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(243)住友不動産は泉岳寺での活動を停止か?

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住友不動産が泉岳寺で再開発への勧誘活動を開始してから既に7年となります。
その間に多くの問題が表面化し、結局、地権者の合意形成には至りませんでした。その様な状況も影響してか住友不動産の動きは表面上は停止したかの様相です。しかし本当に停止したのか?それとも「死んだふり」をして水面下で活動を続けているのか?住友側は地権者に対し「沈黙」を続けているため、その見極めが難しい状況にあります。

 

Contents
1.住友は本当に活動を停止したのか?
2.無責任さが際立つ泉岳寺地区の「準備組合」
3.住友はなぜ活動を停止したのか?
4.活動停止の期間こそ警戒が必要!
5.まとめ

住友は本当に活動を停止したのか?

昨年(2024年)2月に地元地権者を集めた全体集会の場で、住友不動産は「同意書が集まらない」事実を自ら認めました。それ以降、泉岳寺周辺地区の

準備組合事務所は1年近く閉鎖されたままです。

以前は頻繁に見られたコンサル等の関係者の出入りは途絶え、時折、住友不動産の社員と思われる輩が事務所へ立ち寄るのみ。
また準備組合には7名の地元役員がおり、その全員が準備組合事務所から徒歩圏内に居住しているにも関わらず、彼らが事務所へ出入りする姿も見られません。
準備組合は「地元地権者が主体」となり運営される組織ですから、運営の中核を担うべき地元役員たちが出入りしない準備組合事務所など本来はあり得ない筈です。
今回の「住友不動産の活動停止」が発端となり、当地区の歪な準備組合の運営実態が露呈してしまった感があります。
それにしてもなぜ地元役員ですら準備組合事務所に立ち入ろうとしないのか?

おそらく地元役員たちは
準備組合事務所の「鍵」を持たされていない!

と言うのがその最大の理由なのでしょう。
住友不動産には隠し事が多く、地権者が真に必要とする「重要情報」を地元地権者へ開示しようとしない傾向が顕著ですから、彼らにして見れば、例え準備組合の役員であっても勝手に準備組合事務所に立ち入られ「地権者側にとり不都合な書類」などを発見されては困るのでしょう。
今回、準備組合事務所が長期間閉鎖されたことで、住友不動産が実質主導する準備組合組織の「真の姿」が露呈してしまった感があります。事実だとすれば、

準備組合事務所の実態は
住友不動産の営業所だった!

と言うことになります。(注1)

(注1) そのような準備組合は地権者にとり「百害あって一利なし」ですから、組合側
が如何なる理屈を述べようと地権者はそのような組織を相手にすべきではありません。過去に問題も起きています。「立石駅南口東地区再開発」では準備組合内に事業協力者として入り込んだ業者が重要情報を組合の地元理事たちに開示せず、その行為に不信を抱いた某理事が情報公開を求めて準備組合を東京地裁へ訴えると言った事件が発生。裁判の過程で組合内に常駐する業者社員が秘密裏に「同意書の改ざん」を行っていた実態が発覚しました。まさかとお思いでしょうがこれは事実です。詳しくはトピックス(54) 理事が準備組合を訴えた!(その1)をご覧ください。

 

無責任さが際立つ泉岳寺地区の「準備組合」

住友不動産(=準備組合)は昨年2月の全体集会で「同意書が集まらない」事実を認めて以降、準備組合事務所は事実上閉鎖されたままです。地権者への貴重な情報伝達手段である「準備組合ニュース」も昨年3月号を最後に発行停止状態です。
もちろん説明会も開催されなければ地権者への通告もありません。つまり、

準備組合は1年近くもの間
地元地権者たちへ
沈黙を続けたままなのです!

日頃から「皆さまの準備組合」であることを謳い、「正確な情報提供」を標榜してきた準備組合。その準備組合が「同意書が集まらない」ことを認めた直後から沈黙を決め込み、地権者への情報提供を一方的に止めたのですから尋常ではありません。
法人格も無い単なる任意団体による「大人気ない行動」だと言ってしまえばそれまでですが、住友不動産と言う大手不動産業者が背後についている組織であるだけに、何とも無責任な対応だと言わざるを得ません。

これが住友不動産の行う再開発の実態なのです!

 

住友はなぜ活動を停止したのか?

住友不動産側が沈黙を続けているためあくまでも推測となりますが、主に2つの
理由が考えられます。
先ずは昨今の建設資材の高騰、職人不足、オフィス需要の減少、等の影響を受け、住友不動産の事業採算性に暗雲が立ち込めてきたことが挙げられます。とりわけ住友不動産が当地で計画する高層オフィスビルの需要は壊滅的です。実際に住友不動産が泉岳寺から僅か500mほどの至近距離(三田札ノ辻)に2年前に開業した42階建ての住友オフィスビルは、今も「空き家だらけ」の状態が続いています。更に今春(2025年春)には泉岳寺地区の目の前でJR東日本が主導する巨大な複数のオフィスビル棟(高輪ゲートウェイシティ)が開業予定です。既にオフィス需要は飽和状態だと噂される中、高輪ゲートウェイシティよりも立地条件が劣る泉岳寺周辺地区で住友不動産が高層オフィスビルを今から建設しても、果たして事業採算が取れるのか甚だ疑問です。
もう一つの理由は、住友不動産が「地元地権者の犠牲」のもとで再開発を進めようとする手法が地権者に見透かされてしまった点にあります。事業リスクまで負わせながら、最後は「等価交換して終わり」で地権者を処理しようとする住友不動産の姿勢では地権者は決してついて来ません。その一方で、住友不動産は「激安保留床単価」で床を購入することで「開発利益の独占」を図ろうとするのですから地権者はたまりません。またこの問題を地権者が追及しても、住友不動産は秘密主義に徹し「事業計画数字」すら開示しようとしないのですから、もはやお手上げです。この様な住友再開発の手法を地権者側が知ってしまった以上、新たに再開発に賛同しようとする地権者が出て来ないのは当然です。(注2)

(注2) 今となって思えば、7年前に「まだ無知だった地権者たち」を相手に、なぜ住
友不動産が強引に「再開発への同意書」にハンコを押させようと熱心に活動して回ったのか、その目論見が理解できます。地権者が知識をつける前に何としてでも同意書を集めて「都市計画決定」へ持ち込み、再開発を後戻りできない形にしたかったのでしょう。もし事実なら地権者を愚弄する極めて狡猾なやり方だと言えます。

活動停止の期間こそ警戒が必要!

いくら活動が停止したと言っても、住友不動産が撤退を宣言した訳ではない以上、地権者として安堵するわけには行きません。

一部の業者は水面下で裏工作を行う

ことが知られているからです。
その代表的な手口としては、
1. 土地の細切れ分筆
2. 地権者の買収
3. 同意書の改ざん
などがありますが、これらの詳細については今後のトピックスで実例と共に詳しく解説して行く所存です。

まとめ

住友不動産主導による再開発への勧誘開始から早7年。
その間に「建設費高騰」や「需要減少」と言った再開発事業への逆風が吹き始め、また「地権者の犠牲」を前提とする住友再開発の手法が地権者に知れ渡ったことで、さすがの住友不動産も動くに動けなくなってしまったと言うのが、彼らが活動を停止した真の理由なのかも知れません。

しかし活動が停止しても安堵は禁物です。なぜなら一部の再開発業者は「死んだふり」を装いながら水面下で様々な工作を行うことが他地区の事例から明らかになっているからです。

もし住友不動産が今後も泉岳寺で再開発を進めたいと望むのなら、準備組合と共に
直ちに「沈黙」や「秘密主義」と言った方針を撤回し、地権者を対等な相手先と見做し事業計画詳細を地権者側へ開示した上で、公平・公正、且つ隠し事のない形で事業を進めることを地権者側へ書面にてコミットすべきです。これらはすべてデベロッパーとして当たり前のことばかりですので決して無理難題ではありません。
それさえも出来ぬと言うのであれば、住友不動産は泉岳寺から立ち去るべきです。既に7年が経過し、これ以上の先延ばしは地権者の平和な生活にも悪影響が出かねず迷惑だからです!住友不動産は地権者を侮るべきではありません。

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