先日、(261)港区の再開発担当は「まるでオウム」だ!を公開したところ、閲覧者の方から
再開発現場は実は野鳥の宝庫である!
とのコメントを頂きました。
その内容があまりにも面白かったのでトピックスにまとめてみました。
夏休み期間中でもありますので「息抜き」も兼ねてお読みください。
1. 再開発現場は野鳥でいっぱい!
2. 準備組合に群がる野鳥たち
3. 地権者側にも様々な鳥たちが存在する
4. 再開発が終わっても鳥たちはやって来る
5. まとめ
再開発現場は野鳥でいっぱい!
本来、再開発(第一種市街地再開発事業)は地権者が事業主体となり、自らの土地資産を供出し、更に様々なリスクを引き受けながら進めて行く「街づくり」です。ところが実態はそうではありません。
上空には常に獲物を狙うハゲタカが地権者を狙って舞っています。
自然界のハゲタカは腐肉(=死んで腐った動物の肉)を食べるのでまだ良いのですが、再開発現場上空を舞うハゲタカは生きた人間(=地権者)を狙うので注意が必要です。
莫大な開発利益を狙う再開発業者は、地権者たちが知識に乏しいことに乗じ、先ずは業者に従順な地権者ばかりを集め、それらの人物を「準備組合理事」に祭り上げ、地権者主体とは名ばかりの傀儡型の「準備組合」を組織します。そのようにして設立された「準備組合」を隠れ蓑に、業者側は様々な不適切な手法を駆使して区域内の地権者たちを執拗に「再開発同意」へ導こうとすることが各地で確認されています。(注1)
この様な実態を再開発業者の目線で見れば、地権者は「土地資産を供出」してくれ、更には「事業リスク」まで負担してくれる有難いお客さんであり、まさにネギを背負ったカモと言うことになります。
英語圏では、このような地権者たちをカモメまたはチキンと呼びます。
再開発に応じてもスズメの涙しかリターンの得られぬ地権者に対し、楽して開発利益を独占することができる再開発業者はまさにフクロウ(=不苦労)です。
準備組合に群がる野鳥たち
次は「準備組合」周辺を眺めてみます。
多くの再開発現場で見られる「業者に従順なイエスマン」ばかりを集めた傀儡型の「準備組合」。理事長でさえ事務所の鍵を持つことを許されず、ひたすら再開発業者の意に沿って行動させられる準備組合理事たち。
その彼らはまさに鵜飼いの鵜です。
「準備組合」は法人格の無い単なる任意団体に過ぎず責任能力も極めて限定的です。そのような組織を「隠れ蓑」に大手再開発業者が脱法的な勧誘活動を地権者に対して行えば、まさにそれは「やりたい放題」となり、地権者はたまったものではありません。
「良い情報は伝えても悪い情報は伝えない」、「誇張やレトリックの多用」、「正確ではない情報の流布」、「重要情報の非公開」、「秘密主義」、等々、彼らの公平性・透明性に欠ける行為を挙げればキリがありません。
再開発は市民の税金まで投入される極めて公共性の高い事業ですから、
もし住友不動産や三菱地所と言った大手再開発業者が直接このような行為に及べばたちまち社会から批判を受けることになります。しかし「準備組合」と言うフィルターを通してこれを行えば、たとえ問題が指摘されたとしても業者側は自社名を出さずに済み、批判をかわすことも可能となる算段です。よくもこのような仕組みを考えついたものだと感心すらします。
しかし準備組合は単なる任意団体とは言え油断は禁物です。準備組合が一定数の地権者同意を集めれば区市町村は粛々と「都市計画決定」を実行してしまうからです。従い、準備組合が「業者の傀儡組織」であったなら、それは地権者の大切な土地資産を奪いかねないガンとなります。ステージが進行して手遅れとなる前に地権者が団結して傀儡組織を解体させてしまうことが強く望まれます。もしこれを放置すれば何れ地権者の頭上にはウソが飛んで来ることになります。更に放置を続ければサギが飛来することだってあるかも知れません。「自分だけは大丈夫」などと油断していると、突然背後からトンビが飛来して油揚げ(=土地資産)を奪われることもあり得ますので地権者は要注意です。
この様な鳥たちを見ているだけでも鳥肌が立って来ますが、とにかく再開発業者の言う事を安易に「鵜呑み」にしないことが何よりも肝要です。
後日「こんな筈ではなかった!」と後悔しないためにもこのことは重要です。
再開発は不動産取引である!
地権者は是非ともこのことを肝に銘じておいてください。
地権者側にも様々な鳥たちが存在する
再開発が竣工まで20年前後を要するプロジェクトであることを勘案するとシジュウカラ、ゴジュウカラの地権者たちは注意が必要です。
今は現役として安定収入が保証されていても、20年後には自身が「年金生活」に入る可能性があるからです。たとえ念願の再開発マンションへ入居出来たとしても、維持管理費が高額となれば年金生活者への負担は重く、新居での「生活再建」を諦めざるを得なくなる可能性も出て来ます。
一方、地権者側にも周囲に迷惑をかける困った野鳥たちがいます。
*再開発が何であるかも理解しようとしないアホウドリ、
*自分の考えを持たず常に周囲の動向ばかりを気にする風見鶏、
*昭和時代に一斉風靡した懐かしのシラケドリを実践する輩もいます。
再開発は一定割合の同意者が集まると不同意者も巻き込み半ば強制的に進められてしまうだけに、地権者一人一人が再開発への「関心」を持ち、更に最低限の「基礎知識」を身に付けることが何よりも大切です。
「無知」、「無関心」、「他人任せ」だけは何としても避けたいところです。
再開発が終わっても鳥たちはやって来る!
最近の再開発事業は「利便性の向上」や「環境への配慮」などを名目に、どこへ行っても「見た目のカッコウ良さとは裏腹にタンチョウで退屈な高層ビル」ばかりが目立ちます。そこに「地域の特徴」を感じさせるものは殆ど存在せず、どの再開発もまるで金太郎飴です。
立派な再開発ビルをオープンさせても入居者がいなければ閑古鳥がやって来ます。空室だらけの再開発ビルで借入金の返済が滞ることとなればシャッキントリもやって来ます。
長年の紆余曲折を経てやっと竣工までたどり着いたのですから、そのような事態とならぬよう、再開発業者には是非とも立つ鳥跡を濁さずを実践して貰いたいものです。
(もちろん、事業主体である地権者側にも同様の心得は必要です!)
まとめ
演歌の歌詞ではありませんが「人生いろいろ、鳥たちもいろいろ」です。
今回は再開発にまつわる人間模様を鳥に置き換えて表現してみました。
再開発に限らず、一般社会には思わぬ「落とし穴」が潜んでいたりします。
せっかくの夏休み期間中ですので、もしご家庭にお子様がいれば、是非この機会に鳥たちを題材に不動産取引の心得などをわかりやすく説明されてみては如何でしょうか?
きっと将来生きて行く上での貴重な社会勉強になる筈です。
(たとえ今は小学生でも、再開発が竣工する20年後には立派な社会人となっているのですから、まさに「善は急げ」ではないでしょうか?)