多くの泉岳寺周辺地区の地権者にとり、事業者との出会いは、「ある日、突然自分たちの大切な資産が再開発予定区域に指定されたことを知り、計画の背後に事業者として住友不動産がいることを聞かされた」ときが始まりです。
事の発端は2014年に泉岳寺の山門横に突如として持ち上がった「8階建てマンション建設計画」でした。仲見世街の住民を中心に「景観を損ねる」等の理由で「建設反対運動」が展開され、そのさなかの2015年にこの事業者が地元へ入って来たのです。
彼らは仲見世街の住民に対し、マンションは事業者が買い取った上で取り壊すので、その見返りとして再開発を行うための地域での橋渡しの協力をお願いしたいと提案。「取り壊す!」との提案に仲見世街の一部住民がこれに応じたことから再開発構想がスタートしたのです。
結局、8階建てマンションは完成してしまい、今も堂々と山門横にそびえ建ったままです。
ところで事業者が再開発への協力を取り付けたと言っても、それは泉岳寺山門の内側にある仲見世街の一部の地権者のみであり、その数はせいぜい3~4人であったと推測されます。
つまり、再開発の話は仲見世街と言う狭い区域の中で、且つ少人数でのみ進められていたことになります。
もし事業者が「仲見世街を再開発したい」と言うのであればなんら問題は無かった筈です。しかし、事業者はこの機に乗じて山門の外側の国道15号線に至るまでの広範な地域を一方的に再開発区域として囲ってしまったのです。
それも本来やるべき地域住民との事前協議や了解の取りつけを行わずに。
ここに再開発計画が進まない理由の一つがあります。
この結果、山門外側に住む約250名もの地権者の多くが、ある日突然、自宅が再開発区域に指定されたことを知らされ、驚きとともに反発する地権者が続出して今日に至っています。
日本は「根回し社会」です。地域住民の事前了解も得ずに再開発を進めようとしても進むわけがありません。
他地域の再開発事業をみると、再開発を前提とした「街づくり協議会」と言った「地域住民の意向をふまえた事前協議の場」が設けられるのが常のようです。しかし当地区ではそのような「街づくり協議会」が開かれることは無く、いきなり再開発区域の線引きが行われてしまったと言うのが実情のようです。
(仮に「街づくり協議会」が開かれていたとしても、それは山門内側の6軒の仲見世街で再開発とは関係ないマンション問題を中心に行われていたにすぎず、山門外側の約250人の地権者は蚊帳の外に置かれていたことになります)
【今後の見通し?】
今後どう推移して行くかはわかりません。事業者側の対応次第だからです。
本来であればここは事業者が一旦すべてをリセットし、今度こそは周辺住民全員を対象とした「街づくり協議会」を開催し、そこで区域の線引き問題も含め、住民の意向が反映される形での事前の協議をゼロから行うべきです。
何の事前協議や合意も無きまま、勝手に住民の土地を再開発区域として線引きしてしまったのですから、このままでは話はまとまりません。
しかし事業者も強引ですから、リセットの意思は今のところ見られません。
その様な状況を危惧した地権者が遂に再開発から「離脱」する動きも始まりました。既に権利率で全体の15%にあたる地権者が離脱を表明し行政へも届け出ました。「離脱」は事業者との「絶縁」を意味します。事業者はもはや離脱者と連絡をとることも出来ません。離脱者の土地も含めて再開発を強行しようとすれば訴訟提起となります。ここまで話がこじれるとは事業者も思っていなかったのではないでしょうか?
さて、今後どのように推移して行くのか?それは事業側の対応次第です。
引き続き当サイトにて実況中継して参ります。