私たちは1年半にわたり事業者側が行って来た「再開発への勧誘活動」を目の当たりにし、彼らがどのように地権者と接し、そしてどのような手法を用いて再開発を進めようとしているのかが見えて来ました。
残念ながら、事業者の地権者への接し方と言う点では、世間の一般常識や庶民の肌感覚に照らし合わせてみても「フェアである」とは到底言えない状況にあります。
以下は地権者から寄せられた意見の一部です。
●「再開発の全体説明会が終わった直後から同意書集めが始まった」
(意見:地権者に検討する時間的余裕も与えない)
●「再開発の知識に疎い地権者を相手に、再開発のプロ集団が複数名で
家庭を訪問し、良い話ばかりして同意書への捺印をせまった」
(意見:このやり方は全くフェアではない。何もわからぬまま、相手が有名企業だと言うことで、信頼して捺印をしてしまった地権者も多数いたのでは)
●「何度も自宅へ訪問しようとする、電話もかけて来る」
(意見:困惑する地権者の気持ちを理解できていない)
●「資産評価額を記した書類をセットで見せて、同意書への捺印を迫った」
(意見:本来「再開発への同意」と「資産評価額」とは別であるべき)
●「その資産評価額を記した書類は、社名も責任者印もない単なる紙切れ」
(意見:有名企業が行う行為とは思えない。同意を取るための見せ球だった?)
●「執拗さが極まり地権者とのトラブルまで発生。住友側の責任者が詫び状
を発行する事態となった」
●「それも詫び状とは名ばかりで文末に面談可能日を知らせろと書いてあった」
(この地権者は精神的に追い詰められ、警察へも相談する事態となった)
●「良い話ばかりしたがり、悪い話はしない。質問しても正面から答えない」
(意見:説明会での質問も、検討すると言ったきり返答されないことがある)
●「答えてもそれは口頭であり、書面では出したがらない」
(意見:書面で回答を要求しても、出してくれないことがある)
●「説明会や勉強会の都度、多くの資料が配られるが、地権者側が了承しなくても、配り続けることで資料の内容が徐々に既成事実化して行くのではないか」と不安。
(他所の再開発案件でもこのことが確認された由)
●「詫び状事件以来、強引な勧誘は治まったが、逆に彼らは地権者からの同意が得られるまで諦めないと長期戦を決め込んだようだ」
(意見:すでに1年半も活動を続け、結局、地権者の同意は集まらなかった。なのに「同意するまで何年かけても諦めませんよ」なる姿勢は不公正。
地権者が老いて根負けするのを待つと言った極めて不適切な手法である)
等々…
事業者は再開発のプロ集団であるのに対し、地権者側は専門知識に乏しい素人集団です。地権者が一人でも相手は構わず同意書を取りにやってきます。また、よほど再開発を急いでいるのか、事業者には住民の声に真摯に耳を傾けようとする姿勢が欠如していると感じる地権者も多く、また地権者から強引に再開発への同意を取り付けようとする彼らの進め方に多くの住民が反発しました。とりわけ地権者の事前了解も取らず一方的に「再開発区域の線引き」を行ってしまったことは致命的でした。
日本は「根回し社会」です。住民への「根回し」を怠れば物事は決して前には進みません。
当地区では一方的な線引きに反発する地権者が相当数おり、2019年6月には権利率換算で15%に相当する地権者たちが「もう既に議論は尽くした」として再開発区域からの離脱を表明しています。
再度事業者側の手法を私たち地権者の目線でコメントするとすれば、やはり一番の問題は再開発があたかも既定路線であるかの態度で強引に且つ時間無制限で地権者から同意を取り付けようとする姿勢です。また地権者の多くが再開発に対する知識が乏しいことに乗じて、良い話ばかりして都合の悪い話題は口にしたがらないと言った傾向が見られます。説明会等で地権者が核心に迫る質問をしても、「ご意見として承ります」、「一度内部で検討させて戴きます」などとその場での返答を保留し、結局、そのまま回答をしてこないと言ったケースも散見されます。地権者との確認事項は口頭で行われるケースが多く、特に地権者が重要と認識する事項については書面で確認をしたがらないと言った不満が地権者から寄せられています。
「再開発の進め方には問題がある」と抗議したところで、彼らは「事業者は私たちではなく、皆さまによって構成される準備組合です。私たちは事業協力者にすぎません」などと平気で言って来ます。しかし本当にそうなのでしょうか?
準備組合が主体となり数百億円規模もの再開発事業を遂行する能力があるとは到底思えません。役員構成を見ても然りです。組合の信用力や資金力の点でも然りです。説明会や行政との打ち合わせでも前面に出て来るのは決まって事業者の人間です。準備組合の役員ではありません。当地区で実質的に再開発計画を取り仕切るのは住友不動産をはじめとする事業者側であることは、いまや地元住民なら誰もが知っています。