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(行-2)行政の「事なかれ主義」について

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首都圏各地の地権者団体と情報交換をしていてよく耳にするのは、「行政の再開発担当窓口へ悩みや問題点を相談に行っても、担当者は話を聞くだけで、具体的になんら対応をしてくれない」と言う現実です。
いわゆる「事なかれ主義」と言われる対応です。

もともと再開発計画において、百選錬磨の「事業者」と、素人である「地権者」とでは知識・ノウハウ・情報量の全ての面において地権者が圧倒的に不利であることは紛れもない事実です。このため、このような格差を補完し、問題や相談があった際には住民のために調整役としての機能を果たすのが本来の行政の役目だと私たちは考えています。
それを放棄して行わないのが「事なかれ主義」です。

「事なかれ主義」とは、議論や争い、喧嘩ごとを嫌い、物事に対して波風が立たないように対応し、何よりも平穏であることを優先しようとする姿勢を言います。
一見「平和主義」にも見え、時と場合によっては利点があるのかも知れません。しかし行政がこれをやってはダメです。行政は住民が抱える問題を良く聞いた上、要望があれば調整役機能を果たすことが重要な業務の一部だからです。

それを行わずに敢えて「事なかれ主義」に徹すると言うのは、ある意味で行政による「不作為」であり、場合によっては「業務放棄」と見做され兼ねず、そして何よりも区民に対する裏切り行為だと言えます。

残念ながら、港区の再開発担当部局ではその様な事例が最近発生し、区は400名を超える地元住民の反感を買ってしまいました。
[その詳細についてはトピックス(52)行政の「事なかれ主義」及び(53)行政の「事なかれ主義」(その2))の双方をご覧下さい]

港区で発生した事例は、ひと言で言えば泉岳寺周辺地域の住民442名が連名でコロナ禍による社会経済の混乱と急変を理由に「再開発事業に対する見方や考え方を変えるべきだ」として、港区長に対し「現行再開発手続き中断」の要望書を提出。その要望書を受け、区は担当部局の課長名で、まるで他人事のよう得な回答を住民側へ送りつけてきたと言う事案です。
地域住民(=区民)が敢えて区長へ要望書まで提出したと言うのに、区からの回答は住民に対して屈辱的とも言える内容で、それらは
1.要望は意見として承った
2.意見があれば地権者間で話し合ってほしい
3.区としては再開発の手続きは適正に進めて行く
の3点に集約されます。
少なくとも上記1と2に関しては「事なかれ主義」以外の何ものでもなく、その一方で上記3において「再開発は適正に進めますよ」と役人側の立場だけはしっかり主張しているのですから困ったものです。

それにしてもなぜ行政ではこのような「事なかれ主義」が蔓延してしまうのか?
(注:あくまでも港区をはじめ、私たちが聴取した若干数の区市町村での話です。全国すべての区市町村が「事なかれ主義」だと言うわけではありません。)

港区の場合、再開発担当部局の業務は基本的に「再開発を推進」することにあります。役人ですからそこへ彼らの業務(再開発推進)に逆行しかねないハードルが立ちはだかれば、本能的にそれを排除しようとする力が働くのかも知れません。特にその原因が「コロナ禍による事業性への疑念」だったり「事業者による不正行為」と言った過去に前例のないものや難易度の高いものであったりすれば、なおさら抵抗感は大きくなるのでしょう。
その結果が「要望として承った」とか「問題があれば皆さんで話し合ってほしい」と言った通り一遍の「事なかれ主義」的な回答となって表われるのだと私たちは考えています。

区はもしかしたら過去から慣習的に区民に対してこのような態度をとり続けてきたのかも知れませんが、少なくとも泉岳寺ではこのようなやり方は通用しません。
私たちは、「事なかれ主義」は行政による「不作為」であり、場合によっては「職務放棄」にもなり得ると考えているからです。

今回の件では区のあまりの住民への配慮のなさに、業者との癒着関係を疑う区民まで出て来ました。もちろん証拠があるわけではなく、あくまでも個人的意見に過ぎないのですが、昔から火のないところに煙は立たないと言われますので、区には是非とも日頃からしっかりと区民の要望や問題点をよく理解して頂いた上で、客観性具体性、そして透明性を持った適切な対応を行って頂きたいと思っています。
まさにそれこそが行政のあるべき姿だと私たちは考えます。

さて皆さまがお住まいの区市町村における行政の対応は如何でしょうか?
私たちは、地域の皆さまが日頃から行政の担当部局と密に連絡を取り合い、「良好な関係」を構築しておくことが何よりも大切であると力説しています。
しかし、一方で行政と住民とはあくまでも対等であることが大前提です。
従い、もし行政の対応に納得が行かなければ率直に問題点を投げかけるべきで、彼らの「不作為」には厳しい目で対応する必要があります。
決して「行政とはこんなものだ」などと考えて妥協すべきではありません。
後日「こんな筈ではなかった」と後悔しないためにも。

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