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(101)マンション区分所有者は「使い捨て」?(その2)

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前トピックス(100)では、再開発業者が「マンション管理組合の役員」を「準備組合の理事」に迎え入れることで「マンション管理組合」を再開発賛成の方向へ導く手口が各地で散見されることを報じました。再開発業者はこのような形で個々の区分所有者を「マンション全体が再開発に賛成」だと演出するための道具として利用しておきながら、一方で、「都市計画決定」に際しては「マンションは1棟全体で1人」としか勘定しないと言った、不平等なルールを区分所有者に対して適用しようとする等、再開発事業においてマンション区分所有者が軽視されている実態をも報じました。

なぜマンション区分所有者は軽視されるのか?

もともと都市再開発法は、戦後の急速な都市化で戸建て住居が建築された昭和44年(1969年)に作られた法律です。当時はまだマンション建設は黎明期で、市街地再開発とマンションは結びついていませんでした。このため、都市再開発法は、マンションの「区分所有権」について何も触れていません。
このような歴史的背景があることから事業者側は無意識のうちに区分所有者を軽視する行動に出ているのかも知れません。
しかしマンションの区分所有権者や賃借人も地域の住民です。
「住民の皆さま」の準備組合であるならば、区分所有権者の声を無視すべきではなく、勝手に「多数賛成」の道具にしたり、「1棟全体で一人」などと差別すべきではありません。区分所有権者側も堂々と異議を申し立てるべきです。

マンション管理組合は準備組合へ加入出来るのか?

そもそも、「マンション管理組合」が建物の除却を前提とする準備組合へ加入することが出来るのかと言う議論が、専門家も交え各地で行われています。
マンション管理組合は、マンションの建物及び敷地などの維持管理を行う目的で存在することが「建物区分所有法」で定められています。維持管理の唯一の例外として「建て替え」がありますが、その場合、法律は区分所有者の4/5の合意形成を決議要件とするなど厳格な規定を定めています。再開発も一種の「建替え」だと見做せば、再開発を前提とする準備組合への加入に際しても「建て替え」に準じた手続きを経るべきだと言う議論が起きています。
管理組合が「区分所有法」や「管理規約」の規定に反し、正式な決議を経ぬまま準備組合へ加入することは許されません。他地区では管理組合の理事長や理事の専断で準備組合に加入していた事実が発覚して問題となっている事例が数多くあります。区分所有者の皆さまは一度自らの管理組合についても適切に運営されているかを確認されてみては如何でしょうか?

自らの大切な資産に係わることですので、決してこの問題に対して「無知」、「無関心」、「他人任せ」であってはなりません。

各地で起きている問題事例

実際に「マンション管理組合の役員」と「準備組合」との癒着が疑われる事例が各地で生じています。

【品川区で起きた事例】

最近、品川区のある再開発区域内にあるマンションの総会で「マンション管理組合が再開発準備組合に参加することは、マンション管理規約に抵触する」として住民から問題提起を受け、執行部側が提出していた「再開発」関連の議案を取り下げると言う事例がありました。ここでは管理組合の理事長が単なる「理事会協議」を経たのみで、マンション管理規約からも外れて、マンションの取り壊しを前提とする「準備組合」組織に加入したことが問題視されました。
当初管理組合側は「総会で承認された」としていましたが、総会議事録には「審議事項」としての記載もなければ「準備組合への加入決議」もなく、単に総会において「事業報告の一環」として状況説明があったに過ぎないことが判明し、嘘がばれた形となりました。問題意識を持つマンション住民がいたからこそ、このようなずさんな運営が明らかとなった事例だと言えます。さて皆さまのマンションは準備組合への加入が正式な手続きを経た上で実行されていますでしょうか?

【荒川区で起きた事例】

再開発区域内にある某マンションでは、マンション代表として「準備組合の理事」に参画していた人物が、再開発ありきの活動を続け、「当該マンションは再開発に賛成である」との根拠のないガセネタを区議会や周辺地域に流し続けていたことが発覚。これを問題視したマンション住民が「臨時総会」を含む2度の総会を経て、同マンション代表を解任に追い込むと言う事件が発生。
しかし問題はこれだけでは終わりませんでした。後任のマンション代表として準備組合理事を拝命することになった人物が、過去からたびたび再開発の問題点を指摘していたことから、今度は準備組合側が理事への就任を拒絶すると言った事態が発生し、解決されぬまま現在に至っているようです。
まさにこれは、「準備組合」と「マンション管理組合の特定の役員」との不適切な関係が存在していたことを示す事例として私たちも注目しています。

【その他各地で散見される事例】

上述した事例のように、マンション管理組合の役員が「準備組合の理事」を拝命することによる弊害が各地で表面化しています。
荒川区や品川区のような露骨な事例でなくとも、例えば総会での通常の議案なのに、敢えて「再開発を前提とした」なる冠を付記し(例えば、通常の予算案を「再開発を前提とした予算案」などと改名し)、議案の可決を以てあたかもマンション住民が再開発に賛同したかの体裁を繕う手口が各地で横行しています。識者が見れば、極めて幼稚な手口であることは一目瞭然ですが、これもマンション住民を不当に利用して、「多数賛成」を演出しようとする手法のひとつであることをご認識下さい。このような事実があれば、先ずは管理組合の運営を疑ってみるべきです。区分所有者への不当な扱いは決して許されることではありません。皆さまのマンションは健全でしょうか?

まとめ

上記、品川区と荒川区の事例では、何れも「マンション管理組合」への不信感が契機となり、地権者団体が編成されました。住民の自治意識の高い証拠だと言えます。
因みに、泉岳寺では、地権者総数約260名の内、230名前後が主要4棟のマンションの区分所有者です。地権者の大多数が区分所有者であると言っても過言ではありません。
それだけに、区分所有者は自己のマンション管理組合が果たして合法的、且つ民主的に運営されているのか普段から注視しておく必要があります。区分所有者は管理組合への強制加入が法により定められている以上、もし管理組合の運営に不手際があれば、区分所有者全員がその責任を負うことになりかねないからです。再開発は資産の供出を伴うだけに、その代償は決して小さくはありません。一方で、260名中、230名を区分所有者が占めていながら、都市計画決定の同意率の算定では、わずか「4人」としか計算されないと言った「人権侵害」とも言える不平等なルールについても考える必要があります。
重ねて申し上げますが、マンション管理体制への「無知」、「無関心」、「他人任せ」だけは何としても避けたいものです。

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