TOP_Topics 再開発、ここに注意

(36)突然の経済危機が

投稿日:

1.突如発生した不測の事態

2020年に入り、突如として発生した新型コロナウィルスの感染拡大はまたたく間に世界中へと広がり、いまや各国政府が「国境封鎖」、「都市閉鎖」、「外出禁止」と言った措置を次々と打ち出し、世界的規模で「人・もの・金」の流れが停滞し経済活動が大打撃を受けはじめています。(3月末現在)
しかも感染の拡大は今も続いており、収束の見通しすら立っていません。
この影響で長い間続いた好調な経済も一気に不況へと逆回転をしはじめ、実体経済の悪化は「リーマンショック」や「バブル崩壊」以上だと論じる専門家も出てきました。あろうことか経済は瞬時にして危機的状況に陥ってしまいました。

2.再開発事業への影響

このことは経済の安定成長を前提に計画されてきた「再開発事業」に赤信号が灯り始めたことを意味します。
更に、今回は再開発にとり逆風となりかねない「従業員の働き方改革」をも伴うため、事業者による計画見直しはもはや待ったなしの感があります。

最近、感染防止を目的にテレワーク(在宅勤務)と言う新しい勤務形態が多くの企業で実行に移され、人々の働き方が多様化してきました。
テレワークが普及すれば、都心の大規模オフィスビルへの需要は減少します。
在宅勤務者の増加は、賃貸床面積の減少をもたらし空室率が高まります。
また今後は景気も悪化することからオフィス賃貸料の値崩れも想定されますが、
これらはすべて再開発事業の収益性にはマイナスに作用します。

住友不動産は22年3月期までの「3カ年中期経営計画」において、賃貸ビルへの投資を継続し、延床面積の増大を通じ最高益更新を目指すとしています。
しかし経済成長が終焉した今、その達成はほぼ不可能だと市場も認識しはじめたのか、東証での住友不動産の株価は3/31までの直近45日間で38%も下落しています。その間の日経平均株価の下落率は20%でしたから、不動産業(=再開発事業)の脆弱さへの懸念が市場で先取りされたと見ることもできます。

再開発事業は1,000億円規模の事業投資を必要とするプロジェクトなだけに、経済の持続的成長が見込めない地域へ投資しても期待収益を上げることはできません。無理してこれを行おうとすれば事業コストの削減が徹底強化され、結局はコストの一部である地権者の資産が犠牲となりかねません。これを防ぐには、地権者もこれからは自己の資産を決して事業者や他人任せにせず、自分自身で守って行く覚悟が必要です。

さて、たとえ感染の終息宣言が出されたとしても、一度分断された経済活動の立て直しは決して容易ではありませんし、また需要の回復には相当の時間も要します。
結局のところ再開発は経済の持続的成長があってこそ成り立つ事業であったような気がしてなりません。
今後事業者側がこの緊急事態をどのように捉え、そしてどのような方針を出して来るのかに注目して行きたいと思います。

-TOP_Topics, 再開発、ここに注意

関連記事

(27) 準備組合は謎だらけ(その1)

泉岳寺で再開発の勧誘にやって来る住友不動産の社員に対して地権者が不満や要望を投げかけると、「私たちは事業協力者です。実際の事業者は地権者の皆さまで構成される準備組合です」などと切りかえされ、正面から取 …

(37)危機への備え(同意書は大丈夫か?)

1.突然の危機と再開発事業のゆくえ 突如として発生した新型コロナウィルスの感染拡大はまたたく間に世界へ波及し、いまや「人・もの・金」の流れも停滞して経済に大きな打撃となり、好調だった経済も一気に不況へ …

(243)住友不動産は泉岳寺での活動を停止か?

住友不動産が泉岳寺で再開発への勧誘活動を開始してから既に7年となります。 その間に多くの問題が表面化し、結局、地権者の合意形成には至りませんでした。その様な状況も影響してか住友不動産の動きは表面上は停 …

(19)「再開発」以外の選択肢

2019年9月2日付日本経済新聞に「マンション 中古が主役」と言う見出しで記事が掲載されました。 首都圏では新築マンションの成約件数よりも、中古物件(特に駅近の物件)の成約件数が3年連続で上回ったと言 …

(244)再開発業者の「死んだふり」にはご注意あれ!

泉岳寺地区では住友不動産が7年間続けた勧誘活動を表向きは停止したようです。 再開発の前提となる「地権者の同意」が集まらないのですから当然だと言えます。 しかしそのような場合、一部の再開発業者は、表面上 …