TOP_Topics 再開発、ここに注意

(16)マンションは「住民全員で1票?」(その2)

投稿日:

引き続き「1票の格差」についてです。

マンション地権者は「1棟全体で1人」と見做すルール。このルールがいかに不平等で且つ不当であるかを以下にわかりやすくご説明します。

例えば、再開発区域内に100人の地権者がいて、その構成は「4軒の戸建住宅と96人の区分所有者が住む1棟のマンション」で構成されていたとします。

事業者側のルールに従えば、マンションは「1棟で1人」ですから地権者総数は100人ではなく5人となります。このケースでは、例え96人のマンション地権者全員が再開発に反対したとしても、4人の戸建て地権者が賛成すれば「5人中4人が賛成」、即ち「8割の地権者同意」が成立してしまいます。

実際には100人中96人が反対(反対率96%)だと言うのに「8割が賛成」したとされて「都市計画決定」(=法律による地域全体への網掛け)が実行されてしまうのです。

事業者側にとり、これほど都合の良いルールはありません。マンション地権者のことなど気にかけることなく、僅か4人の戸建て地権者の説得に成功すれば8割同意が得られて再開発を進められるのですから。

そんなバカな話はないとお思いでしょうが、これが泉岳寺で事業者が進めようとしている再開発のルールなのです。

このように事業者側は、地権者が再開発の知識に疎いことを知ってか、自分たちにとり都合の良いルールを押しつけて来る傾向があります。

不公平だと申し出ても、「このように決めました」とか「他でもこのルールでやっています」とか言われます。しかし、実際には都市計画決定において「同意率」の計算方法に関する法的規定はありません。存在しないのです!

事業者はこの事実を知っています。地権者の多くはそこまでは知り得ません。本来は事業者がしっかりとルールを説明し地権者の了解を取るべきなのです。

しかし彼等は地権者の了解を取ろうとはせず、自分たちに都合の良いルールを一方的に押しつけてくるのです。

フェアではありません。

マンション地権者の皆さん!

平等の原則、そして財産権や人権にも関わる重要な問題にも関わらず、自らの意思が反映されないまま法の網が被せられてしまっても良いのでしょうか?

一旦、「都市計画決定」が実行されてしまうとなかなか撤回は出来ません。

後日、「こんな筈ではなかった」と気がついても手遅れなのです。

それだけに地権者側も日ごろから勉強をして、事業者側から決して不平等な扱いを受けないよう気を付けねばなりません。

自分の資産は自分で守るしかありません。黙っていても誰も助けてはくれません。「1票の格差」を是正するかしないかはマンション地権者の皆さまご自身の判断となります。

 

(注)当ホームページで使用する「事業者」又は「開発事業者」の用語は、住友不動産の他、再開発推進に携わるコンサル、設計事務所、その他関係企業や個人を包括するものとします。

-TOP_Topics, 再開発、ここに注意

関連記事

(172)傀儡型「準備組合」:役員たちの責任は?

本トピックスは(171) 傀儡型「準備組合」を見分ける法からの続きです。 前トピックスでは上記イラストで表示した通り、 ① 素人+②丸投げ+③借金漬け=傀儡準備組合 の方程式が成り立つことを報じました …

(122)こんなにある!地権者に不利な仕組み

住友再開発はここまで不平等! 「石の上にも3年」と言う言葉があります。 泉岳寺に住友不動産が入り込んで以来5年が経過しました。 この5年間、業者側は良い話ばかりを発信続けていますが、さすがにこれだけ長 …

(161)地権者に「事業リスク」がとれるのか?(続編)

本トピックスは(160)地権者に「事業リスク」がとれるのか?からの続きです。 再開発(第一種市街地再開発事業)は「組合」(=地権者)が主体となり進める事業です。(注1) そこで損失が発生すればそれを補 …

(行-2)行政の「事なかれ主義」について

首都圏各地の地権者団体と情報交換をしていてよく耳にするのは、「行政の再開発担当窓口へ悩みや問題点を相談に行っても、担当者は話を聞くだけで、具体的になんら対応をしてくれない」と言う現実です。 いわゆる「 …

(257) 港区は三菱の「ぼろ儲け」を黙認か?(その①)

Contents 1.港区は三菱地所の「ぼろ儲け」を黙認したのか? 2.なぜ区は「不適切な指導」を敢えて公開したのか? 3. まとめ 港区は三菱地所の「ぼろ儲け」を黙認したのか? そう思わざるを得ない …