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(238)三菱地所は事業費増でも「激安床単価」に固執か?!

投稿日:2024年11月5日

そんなことをされたら地権者は大損しかねません!

前トピックス(237)事業費高騰で「地権者」は大ピンチ!では、事業費高騰下で保留床単価が据え置かれると地権者は損することを検証しました。ましてやそれが「激安保留床単価」であれば地権者は大損します!
残念ながら、三菱地所は事業費高騰下においても「激安保留床単価」に固執(=自社利益を最優先)しようとする姿勢が、「芝三丁目西地区」の再開発計画で垣間見えてしまいました。
本トピックスではその顛末を皆さまへお伝えします。(注1)

(注1) この地区の再開発計画に関与するのは、三菱地所(株)三菱地所レジデンス(株)、並びに三菱系(株)丸の内よろずの3社です。
この内、中心的役割を担っているのは三菱地所レジデンス(株)ですが、同社は、三菱地所(株)の100%出資子会社であり、役員や部長職以上の多くが親会社である三菱地所からの出向者や転籍者で占められていることから、当HPでは両社を一体と考え、「三菱」または「三菱地所」と呼ぶことがありますので予めお含み置き願います。
Contents
1.三菱地所の莫大な「含み益」が地権者へ与える悪影響
2.「芝三丁目西地区」で三菱はぼろ儲けを画策?
3.再開発業者の「開発利益独占」のカラクリ
4.まとめ

三菱地所の莫大な「含み益」が地権者へ与える悪影響

先ずは、過去のトピックスのレビューです。
1.(229)港区でも再開発業者の「ぼろ儲け」が発覚か?(検証編)では、

三菱地所側が芝三丁目の再開発で
1,850億円もの「含み益」を得る

試算結果が出たことを報じました。

2.(230)再開発業者の莫大な「含み益」を日経新聞も報道!では、
日本経済新聞も不動産大手が得る莫大な「含み益」に言及し、とりわけ

三菱地所は昨年、業界最大の
4兆8,499億円もの「含み益」を得た

と記事は報じています。

3.(237)事業費高騰で「地権者」は大ピンチ!では、
再開発業者の「ぼろ儲け」の源泉は、彼らが巧みに設定する「激安保留床単価」にあることを報じ、昨今の事業費高騰にも関わらず、

業者側が「激安保留床単価」に固執すれば
地権者の「還元率」は大きく下がり損をする

ことを検証しました。

「芝三丁目西地区」で三菱はぼろ儲けを画策?


さて、今回取り上げる現場は、東京タワーまで僅か1kmと言う都心の超一等地に位置する「芝三丁目西地区」。(現在は準備組合段階)
近隣タワマンの分譲相場が中古でも坪1,000万円を軽く超える土地柄です。その様な好立地にもかかわらず三菱地所が2021年11月に地権者へ配布した資料には

という激安単価が記載されていました。(注2)

(注2) 再開発では事業費の不足分を業者側が「保留床処分金」の形で支払い、その対価として保留床を獲得する仕組みですが、保留床処分金の額は一定ですから、「保留床単価」が低いと保留床面積は増え業者は得をする反面、権利床面積は減るので地権者の取り分は減ります。
当然、業者側は「保留床単価」を極力低く設定しようとしますので、果たしてその単価が妥当なのかを地権者は常に注視しておく必要があります。

近隣相場を大きく下回る「激安保留床単価」に危惧を抱いた地元地権者団体が、過去に三菱側が提示した各種数字を集めて試算を行ったところ、三菱側が竣工と同時に1,850億円もの「含み益」を得る試算結果が出たことから、地権者側は三菱地所に対し最新の事業計画数字を開示するよう要求していました。しかし残念ながら三菱側は本年3月に「今は出せない」として要求を拒絶しています。ところが、最近(2024年10月)準備組合名で配布された彼らの資料を読むと、その一角において再び

なる数字を載せてきたのです!2021年時点の数字だとの断り文があるとは言え「保留床単価440万円/坪」を掲載したページには、
①  「これまでのおさらい」だとした上で、
②  「タワマンの高額な市場取引価格を踏まえた保留床価格」であり、
③  「事業パートナーが高価格で一般に売却できる評価額」
などと、あたかも「激安保留床単価」が正当であるかの「但し書き」が付記されていたのです!
もしこの記述に対し地権者側から積極的な反論が出て来なければ、その事実を以て三菱側はこれを正当化(=既成事実化)しかねず、極めて狡猾なやり方だと見ることもできます。(注3)

(注3)
①  「これまでのおさらい」などと資料へ書き込むことで、あたかも地権者が激安保留床単価に以前から納得していたかの印象操作を行い、これを既成事実化してしまおうとする三菱側の意図が垣間見えます。
②  「タワマンの市場価格を踏まえた保留床価格」は、三菱自身が過去に近隣のタワマンだとして言及した「白金ザスカイ」の分譲相場を調べて頂ければ、これが事実ではないことが即座にわかります。
③  「事業パートナーが高価格で一般に売却できる評価額」における
「事業パートナー」とは保留床を購入する「参加組合員」のことであり、それはまさにその地位を目指す「三菱地所」のことだと考えられます。つまり、これは「三菱が高価格で大儲けできる激安の評価額」だと読み替えることも可能です。地権者には容認できない記述です。

おそらく三菱地所側は440万円/坪と言う「激安保留床単価」を正面から正論を以て地権者へ説明することが出来ないのでしょう。 (当然です!)
そこで「但し書き」を付けることで、440万円/坪を基本とした「激安保留床単価」の採用を正当化させようとする彼らの意図が透けて見えます。
その一方で、三菱地所は地権者が再開発の是非を判断する際に必要となる「事業計画数字」を、地権者の要求にも関わらず開示しません。

このように地権者へは情報を与えぬ一方で、配布資料の片隅に「激安保留床単価」の数字をそれとなく書き込み、知らぬ間にそれを既成事実化してしまおうとする三菱側のやり方は極めて狡猾であり、まさにそれは

地権者との信頼関係を著しく損ねる行為

だと言えます。

近隣の分譲相場が1,000万円/坪を超えているのに
その半値以下で床を獲得しようとする三菱地所!
三菱に従えば、地権者は大損をしかねません!(注4)

(注4) 三菱地所が大儲けするカラクリについては、(229)港区でも再開発業者の「ぼろ儲け」が発覚か?(検証編)で詳しく説明していますので是非ご覧ください。

これほど地権者を見下したやり方はない!

と言えるのではないでしょうか?少なくとも地権者の目にはそう映ります。
地権者を犠牲にしてでも「激安保留床単価」を押し通すことで、開発利益を独占しようとする三菱地所の意図が垣間見えてしまった感があります。

再開発業者の「開発利益独占」のカラクリ

住友不動産や三菱地所をはじめとする一部の再開発業者は、初期段階から「事業協力者」として準備組合内部へ入り込み、「事務局業務」を一手に担うことでいち早く知識に疎い地元理事たちを従え、内部での主導権を握ろうとします。そして表では地権者側に寄り添う姿勢を見せつつも、裏ではしっかりと自社の息のかかったコンサルや不動産鑑定士を起用しながら開発利益を独占する仕組みを内部から構築して行くのが彼らの手法だと考えられます。
そしてその過程で彼らが特に注力するのが、後日彼らが「参加組合員」として地権者から保留床を購入する際に適用される保留床単価を「激安水準に設定」すること、並びにその「既成事実化」だと言えます。
前述した通り、保留床単価が激安であればあるほど保留床面積は増え、彼らの「含み益」(=開発利益)が増えて行く仕組みだからです。
しかしその一方で、権利床面積はその分だけ減って行き地権者は損をすることを忘れてはなりません。

「事業協力者」を語り、地権者側に長年寄り添って来た筈の再開発業者。その業者が、再開発の終盤では

地権者とは利益相反関係にある「参加組合員」

の姿に変貌し、自らが「事業協力者」時代に構築した様々な仕掛けを使い「莫大な含み益」を得ようとするのですから地権者はたまりません。
地権者はいち早くこの不合理な仕組みに気付く必要があります。

まとめ

昨今の事業費高騰下で「保留床単価」が据え置かれると権利床面積は減り、地権者は損をすることになります。ましてや近隣相場の半値と言った「激安保留床単価」が据え置かれた場合、地権者は大損をしかねません。

「芝三丁目西地区」では、三菱地所が3年前に地権者へ提示した「激安保留床単価」を事業費高騰の今も据え置こうとする思惑が、彼らが最近(2024年10月に)地権者へ配布した資料から垣間見えてしまいました。
三菱側は地権者に対し、客観的な数字や根拠を提示しないまま、彼らが配布した膨大な資料の一角にそれとなく「440万円/坪」と言う激安単価を掲載するといった狡猾な手法を用いてきました。
たとえそれが3年前の数字だったとしても、440万円/坪と言う「激安保留床単価」を、あたかもそれが正当であるかの「但し書き」までつけて再掲載したのですから、この三菱のやり方を見過ごすわけにはいきません。
もし地権者からの反論がなければ、その事実を以て資料に記載された「激安保留床単価」が既成事実化されかねないからです。
三菱地所側が資料内で「これまでのおさらい」なる言葉を使っていることからも、その懸念は高いと推測されます。地権者は要注意です!

この様な状況下では、地権者側は「激安保留床単価問題」が解消されるまでは、三菱地所側との一切の対話を拒絶するのも良いかもしれません。
地権者が自らの土地資産を守るためには「聞く耳を持たない」ことも時には必要です!(注5) 拒絶されて困るのは三菱側です。地権者ではありません。

(注5) 「都市計画決定」を経て再開発事業が行政により正式に認知されるまでは、「準備組合」は単なる任意団体に過ぎませんし、また再開発業者も単なる民間の不動産業者に過ぎません。従い、地権者はこれらの団体や企業と対話する義務など実はないのです。行政もこのことを確認しています。多くの地権者はこの事実を知らない可能性があります。

三菱地所の問題点は、彼らが地権者からの質問や要望に答えようとしない一方で、「激安保留床単価」をそれとなく既成事実化してしまおうとするその狡猾なやり方にあります。
再開発の主体は地権者であることを無視した極めて乱暴なやり方です。

もし再開発が地権者の利益になると言うのなら、
住民の疑問や要望に率直に答え、
抽象的な形ではなく具体的に書面で回答する!

これこそが再開発デベロッパーとしての重要な役割であり責務です。
残念ながら、三菱地所は住友不動産と同様に、この点において再開発業者としての責務を果たしているとは言い難い状況にあります!

三菱地所は基本に立ち返り、地権者は事業主体であり、且つ対等な交渉相手であることを再認識した上で、公平、公正、且つ透明性を持った形で再開発事業の提案を行って行くべきではないでしょうか?
地権者だけでなく、社会も三菱地所の行動に注目しはじめています!

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