「モデル権利変換書」は、地権者の大切な資産に関し、現在評価額(従前評価額)が、従後(再開発後)にどのように変換されるのかを示したもの。
資産評価額に係る書類であるだけにある意味、地権者が最も関心を示す書類です。しかし、泉岳寺で配られた「モデル権利変換書」、実は以下の2つの問題を抱えています。
①事業者側が「モデル権利変換書」を「都市計画決定への同意書」とセットで配布したこと。
同意書はあくまでも都市計画決定手続きに入るか否かの地権者同意を問うものですが、これが「モデル権利変換書」と一緒に配られたことにより、同意書本来の目的が希釈され、あたかも「資産額とその変換率について同意するかの問題である」との誤解を地権者へ与えた可能性があります。都市計画決定への同意欲しさに、その誘因として地権者にとり関心の高い「モデル権利変換書」が意図的にセットで配られたとも考えられますが、もし事実だとすれば不適切・不公正な手法であり容認することはできません。
②「モデル権利変換書」それ自体が出所不明の怪文書であること。
モデル権利変換書には地権者の従前資産額や従後の変換内容が細かく数字で記載されているものの、よく見ると、作成企業名の記載は無く責任者印もない。つまり誰が作成したかも不明な1枚の紙切れに過ぎません。
世間で言う「絵に描いた餅」です。出所不明の書類ですから、後日地権者が「こんな筈ではなかった」と裁判所に訴えても証拠になるか分かりません。事業者はこのような何の責任も生じることの無い紙切れを見せつつ「再開発への同意」を地権者へ要求してくるのですから尋常ではありません。
事業者は知名度の高い企業を中心に構成されています。そのような先が社名の記載すらない書類を見せて地権者から再開発への同意を取り付けようとしたのですから極めて不適切であると言わざるを得ません。
いったい事業者側のコンプライアンスはどうなっているのでしょうか?
(因みに、種々の問題点を事業者へ提起しても彼らは「自分たちは事業協力者であり、事業者ではない。事業者は準備組合だ」と説明するでしょう。しかし、どのように釈明しようと事実上の事業者が誰であるかは皆が知っています。仮に準備組合名が記され理事長印が押されていたところで、あまり意味がありません。そもそも業歴も信用も資金力も無く、再開発全体を統括した経験すら持たぬ理事ばかりで構成される準備組合に地権者の大切な資産を託すことなど到底できません)
このように再開発には地権者が気をつけなければならない「落とし穴」が数多く存在します。これらは「違法」とまでは言えませんが「不適切」です。地権者側もしっかり勉強をして知識を身に付けないと後で後悔することになりかねません。
何かわからないことがあれば、家族や友人、ご近所、そして専門家の方々へ相談して下さい。そして一番大切なことは、自分が理解し納得しない限り決して同意書にハンコは押さないと言うことです!