再開発のしわ寄せを一番受けるのはご高齢の地権者です。
ご高齢と申し上げましたが、再開発が20年前後かかるのが一般的な状況下では、20年後に年金生活に入る可能性のある世代(すなわち現在40歳代以上の皆さま)も注意が必要です。
以下は再開発で起きうるシナリオです。(高齢、且つ年金生活者の場合)
- 再開発計画が立ち上がると、先ずは同意を求めてプロ集団が自宅へやってきます。現役を離れた世代がプロ集団相手に対等に交渉することは困難です。「持ち出しなしで新築マンションに入居できる」などとうまい話ばかり聞かされ、結局、よく理解しないままハンコを押す結果となりかねません。
- 再開発が決まりいよいよ工事が始まる段階になると、地権者は補償金を貰って何年間か仮住まいをすることになります。
ここでも様々な問題に直面します。- ① 地域社会がなくなります。親しいご近所の人たちともお別れです。
- ② 引っ越しで介護支援体制も変わります。 他の区や市へ移ると制度や条件も変わります。
- ③ 医療支援体制も変わります。引っ越し先によっては病院も変わります。
- ④ 仮住まい先がなかなか見つかりません。 高齢者は家主に敬遠されがちです。これが今の日本社会の現実なのです。
- いよいよ工事が竣工し、新築マンションに入居したとしても更なる問題が待ち構えています。
- ① 生活再建ができなくなる。
新築マンションであるがゆえに高騰する「管理費」や「修繕積立金」等をどう支払って行くかの問題に直面します。年金生活者の場合は僅かの増額でも致命的となりかねません。事業者はこの辺の具体的数字を出したがりません。高すぎて出せないのかも知れません。
生活再建が出来なければ、住宅を売却し、より安い物件へと引っ越さざるを得なくなります。再開発に賛同はしたが、結局は地域から出て行かざるを得ない結末となりかねません。 - ② 昔のコミュニティは戻ってこない。
数年間も地域から遠ざかれば戻って来ない(来れない)仲間も多くいる筈です。以前の街並みも消滅しています。
- ① 生活再建ができなくなる。
- そしてなにより、竣工まで元気でいられるかもわからない。たとえ存命中でも、地権者棟には入居できず、介護施設等での生活を余儀なくされるといった懸念もあります。
以上のように、再開発は高齢者には不安材料だらけなのです。
再開発が実際には竣工まで20年前後かかる可能性のある息の長い事業であることを考慮すれば、現在40歳代以上の方々も今からしっかりした人生設計を立てた上で再開発に賛成するか否かを判断する必要があります。