地権者が主体となる再開発事業なのに、その地権者が権利変換で移り住む住居が図面から消えた!
そんな馬鹿な話があるものかとお思いでしょう。しかし、現実に東京都品川区にある「大崎西口駅前地区市街地再開発事業」では「地権者棟が図面からいつの間にか消えた」ことで昨年から騒ぎとなっています。
ここは大成建設が主導する再開発現場ですが、調べてみればここでも騒ぎの原因を作ったのは、外部から入り込んできた住友不動産だったようです。
近隣地区で同様の再開発を進める住友不動産が大成建設と示し合わせ、自社で建設予定の「タワマン」へ地権者を「転出」扱いで誘致しようとしたことから反対運動が起き、騒ぎとなっているのです。
再開発の名のもとに地権者全員が追い出される!
再開発(第一種市街地再開発事業)は地権者の発意と合意に基づき進められる「街づくり」であり、地権者は土地資産を供出する見返りに区域内で権利床を取得するのが大原則です。
今回、住友不動産が区域外の自社タワマンへ地権者を誘致しようとする提案は、この原則を否定し、地権者に「権利変換」を放棄させ「転出」を強いるものです。
再開発区域外への「転出」ですから、当然、地権者が再開発で享受できる筈の諸権利や税金の減免措置等は消滅します。
そして何よりも、地権者が全員地域から追い出される結果をもたらします。まさにこれは地域全体の「地上げ」だと言えます。
なぜ住友はタワマン誘致をはじめたのか?
経済情勢の変化を読み誤った住友不動産が、「今からタワマンを建てても分譲が難しい」ことに気づき始めた可能性があります。昨今の建設資材高騰や品不足・人手不足で建設費は急上昇中で業界は混乱状況にあります。加えて住宅ローン金利も上昇基調にあるとなれば、タワマン分譲にも黄信号が灯るのは当然のことです。そこで住友が近隣再開発の地権者を誘致してでも「余りものの床」を埋めようと考えても不思議ではありません。
いったい何が問題なのか?
大崎駅西口再開発の図面から突然「地権者棟」が消え、準備組合が隣町に建設される「住友タワマン」への誘導を始めたことは、まさに再開発区域からの地権者の追い出しそのものです。
当然誘致を促進させるため、住友側は地権者に対しそれなりのインセンティブを供与するのでしょうが、地権者に「権利変換」を放棄させ、半ば強制的に「転出」を迫る乱暴なやり方は再開発の理念とは相いれず、地権者を完全に無視した手法です。
因みに住友不動産は、なんと地権者のいなくなった土地で新たに「参加組合員」となることまで希望しているそうです。地権者さえいなくなればあとはやりたい放題と言うことなのでしょうか?
そのような業者と付き合わされる地権者はたまりません。
まとめ
今回起きている「地権者全員の区域外への転出」促進は、タワマンの分譲が難しくなっている住友不動産が考え出した「再開発に乗じた新手のタワマン分譲の手法」だと考えられます。
住友は営利企業ですから、分譲のための様々な方策を考えるのは当然であり、それ自体何ら問題はありません。
問題なのは、住友不動産が自ら再開発事業を手掛け、その仕組みに熟知した大手業者でありながら、「地権者主体」と言う再開発の基本理念を正面から否定し、地権者をあたかもカモネギのように扱おうとしている点です。
「将来性ある駅前の土地」を手放す見返りに「隣町の余りものの床」をつかまされたのでは、地権者はたまったものではありません。地元では反対運動が起き「かわら版」の配布も始まっています。(添付ご参照下さい)
今回の騒動は決して他人事ではありません。
今後、住友不動産以外の業者が計画する再開発現場であっても、住友不動産が外部からやって来て同様の手口が使われないとは言い切れないからです。
まさかそんなことがとお思いでしょうが、その「まさか」が大崎西口駅前で実際に起きている以上、他地区の地権者も注意しておく必要はありそうです。まさに「備えあれば憂いなし」です。
【添付】