1.突如発生した不測の事態
2020年に入り、突如として発生した新型コロナウィルスの感染拡大はまたたく間に世界中へと広がり、いまや各国政府が「国境封鎖」、「都市閉鎖」、「外出禁止」と言った措置を次々と打ち出し、世界的規模で「人・もの・金」の流れが停滞し経済活動が大打撃を受けはじめています。(3月末現在)
しかも感染の拡大は今も続いており、収束の見通しすら立っていません。
この影響で長い間続いた好調な経済も一気に不況へと逆回転をしはじめ、実体経済の悪化は「リーマンショック」や「バブル崩壊」以上だと論じる専門家も出てきました。あろうことか経済は瞬時にして危機的状況に陥ってしまいました。
2.再開発事業への影響
このことは経済の安定成長を前提に計画されてきた「再開発事業」に赤信号が灯り始めたことを意味します。
更に、今回は再開発にとり逆風となりかねない「従業員の働き方改革」をも伴うため、事業者による計画見直しはもはや待ったなしの感があります。
最近、感染防止を目的にテレワーク(在宅勤務)と言う新しい勤務形態が多くの企業で実行に移され、人々の働き方が多様化してきました。
テレワークが普及すれば、都心の大規模オフィスビルへの需要は減少します。
在宅勤務者の増加は、賃貸床面積の減少をもたらし空室率が高まります。
また今後は景気も悪化することからオフィス賃貸料の値崩れも想定されますが、
これらはすべて再開発事業の収益性にはマイナスに作用します。
住友不動産は22年3月期までの「3カ年中期経営計画」において、賃貸ビルへの投資を継続し、延床面積の増大を通じ最高益更新を目指すとしています。
しかし経済成長が終焉した今、その達成はほぼ不可能だと市場も認識しはじめたのか、東証での住友不動産の株価は3/31までの直近45日間で38%も下落しています。その間の日経平均株価の下落率は20%でしたから、不動産業(=再開発事業)の脆弱さへの懸念が市場で先取りされたと見ることもできます。
再開発事業は1,000億円規模の事業投資を必要とするプロジェクトなだけに、経済の持続的成長が見込めない地域へ投資しても期待収益を上げることはできません。無理してこれを行おうとすれば事業コストの削減が徹底強化され、結局はコストの一部である地権者の資産が犠牲となりかねません。これを防ぐには、地権者もこれからは自己の資産を決して事業者や他人任せにせず、自分自身で守って行く覚悟が必要です。
さて、たとえ感染の終息宣言が出されたとしても、一度分断された経済活動の立て直しは決して容易ではありませんし、また需要の回復には相当の時間も要します。
結局のところ再開発は経済の持続的成長があってこそ成り立つ事業であったような気がしてなりません。
今後事業者側がこの緊急事態をどのように捉え、そしてどのような方針を出して来るのかに注目して行きたいと思います。