仲見世では準備組合の役員3名を含むわずか4名の仲見世地権者たちが、総勢260名の地権者の大半が収容されることになる「陽当たりの悪い地権者棟」への入居を回避し、自分たち専用の「陽当たりの良い低層棟」を住友不動産に建設して貰おうとする計画が明らかとなりました。
低層棟の企画書やデザインは既に出来上がっているものの、その詳細は一般地権者には公開されていません。それなのに一方では仲見世の地権者のみを集めた検討会が複数回実施されていた事実が判明したのです。
「仲見世住民に限定した検討会」と言うことは、仲見世の住民が引続きこの地に建設される低層棟へ入居することを示唆しています。
この仲見世には準備組合理事長を含む3名もの役員が居住しているため、巷では住友不動産が、再開発への協力の見返りとして仲見世の理事たちに専用住宅を提供しようとしていると考える地権者も少なくありません。
準備組合役員を中心とする少数の地権者が、あたかも「既得権」であるかの如く現在の場所に住み続けるのだとしたら、これほどの不平等はありません。
もしこれが事実だとすれば、
住友再開発は特定の地権者を優遇する不当な再開発となります。
「優遇住宅」と聞くと、私たちが想起するのは昨年話題となった千代田区の石川雅己区長(当時)が事業協力者住宅へ入居したとされる疑惑です。
石川区長が再開発業者へ協力を行った見返りとして、業者側が区長の「事業協力者住戸」入居への便宜を図ったのではないかと疑われたあの事件です。
泉岳寺ではまだ計画段階ではあるものの、千代田区で発生した「優遇住宅」疑惑との類似性をどうしても感じざるを得ません。
泉岳寺で準備組合の役員3名を含む特定の地権者が、一般の地権者向けとは別に自分たち専用の「陽当たりの良い住宅」を建設し、そこへ移り住もうと画策したのだとすれば言語道断です!
なぜこのような不平等がまかり通るのか?
そもそも泉岳寺では準備組合自体が不当に設立された組織(詳細は(34)準備組合は謎だらけ(その3)をご覧ください)なのですが、
今回の疑惑の主たる原因は住友不動産の指導下で存在する「準備組合」内部の偏った役員構成にあると私たちは見ています。
1.準備組合役員の歪な分布
泉岳寺の準備組合には7名の役員(理事+監事)がおり、住友不動産の1名を除くと6名が地元の地権者で構成されています。
その中で理事長を含む3名もの役員が仲見世の60坪ほどの敷地に固まって集中していると言った歪な分布になっているのです。「60坪」と言えば3,000坪を超える再開発区域全体の2%にも満たないエリアです。
そこに準備組合の理事長を含む3名もの役員が固まって住んでいるのですから疑念を抱かれるのは当然です。おそらく何らかの特殊事情がある筈です。準備組合が「みなさまの準備組合」だと言うのなら、理事長は自ら地権者全員に対してこの点に関する説明責任を果たして頂きたいものです。
さて、多数の役員が仲見世内へ一極集中するとなれば、おのずと弊害も起きてきます。最高責任者である理事長までいるのですから彼らが結託して「自分たちには有利な形で再開発を実現したい」と考えても不思議ではありません。
もしこの3名の役員が住友不動産の1名と申し合わせれば3+1=4、即ち準備組合の役員総数の「過半数」となりますので、理屈の上では多くの意思決定が(一般地権者の民意とは関係なく)実現出来てしまうことになります。
その結果、実際に何が起きたか?
●仲見世住民4名→陽当たりの良い仲見世専用棟、
●その他260名の地権者→「住戸の半数が全く陽の差さない地権者棟」、と言った歪な住宅構想が出来上がったのだと私たちは考えています。
(注:仲見世には計6名の地権者がいますが、内2名は再開発への不関与を表明済。従い、実際の優遇住宅構想へ関与する地権者は4名のみ)
2.準備組合役員の長期固定化の問題
役員の歪な分布の他に、特定の地権者が役員として在職し続けると言った問題も顕在化しています。実際に上記の準備組合理事長を含む3名の仲見世役員も2016年の準備組合発足以来一度も役員交代をすることなく現職にとどまり続けています。例え「規約上は問題がない」と主張したとしても、
「皆さまの準備組合」を標榜する組織としては不自然さを拭えません。
役員の固定化と住居の集中は「多様な意見を広く集める」と言う観点からも問題視されるべき
です。
このような偏った役員構成こそが、「陽の当たらぬ地権者棟」や「特定の地権者を優遇しかねない仲見世低層棟」の提案へと繋がったのだと考えられます。
「皆さまの準備組合」と呼べないことは明白です。
実は仲見世に既得権など存在しない
←泉岳寺中門(中門をくぐると右側が仲見世)
再開発事業で特定の地権者が優遇されるなどあってはならないことです。
ではなぜ仲見世で住民専用の「優遇住宅」が計画されたのか?
もしかしたら「仲見世は泉岳寺の境内の一部である」と言った、世間の誤解や固定観念に乗じて計画を正当化しようとしたのではと推測しています。
たしかに仲見世は泉岳寺の中門の内側に位置していることから、あたかも寺の境内の一部であるかのイメージがあります。しかしこれは事実ではありません。仲見世の地は「宗教法人泉岳寺」とは無関係のれっきとした私有地なのです。
また仲見世では土産物店を営まねばならぬと言った制約もありません。
実際に今も仲見世では土産物店とは全く関係のない業態が存在しています。
つまり、仲見世だからと言う理由で既得権は存在しないのです。
従い、仲見世の地に建設される低層棟は「平等の原則」のもとに特定の住民を優遇するものであってはならず、地権者全員が住居や商業床を平等に取得出来るよう事業者により確約されなければなりません。
幸い準備組合が最近発行した「皆さまに正しく知って頂きたいこと②」の書簡では、地権者は中層棟や高層棟に限らず「他の用途の区画を取得することも可能」だと報じています。余談ですが、その書簡を読んだ地権者から、早くも「仲見世で店舗を開きたい」と言う声が地元「地権者の会」へ複数寄せられています。
まとめ
特定の地権者が優遇される再開発など絶対にあってはなりません。もしその様な状況が明らかとなれば社会は決してこれを容認はしないでしょう。
ついては、再開発計画を実質的に主導する住友不動産(及び準備組合)は直ちに、仲見世で計画されている低層棟に関し、下記2点を地権者に対して書面を以て明らかにすべきだと考えます。
1. 特定の地権者を優遇しないことを地権者全員に対して宣言すること
2. 仲見世で計画中の低層棟の床は再開発区域内の地権者全員が公平・公正に選択できることを書面で確認すること。
上記2点は、何れも再開発を進めるに際してごくあたり前のことですので、住友不動産側には「確認できない」との選択肢は無い筈です。
私たちは、不公平・不公正は決して許さないとの強い決意のもとに泉岳寺の再開発計画を見つめ続けています。
今回の優遇住宅疑惑についても引続き状況を注視して行くと共に、進捗状況を全国各地の皆さまへ適宜お伝えして参ります。