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(204)この「土地登記簿」は何だ?(続編)

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本トピックスは(203)えっ?この「土地登記簿」は何だ!? の続編です。

まさか「地権者の買収工作」?

先日、「登記簿謄本」を公開したところ、皆さまからそのようなご意見を多数いただきました。果たして本当にそう見做すことができるのか?本トピックスでは皆さまから寄せられたコメントも勘案しながらこの問題をもう少し掘り下げて考えて見ます。

「42名の共有」など現実にあり得るのか?

42名もの地権者が都心の一等地にある不動産を共同で取得する!たしかに理屈の上では可能かもしれないが、果たして現実にそのようなことがあり得るのか? そう考えた場合、今回の登記簿に関し、疑問点が次々と湧き出て来ます。

1.そもそも「共有の目的」は何だったのか?

もし42名の地権者が自らの意思で不動産を共有しようと考えたのであれば、その目的は何だったのか?
純粋に土地の値上がり期待が目的だったのか?それとも再開発を前提に従前資産を増やす目的でこれを実行したのか?

2.合意形成には「相当の時間」がかかる筈

共有の希望者が42名も集まればそれこそ様々な意見が出て然るべきです。全員が合意に達するまでには何度も会合を開き議論を重ねて行く必要があり、当然のことながら、合意形成には相当の時間(場合によっては年単位)が必要だと考えるのが妥当です。果たしてそのような時間をかけた議論が地権者間でしっかり行われていたのか?

3.「資金」をどのように工面したのか?

現場は「六本木ヒルズ」や「麻布台ヒルズ」まで1km圏内と言うまさに都心の超一等地です。当然、土地の所有権登記には億単位の資金が必要だったと想定され、42名で分担したとしても一人当たり数百万円の額に上ります。これだけの費用を42名もの地権者全員が一括して負担したと考えるには無理があるのではないでしょうか?もし金融機関から融資を受けたのだとすれば、「抵当権」が設定される筈ですが、登記簿謄本を見る限り「抵当権」が設定された形跡はありません。

4.よく見れば42名が所有者だったのは「1か月間」だけ!

2筆の登記簿は、何れも所有権登記から1か月後には共有者全員の持ち分がそれぞれ「某1名」へ移転・集約されています。
まさにここが不自然な所有権登記の核心部分だと言えます。
いったい何故このような処理がなされたのか?
どうやら「42名による共有」の目的は、「土地の値上がり期待」ではなく再開発との関連性が濃厚になって来たようです。
例えば、再開発業者側が42名の従前資産を増やす目的で、「一時的に42名の所有権を成立」させ、その事実を以て、これを個々人の従前資産評価に含めたと言う仮説が成り立つのではないでしょうか?
従前評価額が増えれば従後資産(権利床)も増えます。従い、地権者なら誰だって歓迎する筈です。そうなれば地権者は一転して再開発へ前向き姿勢となるでしょうから、業者側にとっても「同意者が増えて同意率が上昇する」と言う算段です。

5.1か月後に全員から所有権を取り戻した輩は誰なのか?

2筆の登記簿を見る限り、その「輩」は地元地権者のようですが、残る41名との関係性を含め、どのような人物/法人であり、どのような役割を果たしたのかは不明です。しかし上記の仮説が正しいとすれば、その「輩」がどのような立場の人物/法人であったかはもうおわかりの筈ですので、ここから先は皆さまの想像力にお任せしたいと思います。

再開発のマジック?
(私たちが推測する不自然な登記の全体像)

事実関係が不明なため、あくまでも推測となりますが、皆さまからの様々なご意見も踏まえて導き出した推論は、

「合意形成」に悩む再開発業者側が、
多くの地権者を対象に、一時的とは言え
彼らの土地が登記簿上増えた形をとらせ、
その増加分を「従前評価」へ加味する見返りに
彼ら(地権者)から再開発への同意を取り付けた

と言うシナリオです。

まとめ

今回の件に関して真相は今も謎に包まれたままです。
仮に解明できたとしても、再開発事業者側が果たしてどこまで素直に真実を認めるかは未知数です。
しかし如何なる理由があろうと、再開発(第一種市街地再開発事業)は市民の税金まで投入して進める極めて公共性の高い事業ですから、当然、再開発事業者側には「公平」、「公正」、且つ「透明性」をもって事業を推進する責任があります。(注1)
万が一にも、世間から「買収工作」「偽装工作」などと疑われることがあってはなりませんし、もしそのような疑念が生じた場合には、再開発事業者側には説明責任があります。まさにこれこそがデベロッパーの役割であり責務だと言えます。

(注1)現在、三田小山町のデベロッパーと接点のある某地区の住民団体が別途デベロッパー側へ問い合わせを行っています。
彼らがどのような回答を行うのか? 彼らは果たしてどこまで真実を語るのか? 私たちも注視しているところです。

一方、地権者は百戦錬磨のデベロッパーとは異なり、素人の集まりですから単独で調査するにはどうしても限界があります。
しかし、地権者側にも日頃からできることがあります。
それは「不審な土地取引」を察知したら、迷わず法務局へ行き「登記簿謄本」で登記内容を確認する習慣を身に付けることです。(注2) この習慣は業者側が水面下で行う土地の「地上げ」「細切れ分筆」などをいち早く察知するためにも有効です。

(注2)「登記簿謄本」は最寄りの法務局事務所にて1通600円誰でも取得可能です。「オンライン申請」や「閲覧のみ」であれば費用は更に安く上がります。疑念のある土地に関しては、定期的に「登記簿」を取得し内容を確認することをお勧めします。

もし不自然な記載等があれば、デベロッパー側へ質問状を送り、必ず書面で回答を貰うこと。(口頭による説明はNGです!)
そして自身で「理解」し「納得」しない限り、決して再開発には同意しないことが肝要です。
地権者が協力してこれらの点を実践すれば、不透明な土地取引も無くなり、地権者が真に主体となる再開発の実現に向けて一歩前進するのではないでしょうか?

【事務局からのお知らせ】
今回の現場である「三田小山町西地区」を2023年1月1日に撮影したYouTube動画がありますのでご覧下さい。
元日だと言うのに街の賑わいは無く、現場はゴーストタウン化しています。この街に再び賑わいが戻ることを願うばかりです。

https://www.youtube.com/watch?v=Nh2HT7XjCOc

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