●再開発計画が立ち上がると、事業者側から計画区域内の地権者に対し様々な説明や提案が行われ、そしてほどなく「再開発を進めることに対しての皆さまのご了解を頂きたい」として同意書への捺印を求められるようになります。
●しかし、残念ながら地権者の多くは再開発に対する知識に乏しく、突然再開発の話をされたところで、自己の大切な土地や建物が再開発によりどう処理されるのかまで理解できる地権者はほとんどいません。
●事業者は再開発に関しては百戦錬磨のプロ集団です。対する地権者側は再開発に関する知識や経験などほとんど持たない素人集団です。
●この様な状況下で、個々の地権者が再開発のプロ集団を相手に対等な交渉など出来るわけがありません。(逆に、事業者はそこを狙って早い段階で地権者から強引に同意書を取り付けようとする可能性があります)十分な知識と理解力をもたぬまま、安易に事業者の言われるままに再開発への同意を行ってしまえば、後日「こんな筈ではなかった」と後悔することになりかねません。
●当地区ではこのような状況を危惧し、2018年4月に地元地権者の有志7名が集まり「地権者の会」が立ち上がりました。
基本理念は「1人で悩んでいても何も解決しない。地権者が団結することで事業者側とフェアで対等な交渉が出来る環境を作って行こう」です。
●発足したと言ってもメンバー全員が再開発に関しては素人です。
ですから、先ずは、
1,地権者間で情報交換をしよう
2,互いに勉強し合い知見を広めよう
3,ご年配の方々などが後日後悔しないよう啓蒙活動を行おう
の3点を中心に活動が開始されました。
上記の「一石三鳥」効果を狙って「会報」の発行も始まり、1年半が経過した2019年10月時点で「第48号」まで発行され、現在では多くの地権者から支持されるまでになっています。
またその存在は域外にも知れ渡り、最近では首都圏各地で再開発に悩む地権者からも「問い合わせ」や「相談」を受けるようになっているそうです。
●さて、タイトルにある「地権者団体設立」の必要性ですが、どこの再開発でも地権者団体の設立は必須であると考えます。再開発は地権者の大切な資産の処分に関係します。素人が1人でプロ集団と交渉すれば不利な立場に立たされます。やはり地権者が団結することで再開発の是非に関し、事業者側と対等でフェアな話し合いが行えるようになることが必要ではないでしょうか?
●因みに、「地権者の会」は、地権者を代表して事業者と交渉を行う組織ではありません。あくまでも交渉の主体は地権者個々人であり、「地権者の会」では、個々の地権者が対等且つ公正な形で事業者と交渉が行えるよう、その環境づくりに重点を置いています。その観点から、事業者の発言や活動に対してはそれが公平・公正な形で行われているかをモニタリングする一方で、地権者に対しては、①情報交換、②勉強会、③啓蒙活動、の促進に重点を置いています。
●ところで「地権者の会」では、常に地権者の皆さんに言い続けていることが2点あります。それは、
1,重要な事項は必ず事業者から書面で確認や保証を取り付けておくこと
(口約束は実行されないことを肝に銘じておくこと)
2,自ら理解し納得しない限り、決してハンコを押すべきではないこと
(将来「こんな筈ではなかった」と後悔しないために)
これら2点は、何も不動産取引に限らず、私たちの生活全般において言えることです。再開発は地権者の資産に関わる重要な問題なだけに「備えあれば憂いなし」なのです。