本トピックスでは「当マンションは再開発に賛成だ!」との虚偽の演出が行われた荒川区内の某マンションでの事例を詳しく取り上げます。
この事例は、「準備組合理事」に就任したマンション代表者が、外部の世界に対し、当該マンションがあたかも「再開発に賛成」であるかの誤情報を流布し続けていたことが発覚して問題とされ、マンション管理組合の総会にて解任されたと言う事例です。
このマンションはJR駅から徒歩数分圏内と言う非常に利便性の良い場所に立地する、比較的新しい中規模マンションです。築20年と言う新しさにも係わらず、再開発区域内に指定され、取り壊しが計画されたため住民の間で賛否を巡る大議論が起きたようです。
マンション住民攻略の手法
他トピックスでも述べていますが、一般に再開発事業者は「マンション管理組合」に声をかけ、同組合の役員を「準備組合の理事」として迎え入れようとします。
皆さまの地元でもそのような事例がある筈ですので確認してみて下さい。
なぜそのような優遇を行なうのか?その目的は、マンション内の住民や地域社会に対して影響力のある人物を見方につけることで、後日「マンション全体が再開発に賛成」だと見せかける「演出」を行いやすくするためだと言われています。
そして予定通りの「演出」が…
荒川区の事例では、マンション代表として「準備組合の理事」に就任した人物が、至る所で再開発ありきの発言を続けるようになり、「当マンションは再開発に賛成である」との根拠のないガセネタを区議会や周辺地域にまで流し続けている事実が発覚。これを問題視したマンション住民が「臨時総会」を含む2度の総会を経て、同マンション代表を解任に追い込むと言う事件が発生したのです。マンションの住民は、「住民の利益に相反する行為は許さない」との毅然とした態度で立ち上がり、問題解決にあたったのです。
一件落着に見えたのも束の間…
しかし再開発事業者側もしたたかです。問題はこれで終わりませんでした。
新たな問題が発生したのです。
何が起きたのか?
このマンションでは管理組合役員の中から1名を準備組合理事に選任する規定となっています。そこで「問題とされたマンション代表」に代わり、新たな代表として準備組合理事へ就任する人物が選出されました。しかし、その人物が過去からたびたび再開発の問題点を指摘していた人物であったことから、今度は準備組合側が理事への就任を拒絶すると言う事態が発生したのです。
この問題は今も平行線のまま未解決となっています。
まさにこれは、「準備組合」と「マンション代表を語る特定人物」との不適切な関係が存在していたことを示唆する事例として私たちも注目しています。
まとめ
仮に「マンション管理組合の役員」が「再開発準備組合の理事」へ就任し、その人物があたかも当該マンション全体が再開発に同意したかのように「演出」することがあれば、そもそも理事長を含め管理組合役員個々人には、このような形で「区分所有者全体を代表する権限」はないので、越権行為となる筈です。
「マンション管理組合」は区分所有法が定める通り、「区分所有者の建物並びに敷地などの維持管理を行なうための団体」です。従い、「マンション管理組合」が建物の除却を前提とする「再開発準備組合」に加入すること自体が正当なのかも公の場で議論されるべきです。
区分所有法では、維持管理の例外として「建て替え」を行なう際の規定を設けていますが、その場合には「区分所有者の4/5による決議」を必要とする等、厳密な要件が定められています。仮に「再開発も建て替えの一種」であると見做すのであれば、「建て替え」に準じた相応の手続きが取られるべきだと考えられます。
何れにしても、「区分所有法」や「マンション管理規約」が定める規定に反して、マンション管理組合役員が外部で安易に「当マンションは再開発に賛成である」などと発言するのは許されるべき行為ではありません。
実は品川区内の某マンションでも荒川区の事例と同様に、準備組合がマンション管理組合理事長まで駆り出し、あたかもマンション全体が賛成しているかの「演出」を行ない、トラブルとなっている事例が報告されています。どうやらこのような工作は至る所で行なわれているようですのでご注意下さい。
マンション区分所有者の皆さまは自己の資産を守るためにも、是非ともマンション管理組合の運営には日頃から関心を持って頂き、もし不審な点があれば、堂々と公の場で問題提起を行って行くべきではないでしょうか?