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(284)準備組合が配る 「同意書」にもご注意あれ!

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準備組合の実態シリーズ(4)

本トピックスは(283)「準備組合」は隠しごとだらけからの続きです。
今回は「準備組合の実態シリーズ」第4弾として、再開発業者が地権者へ配る「同意書」のひな型についての注意喚起を行います。

Contents
1. 泉岳寺で実際に起きたこと
2. 「同意書」はまるで白紙委任状!
3. 再開発業者の狡猾な手口を一挙公開!
4. 「同意書」欲しさのこの巧言には特に注意!
5. まとめ

泉岳寺で実際に起きたこと

以下は「泉岳寺周辺地区再開発事業」(業者:住友不動産)で実際に起きた話です。始まりは今から8年前の2018年3月でした。
「地区に事業計画がある」との触れ込みで地元住民たちが「準備組合」なる組織が主催する説明会へ集められたのです。
説明会場のひな壇には地元で良く見る顔の住民たちが5~6名行儀よく並んで座っていました。準備組合の理事長及び理事たちです。
しかし、彼らはただ座っているだけで説明会を取り仕切ろうとする様子はなく、実際には地元では見かけない顔の住友不動産社員たちが会場の「受付係」から「司会進行役」、更には「事業計画の説明」や終了後の「質疑応答」に至るまでの一切を取り仕切ったのです。
そして説明の途中で突然彼らの口から飛び出したのは「地域で再開発をやりたい!」なる発言でした。そして説明会の終了日からほどなくして、まだ「再開発」が何であるかも良く整理できていない地元地権者たちに対して「準備組合」の名を語る住友不動産の社員たちが、あたかも再開発が既定路線であるかの如く再開発(都市計画決定)への「同意書」集めを開始したのです。
しかもその同意書は準備組合への「白紙委任状」とも言える「地権者に一方的に不利な内容」だったのです!
幸い、住友不動産のこのあまりにも唐突で乱暴なやり方に疑念を抱いた地元有志たちが直ちに住民団体「地権者の会」を立ち上げ各地権者へ注意喚起及び啓蒙活動(注1)を行ったため、多くの地権者が同意書の提出をためらい、結果として再開発は実現しませんでした。(注2)

 

(注1)地元「地権者の会」では8年間で計250回を超える「会報」を地権者たちへ配布し続けた結果、半年を過ぎたころから地権者側の意識も徐々に変化して行きました。

 

(注2) 因みに、泉岳寺を管轄する東京都港区では「地権者の概ね8割の同意」を再開発(都市計画決定)実行の判断基準としています。ただ、「都市計画決定」はあくまでも行政判断であり、そこに法的要件はないため、他の区市町村では「同意書」以外の判断基準(例えば「準備組合への一定の加入率」など)を採用しているところもあるようです。

既に8年が経過しましたが、当時配られた「同意書」のひな型を本トピックス上で公開しますので、いかにずさんな同意書であったかを再認識ください。

「同意書」はまるで白紙委任状!

以下は準備組合(=住友不動産社員)が配布した「同意書」のひな型です。契約に詳しい方ならおわかりと思いますが、その実態は準備組合に対する「白紙委任状」に近く、「土地を手放す契約書」だと言っても過言でないほどズサンな内容です。
「同意書」にはたった3行の文章しかなく、地権者の権利や保証に関する記載などは全くありません。
それでも地権者の概ね8割がこの同意書を提出すれば港区は再開発(=都市計画決定)を粛々と実行してしまうと言うのですから、これほど恐ろしいことはありません。

【住友不動産が配布した同意書とその問題点】

再開発業者の狡猾な手口を一挙公開!

1.
「同意書」の宛名は、法人格も責任能力もない準備組合。
そのような準備組合宛に同意書を提出するよう連日地権者のもとへやって来るのは、地元の理事たちではなく住友不動産の社員たちでした。
彼らは決まって先に住友不動産の名刺を訪問先の地権者へ渡します。
住友不動産の名刺を見せることで地権者を信用させようとしたのだと考えられます。

2.
次に彼らは各地権者の資産評価額を記した「権利変換モデル」なる資料とセットで「同意書」の用紙を配布しました。各地権者の資産評価額を数字で示すことで、地権者が同意しやすいよう誘導しようとしたものと考えられます。しかしこの「権利変換モデル」中身は極めて曖昧で、よく見ると「作成企業」や「責任者」の名前すら無い単なる紙切れにすぎません。
まさに世間で言う「見せ玉」です。
作成者も不明の書類ですから、後日地権者が「こんな筈ではなかった」、「住友不動産の社員から手渡されたものだ」などと裁判所に訴えたところで果たして証拠として採用されるのか疑問です。
住友不動産の社員が、このような何の責任も生じることの無い紙切れを無知な地権者へ示しつつ「再開発への同意」を取ろうとしたのですから、違法とまでは言えないにせよ倫理的には大いに問題とされるべきです。少なくとも「信用」を重んじる大手不動産業者が立場の弱い地権者に対して行う行為ではありません。(注3)

 

(注3)因みに、住友不動産は宅地建物取引業(=宅建業)に基づく事業者でもあり、社内では多くの宅建士資格を持つ社員たちを有しています。
本来、宅建業の目的は、「事業者の不正防止」と「売主や買主の保護」にあるため、住友不動産は宅建業の精神からも逸脱していると言えます。たとえ違法性はなくとも、社会的に許容される行為ではありません。

3.
住友不動産が泉岳寺で行った狡猾な手口はまだあります。
彼らが「同意書」要求する際に多くの地権者に対して発した常套句は、
1)とりあえずハンコを!
2)皆さま捺印しています、
3)三文判でOK!
の3点セットだったとの報告を受けています。
事実だとすればまるで宅急便の受け取りのような軽いノリです!
再開発は地権者の大切な土地資産の処分を伴う不動産取引だと言う実態を宅建業者である住友不動産はどこまで認識していたのでしょうか?

「同意書」欲しさのこの巧言には特に注意!

再開発業者が発する様々な巧言の中で、特に地権者側が注意すべき
「この一言」があります。
それは、再開発業者が都市計画決定への同意書欲しさに発する、

「皆さまが同意する機会は3回あり、今回はまだ1回目です!」

なる巧言です。
実際に各地でこのような説明が地権者に対し行なわれています。
あたかも「まだ2回目、3回目があるから大丈夫!」と地権者に思い込ませようとする説明。しかしこの言葉を決して信じてはいけません!
1回目の「都市計画決定」が実行されたら最後、地域全体に法の網(=規制)がかけられ、地権者は後戻りすることが難しくなり、再開発は実質的に決定したも同然となるからです。「都市計画決定」に持ち込むことが出来れば、以後、再開発業者は傀儡組合を利用して自社の意のまま再開発を進めることが出来ると言う算段です。

下図をご参照ください。

まとめ

一部の再開発業者が地権者へ差し出す「同意書のひな型」にはくれぐれもお気を付けください。
その中身は「白紙委任状」に近いことがあり、ある意味「土地を手放す契約書」であるとも言えるからです。
「同意書」は極めて重要な文書であるにも関わらず、その中身を見ると地権者の権利や保証に関する記載などまるで無いのが特徴です!
通常、
対価もわからないまま契約書にハンコを押す地権者はいません。
しかも、
提出先は「準備組合」と言う責任能力も限定的な任意団体です。

この様な問題を覆い隠すため、再開発業者は自らの大手企業の名刺を差し出すことなどで、巧みに「心配いらない」と言う雰囲気を醸し出して同意書にハンコを押させようとするのですから、まさに地権者を見下した不公正で狡猾なやり方です。
このような行為を住友不動産のような大手再開発業者が直接行えば社会問題とされかねません。そこで彼らは「準備組合」なる組織を経由させることで、自社の責任回避と共に社名が世間に露出することがないよう巧みに「同意書」集めを行うのだと考えられます。
そこには「地権者に対する配慮」など微塵もないことにお気づきください。

さて泉岳寺では住友不動産が「同意書集め」を開始してから8年が経過しました。その間に地元「地権者の会」は地権者向けに「会報」を250回配布しました。まさに「継続は力なり」の言葉通り、多くの地権者が同意書の提出をためらうようになり、結局、再開発は実現しませんでした。
住友不動産は2年前から活動を休止中です。準備組合事務所も昨年12月に地区外へ引っ越して行きました。しかし準備組合自体は今も存続しているため今後も油断は禁物です。

他地区の皆さまにおかれましては、是非、この泉岳寺の事例を参考として頂ければ幸いです。
再度申し上げますが、再開発業者が差し出す「同意書」のひな型にはくれぐれもお気を付けください。
将来「こんな筈ではなかった!」と後悔しないためにも、「同意書」の内容を十分精査し、自身で「理解」し「納得」しない限り決して捺印はしない!このことが何よりも大切ではないでしょうか?

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