっては病院やクリニック、そして担当医の変更も余儀なくされます。
また高齢シニア層にとり、単独で「仮住まい先」を見つけるのも一苦労です。
今も「お年寄りには部屋を貸したがらない」家主が多い現実があるからです。

実は40歳代以上の地権者も注意が必要!

高齢シニア層と申し上げましたが、再開発が20年前後かかる前提に立てば、現在40歳代以上の地権者も注意が必要です。今は現役として収入が安定していても、20年後には自身が「年金生活」に入る可能性があるからです。
たとえ念願の再開発マンションへ入居出来たとしても、入居後の維持管理費が高額となれば、年金生活者にとっては生活費の工面も大変で、結局は新居での「生活再建」を諦めざるを得なくなる可能性があるからです。

泉岳寺の場合はどうか?

泉岳寺では準備組合が設立されてから既に5年が経過し、また同意書集めが始まってから3年半が経過しようとしています。しかし、今も必要な数の地権者同意は集っておらず、再開発を進めることが出来ません。
3年半が経過した今も「非同意」の地権者は、皆さんそれぞれの事情があって「非同意」なのです。従い、いくら事業者が説得を続けてもそう簡単に「同意」へと判断が変わるとは思えません。また泉岳寺では公平性・公正さ、且つ透明性の欠如した計画推進が堂々と行われている現状下では、再開発を進めることへの地権者の抵抗感は根強く、今後、地権者による合意形成がスムーズに得られるとは到底思えぬ状況にあります。
準備組合設立から5年が経過した今も、将来の見通しは不透明なのです。
事業者側の楽観的な説明を信じるべきではありません。その例として泉岳寺で事業者が2018年3月に地権者へ配った「事業スケジュール表」では、『2020年度中には「解体着工・明渡し」が終わる』と明記されていました。予定とは言え、計画通り進んでいれば、泉岳寺の地権者たちは今ごろ、自宅を明け渡して仮住まい生活に入っていた筈です。しかし、現実はどうだったか?2021年となった今も、都市計画決定に必要な地権者同意は集まらず、再開発はまだ何も正式には決まっていません。5年が経過した今も地権者たちの生活は以前と何ら変化はありません。
再開発はこのようにして時間だけがどんどん経過して行くのです。
もう一度言います。再開発は竣工までに実に長い年月を必要とする事業であり、そのしわ寄せを一番受けるのがご高齢のシニア世代なのです!

まとめ

再開発が長い年月を必要とする事業である以上、特にご高齢のシニア世代は自身の将来の生活設計を真剣に考え直してみる必要があります。
再開発が15年、20年、場合によってはそれ以上かかる可能性を考えれば、
「再開発には依存せず、今のままの生活で人生を終えたい」と考える地権者が増えても不自然ではありません。
再開発の現実を直視し、自身のこれからの限られた人生の過ごし方を真剣に考えれば、「再開発には応じない」と言う決断も一つの立派な選択肢ではないでしょうか?

尚、高齢シニア世代の問題を解説したYouTube動画を作成しましたのでご視聴下さい。(以下のサムネイルをクリックすることでご覧頂けます)

【事務局からのお知らせ】

その他の「動画」については、下記のバナーから、ご視聴頂くことが出来ます。

-TOP_Topics, 再開発、ここに注意

関連記事

(185)「準備組合ニュース」をこちらで作ってみた!

「準備組合ニュース」は今や風前のともしび? 地権者が再開発の進捗状況を知るための貴重な情報源である「準備組合ニュース」。当地区では、その 「準備組合ニュース」が最近発行されなくなりました! 実はその兆 …

(213)「保留床」激安総取りのしくみ(図解)

これだけ違う!「保留床」取得の考え方 各地区との情報共有を通じて再開発事業者側の考えが見えて来ました。 本来「保留床」はこのようにして決まる! 再開発(第一種市街地再開発事業)は、再開発施設の一部(= …

(78)仲見世に優遇住宅か?(その2)

泉岳寺中門より仲見世を望む(右側が仲見世、正面が山門) 赤枠で囲った部分が「再開発計画区域」赤の斜線部分が仲見世。仲見世は泉岳寺・中門の内側(山門と中門との中間)に位置するため、泉岳寺の「境内の一部」 …

(9)高齢者はつらいよ

再開発のしわ寄せを一番受けるのはご高齢の地権者です。 ご高齢と申し上げましたが、再開発が20年前後かかるのが一般的な状況下では、20年後に年金生活に入る可能性のある世代(すなわち現在40歳代以上の皆さ …

(行-7)同意率かさ上げ疑惑に港区も加担か?(2)

本トピックスは(行-6)同意率かさ上げ疑惑に港区も加担か?(1)からの続きです。 港区内では、昨年9月に区内7つの住民団体が連携し、「不正は断じて許さない」との強い決意から、『港区へ公正で透明性ある再 …