本トピックスは(203)えっ?この「土地登記簿」は何だ!? 並びに(204)この「土地登記簿」は何だ?(続編)からの続きです。
実は都内の地権者団体が三菱地所レジデンスへ質問状を送っていた!
不可解な登記簿が発見された現場は東京都港区内に位置する三田小山町西地区市街地再開発事業。
ここは三井不動産や三菱地所レジデンスをはじめとする再開発事業者計4社が共同で進める木密住宅街の再開発事業です。
たまたま三菱地所レジデンスの計画区域内にある都内某地区の地権者団体が「不可解な登記簿」を目にし、再開発への一抹の不安を覚えたことから、同団体は「三田小山町で一体何があったのか知りたい」として三菱地所レジデンス・代表取締役社長宛に質問状を送付していました。
その三菱から回答書が届いた!しかし中身は…
先ずは三菱地所レジデンスから届いた
回答書(添付)を良くご覧ください!
この回答書。なんだか不自然だと思いませんか?
よく見ると誰が作成したのかがわからない。まるで怪文書です。
「担当部局名」や「担当者名」が記載されていない!
これでは一体どこの誰が担当窓口なのかが全く不明。
2. 上記と同様、回答書には「社印」や「職印」も無い!
これでは真に三菱地所レジデンス発行の回答書なのかも判断できない。
3. 更に、回答書は郵送ではなく、何者かにより団体代表者宅の郵便受けへ投函されていた。
4. 因みに、回答の中身は「自分たちには関係ない」と言うものであった。
中身の無い回答内容にもかかわらず、なぜこれほどまでに手の込んだ細工だらけの「回答書」を発行してきたのか?
ここが最初の疑問点です。
「不可解な登記簿謄本」に加え、「怪文書」まで届けられたとなると、私たちはどうしても「裏に何かがある」、「三菱地所レジデンスは何かを隠そうとしている」などと勘ぐってしまいます。
回答書にはまだまだ続きがあった!
次に驚いたのは、回答書が投函された直後から三菱地所レジデンスの現場担当社員が団体代表宅へ電話をかけてくるようになり、「一度お会いして説明したい」との連絡が入りはじめたことです。ますます「表に出せない何かがある」のではと勘繰ってしまいます。
「一度会って説明をしたい」は業者の手口!
誰が発行したかもわからない無礼な怪文書を送り付けておきながら、三菱の社員は何事も無かったかのように相手に対して「一度会ってお話ししたい」と誘ってきた。まさに不可解です!
私たちの経験則では、これは「書面には残したくない不都合な状況」が存在する際に再開発業者が好んで使う手口です。
地権者はこの手口に乗せられてはいけません!
一般に再開発業者は都合の悪い話は「口頭」で処理しようとし、「書面」で残そうとはしません。とりわけ世間から「買収工作」や「偽装工作」が疑われるような場面ではそうです。
都合の悪い話を口頭でしたがるのは彼らの手口です!
口頭であれば、たとえ地権者側との話し合いが決裂したとしても、彼らは「会って話をした」と言うその事実を以て「説明は尽くした」、「一定の理解は得られた」などと一方的に作文し、勝手に自社に有利な形で行政などと話を進めてしまう懸念があります。油断していると「問題の幕引き」までされてしまうので要注意です。
再開発業者は百戦錬磨のプロ集団ですから、あとで「言った、言わない」の水掛け論となった場合、証拠を提示できない地権者側に勝ち目はありません。従い、
業者との取り決めは書面に残すことが鉄則です!
事業者側の「口約束」は実行されないことが多いと言う現実を、地権者の皆さんはどうか肝に銘じてください。実行できるならすぐにでも実行している筈で、それが出来ないから「口約束」でその場を切り抜けると言うのが業者の手口ですのでご注意ください。
三菱の「回答の中身」や「対応」には問題が満載!
【問題点①】
自社で調査しようともせず、最初から頭ごなしに「個人の問題だから三菱は関係ない」などと回答した三菱は、地権者の心情を理解しようともしないデベロッパーらしからぬ対応だと言わざるを得ません。これでは地権者から信頼を得ることなど困難です。
【問題点②】
三菱は「個人の権利に関る問題」だと強調するが、実際、登記簿謄本では42名全員の住所氏名が公開されており、しかも権利者欄の最後は「再開発組合」名義で終わっている。再開発を行うにあたり、業者が個々の物件の過去の登記実態を詳しく調べるのは当たり前の行為であり、再開発組合と密接な関係にある三菱地所レジデンスが状況を知らない筈はありません。
仮に知らなかったとしても三菱の立場を以て簡単に調べられた筈です。従い、調べることさえ怠った三菱には「不作為」があったと見做さざるを得ません。これでは地権者から信頼を得ることは出来ません。
【問題点③】
そもそも質問者が三菱に求めた真意は「個人の権利関係の調査」などではなく、「なぜ42名もの共有者が1か月間のみ土地の所有者になり得たのか」と言う、その登記上の「仕組み」についてです。実際に「多人数による期間限定の共有」が三田小山町で登記簿上行われたのですから、同様の処理は全国どこでも起き得る筈であり、大手不動産業者である三菱地所レジデンスがその仕組みを説明できない訳がありません。地権者の信頼を得るためにも三菱は常に地権者側の心情を汲み取った上で「丁寧な説明」を心がけるべきです。
まとめ
【怪文書について】
「怪文書」とは事実上の匿名の文書、即ち内容や発行者等に不明な点がある文書のことを言います。この定義からすれば、三菱レジデンスの「回答書」は、まさに「怪文書」そのものです。
業界の頂点に位置する一流不動産企業の行う行為ではありません。もしこれが同社社長からの回答だったとなれば大問題です。残念ながら、今回の怪文書の発行は世間に対して「三菱は何かを隠している」と思わせてしまいました。「企業広報」の観点からも極めてまずい対応だったと言わざるを得ません。
【回答の中身について】
「回答書」の中身を見ても、自ら調べようともせず、頭ごなしに「個人の問題であり、自分たちには関係ない」とした三菱の対応は問題です。質問の趣旨は、不自然な登記が再開発業者側による「買収」や「偽装」の一環として行われたものではないか?
そして質問者の再開発区域も三菱地所レジデンスが関与している以上、何れ同じことが質問者の地区でも起きるのではないかと危惧している点にあります。再開発はあくまでも「地権者が主体」で進める事業である以上、三菱はしっかりと地権者側の「不安心理」を理解した上で対応を行うべきでした。
【三菱の果たすべき責任】
三菱地所レジデンスにはデベロッパーとして地権者に対する説明責任があります。
もし再開発事業が決して地権者の不利益にはならないとの確証があるのであれば、三菱地所レジデンスは地権者からのあらゆる質問や疑問に答え、それらを抽象的な形ではなく、具体的に書面の形にて丁寧に回答すべきです。
まさにこれこそがデベロッパーの役割であり責務ではないでしょうか? これを実践しない限り、デベロッパーは地権者から信頼を得ることは出来ません。