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(239)業者が行う「権利変換説明」にはご注意あれ!

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左上の「吹き出し」は、実際に三菱地所(注1)が「芝三丁目西地区」の地権者たちに向け行った権利変換の説明です。
「お返しする」と言う言葉には「地権者が再開発の主体である」ことを軽視する再開発業者の本音が表れていると言っても過言ではありません。
これは業者が仕掛ける「落とし穴」の一つであり、彼らのこの論法に従えば地権者は大損しかねません。本トピックスではなぜ地権者が損することになるのか?その理由を具体的に数字を使って説明して参ります。
(尚、本トピックスは(229)港区でも再開発業者の「ぼろ儲け」が発覚か?(検証編)の続きとしてお読み頂くと内容がより理解しやすくなります。)

(注1) この地区で再開発に関与するのは、三菱地所(株)三菱地所レジデンス(株)、並びに三菱系(株)丸の内よろずの3社です。
この内、中心的役割を担っているのは三菱地所レジデンス(株)ですが、同社は、三菱地所(株)の100%出資子会社であることから、当HPでは両社を一体と考え、「三菱」または「三菱地所」と呼ぶことがあります。
Contents
1.三菱が地権者へ床を「お返しする」
2.「お返しする」の真意は「地権者は等価交換して終わり」!
3.三菱の真意を「権利変換イメージ図」から読み解く
4.これが近隣地区の実勢相場だ!
5.まとめ

三菱が地権者へ床を「お返しする」

そもそも再開発(第一種市街地再開発事業)は地権者が「主体」となり自ら「事業リスク」まで引き受けながら進めて行く「街づくり」です。
事業主体はあくまでも地元地権者であり三菱地所ではありません!
従い、地権者が事業主体でもない先から床を「返して貰う」筋合いなど全くありません。

また再開発は、再開発施設の一部(=保留床)を地権者側が再開発業者(=参加組合員)へ売却することで事業費の不足分を賄う仕組みですから、最初に決まるのが保留床の処分額と面積であり、保留床を除いた残りの床が自動的に「権利床」として決まることになります。
地権者は決して権利床を業者から「返して貰う」のではありません。

三菱地所が権利変換説明で仕掛けた「落とし穴」は以下の2点です。
1.「保留床」と「権利床」を決める順番を敢えて逆にしたこと、
2.権利床は三菱が「お返しする」ものだとの印象操作を試みたこと、

どうやら彼らには

先に権利床面積を三菱主導で決めてしまおう

との思惑があるように見受けられますので地権者は要注意です。(注2)

(注2)再開発業者が順番を逆にしようとするのには理由があります。
彼らが恐れるのは地権者の関心が保留床に向かい「激安保留床単価」が公の場で問題視されることです。このため、彼らは地権者の関心を権利床に向けさせると共に、地権者側が知識に疎いことに乗じて、あたかも自分たちが「主」で地権者たちが「従」であるかの如くふるまい、権利床は再開発業者が地権者へ「お返し」するものだとの印象操作を行うことで、地権者に「激安保留床単価」のカラクリを気付かれる前に地権者の権利床面積を確定させてしまおうとするのだと考えられます。
先に権利床を確定してしまえば、残りの床は自動的に保留床となるので、地権者から「激安保留床単価」の矛盾を指摘される心配もなくなり、労せずして莫大な額の開発利益を独占できると言う業者側の算段です。

「お返しする」の真意は「地権者は等価交換して終わり」

「お返しする」と説明したからには、三菱側は地権者に「権利床は返して貰うものだ」と思い込んで貰う必要があります。
そのように地権者を仕向ける巧妙な仕掛けが、三菱が地権者へ配布した以下の「権利変換イメージ図」に見られますのでご紹介します。
(尚、図内の赤色の点線部分は当HP側が説明用に引いたものです)


この資料では、権利床単価が保留床単価より大幅に低く設定されている点にご注目ください。そうすることで三菱地所は地権者に「権利床単価は低いほうが得だ」と思い込ませ、地権者側に恩を売った上で、下段では「従前評価に対してお返しする床面積を算出している」と締めくくっています。
しかし、実際にはこのやり方で地権者が「得をする」ことはありません。
なぜなら、権利床面積に影響を与えるのは、「権利床単価」の低さではなく、三菱(=参加組合員)が床を購入する際の「保留床単価」だからです。
三菱地所はこの部分の説明をみごとに避けています。
結局、三菱の言う「お返しする」の真意は「地権者は等価交換して終わり」(即ち、開発利益は三菱が総取り)であり、激安保留床単価が問題視される前に権利床を決めてしまおうとする彼らの思惑が垣間見えます。

三菱の真意を「権利変換イメージ図」から読み解く

結論を先に言うと上記のイメージ図は、

三菱が440万円/坪という「激安保留床単価」を
正当化する目的で作成したイメージ図

だと見ることが出来ます。また「激安保留床単価」は三菱地所による「開発利益の総取り」を意味しますから、同時に

開発利益は三菱が独占し、地権者は等価交換して終わり

であることも併せて正当化しようとしたイメージ図だと考えられます。
当然、地権者としては受け入れることの出来ない内容です。

先ず注目すべきは、権利床単価(270万円)が保留床単価(440万円)よりも大幅に低く設定されている点です。これは地権者が「得をした」ような錯覚に陥る効果を狙った「落とし穴」だと考えられます。(注3)

(注3) 例えば、従前評価額5,000万円の地権者が得る権利床面積は、
[単価440万円の場合]: 5,000万円÷440万円=11.36坪ですが、
[単価270万円の場合]: 5,000万円÷270万円=18.52坪となるので
両者を比較して地権者は「得をした」と思い込みがちです。

もう少し詳しく見て行きます。三菱が配布した「権利変換イメージ図」では、再開発施設(タワマン)の価格1,930億円に対し、施設の総床面積は166,000㎡(=50,303坪)ですから、平均床単価は約380万円です。

1,930億円÷50,303坪=約380万円/坪

これに対し資料では保留床単価を約440万円へ引き上げる一方で、権利床単価は約270万円と低く設定していますから、一般の地権者にしてみれば、「三菱地所は良心的だ!自分たちの権利床単価をこんなに安く設定してくれている」などと誤解しがちです。
これは「地権者は保留床よりも自己の土地資産に関る権利床に対してより強い関心を示す」と言った地権者心理を逆手に取った手法だと言えますので、地権者の皆さまはこの「落とし穴」にはお気をつけください。

実際には地権者が三菱のこのやり方で「得をする」ことはありません。
なぜなら、権利床面積に影響を与えるのは、実は「権利床単価」ではなく、三菱が設定する「保留床単価」だからです。(注4)

(注4) ここは再開発業者が地権者に語りたがらない大変重要なポイントですので、地権者の皆さまはぜひ忘れぬようご記憶ください!

三菱地所が「権利変換イメージ図」の中で設定した440万円/坪と言った保留床単価は、近隣地区のタワマン実勢相場の半値以下と言った激安保留床単価であることにもご注目ください。
資料には「現時点での想定価格」だとの但し書きはあるものの、2021年に続き2024年にも440万円/坪なる激安保留床単価が記された資料を再度配布していることから、三菱側にはなんとしてでも「激安保留床単価」を既成事実化させ莫大な「含み益」を得たいと言う強い意思が伺えます。
近隣相場を無視した「激安保留床単価」が設定されれば、それこそ開発利益のすべてを三菱地所に吸い取られてしまい、地権者は「期待利益の逸失」と言う形で損をしますのでご注意ください。(注5)

(注5) 地元地権者団体は、三菱地所が事業費1,500億円の再開発で1,850億円もの「含み益」(=開発利益)を出すとの試算結果を纏めており、地権者への利益配分が無いことから不公平だとして三菱地所の企業姿勢を問題視しています。また日本経済新聞も2024年8月22日付朝刊で、三菱地所は2023年に業界最大の4兆8,499億円もの「含み益」を得たと報じ、地元地権者団体のこの主張をサポートした形となっています。

これが近隣地区の実勢相場だ!

(2024.11.18現在)

最後に近隣地区(約1km圏内)のタワマンの実勢相場を掲載します。
この地区は都内でも有数の「超一等地」で、タワマンの分譲相場は今も値上がりが続いており、直近では中低層階でも坪単価3,000万円台と言った値がつき始めています。もし三菱地所が440万円/坪(或いはそれに準じた激安単価水準)で床を購入すれば、彼らにどれだけ莫大な開発利益が転がり込むのかを想像してみてください。

仮に、三菱地所が竣工と同時に440万円/坪で仕入れた保留床面積109,000㎡(=33,030坪)のすべてを1,000万円/坪で売却した場合

三菱地所の粗利はなんと1,850億円

との試算結果となります!
その計算式は次の通りです。

仮に、三菱地所が保留床のすべてを1,500万円/坪で売却した場合

三菱地所の粗利は3,500億円

にまで膨れ上がる試算となります!
売却せずに保有し続けた場合には同額が三菱地所の「含み益」となります)

まさにこれが三菱地所の錬金術だと言えます。
「日本経済新聞」が2024年8月22日付朝刊で「三菱地所は昨年度、業界最大の4兆8,499億円もの『含み益』を得た」と報じたのも納得がゆきます。

まとめ

三菱地所や住友不動産など一部の業者が行う再開発事業は、

地権者の犠牲のもとで業者側が
莫大な開発利益を独占するビジネス

だと言っても過言ではありません。
地権者は再開発の事業主体として事業リスクまで引き受けながら、開発利益を享受することが出来ずに「等価交換して終わり」だとすれば、どう考えても割が合いません。
リスクまで引き受けながら何年もかかる再開発事業に参画するよりは、今すぐ自己の土地資産を「実勢価格」で処分して転出した方がはるかに簡単で得だからです。(注6)

(注6) 土地の評価額には「路線価」「公示価格」「実勢価格」などがありますが、再開発では最も評価額の低い「路線価」で従前資産が決められる場合が多いので注意が必要です。一方、法律の網掛けがなされる「都市計画決定」前であれば、自己の土地資産を「実勢価格」で売却することが可能です。一般に再開発が計画されるような一等地であれば、低い「路線価」を基準に等価交換に応じるよりは、再開発前に土地を「実勢価格」で処分した方がはるかに得であることは言うまでもありません。

また再開発には「落とし穴」が多々存在するので注意が必要です。特に、再開発業者が行う「権利変換」の説明にはくれぐれもご注意ください。
業者側が配布する膨大な資料の一角にそれとなく「落とし穴」が書き込まれていることがあり、地権者側がこれを見過してしまうと、いつの間にかそれが既成事実化されてしまったりするからです。
今回、事例として取り上げた三菱地所の「権利変換イメージ図」は、まさにそのことが強く表れた典型例だと言えます。

このような狡猾な不動産業者は「相手にしない」ことが最善策ですが、どうしても対話せざるを得ない場合、地権者として心得るべきは、
1.一人では決して業者側(コンサルや鑑定士等を含む)と対話しないこと、
2.業者側の提案や約束ごとはすべて書面で取り付けておくこと、
3.理解し納得しない限り、いかなる書類にも決して署名捺印しないこと、
です。
自己の大切な土地資産の処分に関る問題ですから、時には「石橋を叩いても渡らない」慎重さも必要ではないでしょうか?

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